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    細川 珠生
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
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    宮本 惇夫
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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    極右党「公共放送の受信料廃止を」

     当方は先日、このコラム欄で隣国スイスの公共放送の受信料廃止を問う国民投票実施について報告したが、予想外に反響があった。多分、多くの聴視者は、「なぜ公共放送だけが強制的に受信料を請求できるのか」という素朴な疑問を持っているからだろう(「スイスで『受信料』廃止問う国民投票」2018年1月29日参考)。

    800

    オーストリア放送協会(ORF)本部(ウィキぺディアから)

     スイスでは過去、テレビ、ラジオを所有している国民は受信料を支払う義務があったが、連邦議会が2014年、受信料制度改正案を採択し、全ての世帯から一律受信料を徴収する制度に改正した。そして15年、同改正案の是非を問う国民投票が実施され、僅差ながら可決された。すなわち、国民はテレビやラジオの有無とは関係なく、一律一定の額のビラクと呼ばれる受信料を払う義務が出てきたわけだ。テレビやラジオを所有していなくても、パソコンやスマートフォンの通信端末から番組を受信できる時代だ。そして、どの世帯でも複数の通信端末機器を所有している時代だからだ。

     幸い、オーストリアではテレビとラジオを所有している世帯は52・66ユーロの受信料を2カ月に1度支払わなければならないが、所持していないことを実証すれば、受信料を支払わなくていい。

     ところが、そのオーストリアでも隣国の国民投票に刺激されたのか、受信料廃止の声が高まってきたのだ。その受信料廃止の最先端で声を挙げているのは極右政党「自由党」だ。自由党は昨年末、クルツ首相が率いる国民党と連立政権を発足させた政権政党だ。その自由党がオーストリア放送協会(ORF)の受信料廃止を叫び出したのだ。理由がないわけではない。

     最近の例から紹介する。ORFは2月6日、ニュース番組(ZiB1)でミュンヘンで開催されたブレナー・ルートに関する運輸相首脳会談(ドイツ、オーストリア、イタリア3国の主要運輸ルート)を報じたが、番組の中でドイツの運輸相にインタビューしたが、オーストリアの運輸相には質問せずに終わった。
     自由党のメディア担当のハンス・イェルク・イェネヴァイン氏は、「ORFは公共放送の法的義務を無視している」と指摘し、「ORFの受信料廃止問題を政治議題の最優先テーマとすべきだ」と主張している。具体的には、自由党閣僚のホーファー運輸相へのインタビューを恣意的に無視したからだ。ORFのアレキサンダー・ヴラベッツ事務総長は今回の件では何のコメントも出していない。

     ホーファー運輸相は自身のファイスブックの中で、「環境問題なども関わる重要な運輸問題を協議するミュンヘンの運輸相首脳会談で自国の運輸相に質問せず、ドイツの閣僚にインタビューする公営放送があるのか」と激怒し、「ORFの受信料を支払うべきではない」と主張している。

     ORFの自由党嫌いはこれが初めてではない。これまで自由党は野党だったこともあって、その偏向報道による被害は少なかったが、昨年12月から自由党は国民党と連立政権を組む与党政党になったのだ。自由党嫌いだから、自由党閣僚にはインタビューしないというわけにはいかなくなった。それでもORFでは自由党嫌いの確信犯的なジャーナリストが少なくないのだ。

     オーストリアで大統領選が2016年行われたが、「緑の党」のバン・デア・ベレン候補者(現大統領)と自由党のホーファー氏(現運輸相)の決選投票となった。ORFは両候補者を招き、討論させた。その時、司会者のORF記者は明らかに反ホーファー陣営だった。不確な憶測情報を持ち出してホーファー氏に質問し、逆にその出所の曖昧さが暴露されてしまったというスキャンダルな報道となった。

     「自由党を批判することが公平で正義なジャーナリズムだ」と確信をもっているORF記者が少なくない。民営放送ならば、特定の政党を支持していても許されるが、国民から受信料を受けている国営放送が特定の政党(この場合、社会民主党)をひいきにし、特定の政党(この場合自由党)を理由なくこき下ろすことはやはり問題だろう(「国営放送が大統領選で情報操作」2016年5月21日参考)。

     ところで、ORFの最高意思決定機関の幹部評議会(Stiftungsrat)は35人から構成されている。国民党と自由党はその評議会に3分の2を占める25人の党関係者、党支持者を送り込むことができる。理論的にはクルツ連立政権はORF事務総長をいつでも解任できるわけだ。

    (ウィーン在住)

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