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中国、人権弾圧否定の動画拡散 米メディア調査で判明

 中国新疆ウイグル自治区におけるウイグル人らへの弾圧をめぐって国際社会から厳しい非難を浴びる中、中国政府はそれに対抗するための宣伝工作を強化している。先月下旬に発表された米メディアの調査は、中国当局がツイッターやユーチューブを用いてウイグル人に人権侵害を否定させる動画を組織的に拡散させていた証拠を示した。(ワシントン・山崎洋介)

ウイグル人の「自由」強調
SNSで組織的宣伝工作

「ここでは、われわれはとても自由だ」

動画で中国政府による弾圧を否定するウイグル人とみられる男性(プロパブリカのウェブサイトよりスクリーンショット)

動画で中国政府による弾圧を否定するウイグル人とみられる男性(プロパブリカのウェブサイトよりスクリーンショット)

 動画の中でウイグル人とみられる男性は、車の運転席でハンドルに片手を掛けながら、中国政府による弾圧が起きていることを否定。中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を通して、ポンぺオ前米国務長官が同自治区でウイグル人に自由がないと述べたことを最近知ったとして、強い反発を示した。

 ツイッターやユーチューブ上には、このほかにも同様の訴えをする地元中小企業の経営者、タクシー運転手、繊維工場の労働者などが現れた。これらの動画でも「自由」を強調するメッセージが繰り返され、「私たちは今とても自由だ」「私たちの暮らしはとても幸せで、とても自由だ」などと訴える投稿が相次いだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙と調査報道機関のプロパブリカが、1カ月かけて3000以上の映像を分析。その結果、これらが中国による組織的な宣伝工作の一部である証拠を示した。

 こうした動画には中国語と共に英語の字幕が付けられているが、その発言には非常に良く似た、もしくは全く同じフレーズがあるなど、数多くの共通点があった。

 例えば、1000以上の動画で、ウイグル人たちは最近インターネットなどを通してポンペオ氏の発言に出くわしたと述べている。この発言に対する批判として、「全くのナンセンス」を意味する「胡説八道」との表現が600以上の映像で用いられた。こうした動画の投稿は、ポンぺオ氏が米政権交代間際の1月19日に、中国が同自治区でジェノサイド(集団虐殺)を犯したとする声明を発表してから数日後に始まったという。

 また、地元の政府当局者がこれらの動画を作成したことを動画に登場する本人があっさりと認めた例もあった。「ポンペオ、口を慎め!」と強く批判した同自治区の中古車販売店オーナーは、電話取材で動画について詳細を尋ねられると、「宣伝部門のトップに聞いてほしい」と述べ、政府当局者の電話番号を教えたという。

 これらの動画は、300以上のツイッターアカウントで共有されたが、アカウントのツイートの幾つかのテキストには、コンピューターコードが含まれるなど、通常のユーザーではないことを示す痕跡もあった。

 中国の外交当局者がこうした動画を広めていたケースも見られた。例えば、ウイグル人らへの強制労働を否定する農業労働者の女性の動画がツイッターやユーチューブに投稿されてから1週間後に、中国外務省報道官の華春瑩氏や趙立堅氏がそのリンクをツイッターに投稿した。

 プロパブリカによると、この報道を受け、ユーチューブは、こうした動画の一部を削除する対応を取った。

 新疆ウイグル自治区では、100万人以上のウイグル人らイスラム教徒の少数民族が収容所に勾留されているとされ、国際社会からの非難が高まっている。これに対して、中国政府はこれらが収容所ではなく「職業訓練所」だと主張。「過激主義対策」を行っているなどと正当化し、ソーシャルメディアなどを通じた情報戦を強化している。

 今回の調査報道について、先月28日付のワシントン・ポスト紙は社説で、中国が宣伝工作によって「その政治的主張を広めるために米国やその同盟国、テクノロジー企業の開放性を利用するという継続的な意図を明らかにしている。自国では真実で批判的な主張が入り込むことを恐れ、(ネット検閲システムの)グレート・ファイアウオールが他の世界を遮断しているにもかかわらずだ」と警告した。

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