■連載一覧
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  • 香港憤激 一国二制度の危機
  • 香港・中国返還20年 「一国二制度」の前途
  • 台湾に吹いた蔡英文旋風
  • ルポ・政権交代の攻防 台湾総統選
  • 二極化する香港 識者インタビュー
  • 香港誌「前哨」編集長 劉達文氏に聞く
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  • 新閣僚に聞く
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  • 安倍政権 新たな挑戦
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  • 歪められた沖縄戦史 慶良間諸島「集団自決」の真実
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  • 国防最前線・南西諸島はいま 第1部 与那国島・陸自駐屯地
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  • 普天間基地移設 経緯の検証と提言
  • 「援護法」に隠された沖縄戦の真実
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  • 米中新冷戦 第1部「幻想」から覚めた米国
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  • 米国の分断 第2部 反米・容共の風潮
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    古川 光輝
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
    「国際派日本人養成講座」編集長
    河添 恵子
    河添 恵子
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    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    英国のロシア人社会に「衝撃」走る

     英国のプロサッカーチーム、プレミアリーグのチェルシーFCの話ではない。そのチェルシーFCに2003年から10億ユーロ以上の資金を投資してきたクラブオーナー、ユダヤ系ロシア実業家ロマン・アブラモヴィッチ氏(51)の話だ。

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    ユダヤ系ロシア人実業家ロマン・アブラモヴィッチ氏(アブラモヴィッチ氏のサイトから)

     どうやら、同氏の周辺に英国公安当局の捜査の目が注がれてきたという。それを知った同氏はチェルシーFCを手放し、どこかに移住を考えているというのだ。その「どこか」の一つに挙げられたスイスはメディアを通じて既に受け入れ拒否を表明している。以下、オーストリア代表紙プレッセ5日付の経済欄で報じられた「ロンドンのロシア人社会の動揺ぶり」を紹介する。

     英国は過去、少なくとも100万ポンド以上を英国内で投資する外国人に対して投資ビザの発給、税の優遇などを与えてきた。その数は約3000人といわれ、4分の1はロシア人だった。アブラモヴィッチ氏はその中の一人だ。

     英国には7万人から最大15万人のロシア人が住んでいる。多くは資産家であり、英国滞在許可を表現は良くないが、買ったロシア人だ。数年前までは豊かなロシア人(オリガルヒ)にとって英国居住許可は簡単に入手できた。金さえ払えばよかった。過去20年間でロシアから英国に流れ込んだ総資金は1000憶ポンドともいわれる。

     しかし事情は急変してきた。英国が来年欧州連合(EU)を離脱(ブレグジット)する影響もあるが、主因はそうではない。直接の契機は、英国で3月4日、亡命中の元ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)スクリパリ大佐と娘が、英国ソールズベリーで意識を失って倒れているところを発見された通称スクリパリ事件の影響だ。

     調査の結果、毒性の強い神経剤、ロシア製の「ノビチョク」が犯行に使用されたことが判明し、英国側はロシア側の仕業と非難したが、モスクワは否定し、プーチン大統領は「西側のいつもの反ロシア・キャンペーンの一環」と一蹴してきた。

     メイ英首相はロシア側の否定にも関わらず、英国駐在ロシア外交官の国外退去処分を表明。もちろん、プーチン氏も負けてはいない。同様の対応で駐モスクワの英国外交官を追放した。EUのブリュッセル本部は英国の主張を支持、オーストリアを除いてロシア外交官の国外追放に同調した。英国とロシアの関係悪化はもちろんスクリパリ事件だけではない。ロシア軍のシリア、ウクライナの不法軍事活動もその要因だ。

     興味深い情報によると、オランダのハーグにある化学兵器禁止機関(OPCW)にロシアのサーバー攻撃があったという。ロンドン側の要請を受けてスクリパリ事件で使用された神経剤の分析を担当した機関だ。OPCW関係者は事件発生直後、殺人未遂事件に使われた神経剤は「ノビチョク」と断定した英研究所の分析結果を追認する一方、「ノビチョクは旧ソ連で開発された猛毒神経剤だが、今回の事件で使用された神経剤がどこで作製されたかは断定できない」と明言を避けてきた。

     オランダ政府は今月4日、北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会で「OPCWは4月、ロシア側のサイバー攻撃を受けた」と報告しているのだ(「英国のスクリパリ事件の『核心』は?」2018年4月21日参考)

     チェルシーのオーナーの話に戻る。英国とロシアを取り巻く関係が急速に険悪化し、英国内に住むロシア富豪家たちにも動揺が見られだした。メディア情報によれば、政治亡命者ではないアブラモヴィッチ氏らオリガルヒに対し、スクリパリ事件に間接的に関与した疑いすら浮上してきたという。同氏はもはやサッカーに熱を入れている時ではないと判断し、チェルシーFCを手放す方向で動き出してきたというわけだ。

     アブラモヴィッチ氏の巨大な資金で潤ってきたチェルシーFCも同氏が出ていけば、チームに投資する資産家がなくなるから、チーム力が弱まる。ピッチで活躍してきた選手たちもプレーに専心できなくなる。その結果、チームの成績が伸び悩むといった悪循環が予想されるわけだ。

     ロンドンにはロシア人社会だけではなく、北朝鮮亡命者社会もある。世界の大都市ロンドンはスイスのジュネーブのように母国から何らかの理由で追われた人間が安住の地として流れ込んでくる都市ともいわれる。ただし、英国がEUから離脱すれば、ロンドンに住む亡命者たちも次の安住の先を探さなければならなくなるかもしれない(「脱北者が英国に亡命する理由」2016年6月7日参考)。

     ロシア人富豪者の次の居住先としてスイスの名が浮上してきた。スイスはロンドンと同じように世界から逃げてきた人々が住み着く“逃れの国”だ。同国のジュネーブに国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の本部があるのも決して偶然ではない。レーニンはスイスに逃れ、革命を計画し、カルヴィンもスイスに逃れ、宗教改革を起こした。そして自分の懐に逃げてきた避難者をスイスは決して追っ払うことはしなかった。

     それでは アブラモヴィッチ氏の場合はどうか。メディア情報ではスイス側は同氏の受け入れを断ったという。 その理由は、アブラモヴィッチ氏が2016年、不法資金の洗浄容疑(マネーロンダリング)を受けているからだ。同氏の場合、ロンドンを追われたら、次の安住先を見つけるのが難しくなるわけだ。

    (ウィーン在住)

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