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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
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    宮本 惇夫
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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    “トランプ外交”に不満高まる欧州

     トランプ米大統領は8日、2015年7月に合意したイランとの核合意から離脱し、解除した対イラン制裁を再実施していく旨の大統領令に署名した。トランプ氏の決定は予想されてはいたが、米国のイラン核合意離脱は関係国に大きな波紋を投じている。特に、欧州では核合意の堅持を主張する声が強く、トランプ氏の一方的な核合意離脱表明には強い反発の声が挙がっている。以下、独週刊誌シュピーゲル(電子版)とオーストリア通信(APA)の関連記事を参考に、欧州の声をまとめた。

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    イラン核合意離脱を表明したトランプ米大統領(2018年5月8日、ホワイトハウスの公式サイトから)

     欧州連合(EU)の盟主ドイツのメルケル首相は11日、訪問先のミュンスターで米国のイラン核合意離脱について、「大きな懸念であり、遺憾だ」と指摘、「核合意は理想からは程遠いかもしれないが、国連安保理事会決議で採択された合意を一方的に離脱することは正しくない。米国のイラン核合意離脱は国際社会に大きなダメージを与え、国際秩序への信頼を破壊している」と述べた。トランプ大統領に対してはこれまで自制してきた面があったメルケル首相だが、今回ははっきりと批判している。

     フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外相は、「イランとビジネスをしている企業に対し、米国が制裁で脅迫することは受け入れられない」と強い口調で批判している。

     欧州の企業はイランとのビジネスを停止するために6カ月の期限を与えられている。ル・ドリアン外相は仏紙ル・パリジャンの中で、「制裁が国境を越え適応されることは受け入れられない。欧州は米国の制裁のために代価を支払うが、米国自身は支払わない」と不満を爆発させている。イラン核合意では欧州はロシアと中国と共に最初からその堅持を主張してきた経緯がある。

     欧州の銀行はトランプ氏のイラン核合意離脱表明前から世界の金融界を支配する米国の制裁を恐れ、米国当局との対立を避けるためにその活動を抑制してきた。トランプ大統領の離脱宣言で世界の金融界は揺れ動き、原油価格は高騰してきた。

     ハイコ・マース独外相は11日、独週刊誌シュピーゲルとのインタビューの中で、「欧州は米国と協議し、交渉する用意がある。欧州と米国の不協和音はイラン核合意の離脱表明前から表面化してきた問題だ」と指摘している。

     トランプ氏は、昨年1月には環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱、同年6月、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱を表明、同年10月にはパリに本部を置く国連教育科学文化機関(ユネスコ)から脱退するなど、欧州などが積極的に支持してきた国際協定から次々と脱退し、「外交交渉の勝利」(オバマ前米政権)と言われたイラン核合意の離脱を今回決定したわけだ。欧州側はトランプ氏の一方的なやり方に不満が溜まりに溜まってきているわけだ。

     米国のイラン核合意離脱で最初に困難に直面する欧州の大企業はエアバス社だ。エアバス社やボーイング社はイランへの旅客機販売ライセンスを剥奪されるだろう。その結果、イラン航空への200機の商談(総額383億ドル)はパーになる可能性が出てきたわけだ(受注は100機はエアバス社、80機ボーイング社、残り20機はターボプロップ機メーカー ATR社)。受注時の契約書には契約解除の場合といった項目がなかったという。

     ルクセンブルクのジャン・アセルボーン外相は11日、「欧州は米国に服従すべきではない。われわれは5億人の欧州国民に義務を負っている。商談の破綻を阻止しなければならない」と警告し、「米国がイラン核合意から離脱したいのなら、それは米国の問題だ。われわれは合意を維持する。われわれには後継人は必要ではない」と強調している。

     アセルボーン外相の発言は多くの欧州人の本音を言い表している。曰く「欧州は今こそ結束して米国と向かい合うべきだ。しかし、米国を敵に回すのではなく、トランプ大統領の政治ポジションに反対するためだ」というのだ。

     フランスンのブリュノ・ル・メフレー経済・財務相 は5月末、ドイツのオーラフ・ショルツ財務相と英国のフィリップ・ハモンド財務相と共に米国のイラン制裁について緊急協議する予定だ。

     ちなみに、ブリュノ・ル・メフレー経済・財務相は11日、米国のスティーブン・ムニューシン財務長官と電話協議し、フランス企業を制裁対象から外してほしいと要請したという。フランスの場合、総合石油会社トタルや自動車メーカーのルノー社が制裁の影響を受ける危険性があるからだ。

      EUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表よると、イラン核合意を締結した欧州3国(英国、フランス、ドイツ)の外相とイランのモハンマド・ ジャヴァード・ザリフ外相が15日、ブリュッセルで会合し、 米国のイラン核合意離脱への対応について協議するという。メルケル首相は近日中に、ロシアのプーチン大統領とソチで会談するという。欧州指導者がトランプ大統領の外交政策に対抗するため蜂起してきたのだ。

    (ウィーン在住)

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