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中国・深圳 特区指定40年、香港「完全返還」論が浮上

 かつて「改革開放の総設計師」と呼ばれた鄧小平氏が主導して香港と隣接する広東省深圳が経済特区に指定されて26日で40周年。香港は国家安全維持法(国安法)施行で金融センターとしての魅力が深圳に比べて色あせ、2次返還論が浮上している。台湾の猛反発でも中国は台湾統一工作を強め、中国大陸に最も近い金門島、馬祖島の島民生活救済を主軸に三通(中台間の通信、通商、通航の直接往来)から新四通に戦略転換を図り、着々と浸透している。
(深川耕治)

「新四通」で台湾・金門取り込み

 26日、深圳市内では経済特区設立40周年の歴史的記念日ながら記念式典はなく、地味なものだった。親中系香港紙「星島日報」速報ネット版によると、習近平国家主席が深圳入りして行われる記念式典は9月以降になる見通しで、林鄭月娥行政長官が率いる香港代表団も習主席と会談するとしている。

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 経済特区は広東省深圳、珠海、汕頭(スワトウ)、福建省アモイ、海南島(その後、省に昇格)の五つ。いずれも台湾海峡に近い南シナ海沿岸にあり、台湾統一工作を強く意識したエリアだ。台湾系企業を取り込んできた深圳には5Gが使用できる市内エリアが網羅され、ファーウェイ、中興通訊(ZTE)など国際的に活躍するハイテク企業が集積する。

 注目されるのは、24日、北京で習近平国家主席が行った経済社会領域専門家座談会で、シンガポール国立大学東アジア研究所長だった鄭永年香港中文大学(深圳)グローバル当代研究院院長が、近年の香港の混乱に対して第2段階の完全な中国返還を完了させる香港「2次返還」論を提言し、中国政府も提言を公開して肯定していることだ。

 鄭氏は「香港が1997年7月の中国返還で一国二制度を実行したが、主権は中国にあっても治権は中国にはなく、香港行政長官と香港政府にある状態だった」とし、「香港の第1次中国返還が97年とすれば、これから法整備の大改革を含めた第2次返還が必要だ」と主張している。その手始め、序章が香港での反体制的な言動を取り締まる国安法施行ということになる。

深圳市内の蓮花山公園にある鄧小平氏の銅像。香港の方位へ向かって歩く姿となっている

深圳市内の蓮花山公園にある鄧小平氏の銅像。香港の方位へ向かって歩く姿となっている

 香港やマカオの一国二制度は、元来、鄧小平氏が主導した台湾統一の先験的なモデル制度だが、台湾側は猛反発。鄭氏が語った1次返還、2次返還とステージを上げながら完全統一する提案を中国政府も認める動きに台湾の蔡英文政権はさらに反発を強めそうだ。

 15日に台湾南部・高雄であった市長選では与党民進党の前行政院副院長(副首相)、陳其邁候補が野党国民党の市議・李眉蓁候補を抑え、過去最高の約70%の得票率で圧勝した。国民党の韓国瑜・前市長を中台統一工作に加担したとしてリコールした末の幕引き、「政変」だ。香港での国安法施行で「香港の次は台湾」との危機感は、「私は台湾人」という台湾本土意識を高揚させている。

 中国の台湾統一工作は台湾本島では逆風だが、中国大陸に近い離島の金門島、馬祖島では着実に浸透している。台湾領の金門島は登録人口約13万人。台湾本島から西に約270キロメートルに位置し、中国に圧倒的に近い。

 18年8月には馬英九前政権時代の合意に基づいて水不足に悩む金門島へ中国福建省アモイから水を供給する全長約16キロの海底送水管が開通。送水管を通じ、福建省泉州の普江龍湖から河川水を買い取る形だ。過去2年間で泉州から延べ840万トンの水が供給され、現在は1日約1万トンが送られ、電気、ガス、鉄橋建設計画も進められている。

 李柱熢元金門県長は「小三通(台湾が支配する大陸沿岸の金門、馬祖両島に限定した中台間の通信、通商、通航)だけでなく、新四通(水道、電気、ガス、鉄橋)が地元民の悲願だ」と話す。

 台湾で統一容認派は約1割。金門島や馬祖島など大陸に極めて近い離島では統一派が大半を占める。中国は離島経済の生活困窮援助策で民意を取り込もうとする長期戦略を継続。平和統一か武力統一かを見定め、蔡政権は抗(あらが)いながら民意争奪戦を激化させている。

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