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香港デモは米英VS中国の代理戦争

●習近平の記録からは最悪の事態を恐れる 

 ニッキー・ヘイリー米元国連大使は、8月下旬にFOXニュースのサイトで「香港に対する中国の攻撃は、アメリカのアジア同盟国に重大な危険をもたらすだろう」とのタイトルで長文を発表している。

 その中で、「中国政府は自国民、香港、アジアやその他地域を広く支配しようとしている」と警鐘を鳴らし、「中国政府は香港の抗議行動を終わらせるため、武力を行使する力を持っている。外部(世界)はそれを防ぐことができない。しかし、もし世界が何もしなかったら? もし中国の指導者が、ペナルティなしでそのような暴力的な行動を取ることができると考えるなら、アジアの安全保障はどうなるのか?」と問いかけている。

 ドナルド・トランプ大統領の信頼が厚い側近として知られるヘイリー元国連大使は、「中国政府には2つの選択肢がある。香港の自由と民主を守るか、香港人を弾圧するか。習近平の記録からは、最悪の事態を恐れることになる」とも記している。「習近平の記録」が意味するのは、習近平国家主席が年始に「台湾統一のためには、武力使用は放棄しない」と語ったその「記録」を指すのだろうか。アメリカでは、「香港は台湾統一に向けた実験場だ」との警戒感も広まっている。

 また、米上院共和党院内総務のミッチ・マコーネル議員は9月3日、出演したラジオ番組で、「中国政府が1989年6月の天安門事件と同様、香港の抗議者を暴力的に弾圧した場合、トランプ大統領には、在米中国人留学生の追放を含む、より強力な行動を提案するだろう」と語った。

 とすれば、アメリカに暮らす中国人留学生にとっても、香港デモは他人事ではない。ましてや、中国を擁護する立場を取るであろう共産党員の学生や在米中国人が、アメリカに今後も居続けられるかはわからなくなった。

 トランプ大統領の元側近、スティーブン・バノン前首席戦略官兼大統領上級顧問は、危険を顧みず立ち上がった香港住民、民主活動家らに、「ノーベル平和賞を!」と声を上げている。
このように、米連邦議会そして有識者たちは、香港デモを最大の関心事の一つとして注視している。日本はどうだろうか? 情けないことに国会議員、大メディア、そして大メディアで日頃はしたり顔で「人権」を振りかざす‶電波芸者〟らは、ほとんど無関心を装っているのだ。

●英中共同宣言はすでに失効した!?

 香港デモに収束の兆しが見えない中、香港政府のトップ、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月4日のテレビ演説で、中国本土への容疑者の引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を正式撤回することを表明した。

 だが、民主派団体は「改正案撤回」だけでなく、「普通選挙の実施」「逮捕されたデモ参加者の釈放」「警察の暴力に関する独立調査委員会の設置」「デモを『暴動』とした定義の撤回」を五大要求として掲げている。

 しかも、ラム長官が「撤回する」と発言したが〝まやかし〟らしい。なぜなら、香港立法会(議会)で審議しなければ、「撤回」は決まらないからだ。それと、一時、撤回したとしても審議を蒸し返す可能性は十分ある。香港行政が北京(中国共産党政府)の手足に成り下がっているとすれば、市民との「妥協」や「譲歩」の文字など存在しないのだ。

 そもそも、香港住民はもちろんのこと、世界も「中国の大ウソ」にはもう騙されないはずだ。イギリスと中国とで1984年12月に調印した「英中共同宣言」には、イギリスが1997年7月1日に中国に主権を返還すると共に、中国は2047年6月30日までの50年間、「言論の自由」を含む民主社会や資本主義経済を維持し、香港における高度な自治を保障することが明記されている。いわゆる、「一国二制度」「50年不変」である。

 さらに返還後の「香港基本法」には、行政長官と立法会の議員全員を「最終的に普通選挙」で選ぶことも記された。ところが中国は、「英中共同宣言」を順守しないどころか、中国外務省が「英中共同声明は1984年から1997年の香港返還時に関するもので、すでに失効している」と言ってのけた。

 イギリスが激怒しないはずがない。それどころか、同国の情報機関は、香港デモを陰に日向にサポートしながら、習政権にリベンジをしていると推測する。

 事実、今回の香港デモで、イギリスに本拠地を置くロイター通信が、ある種の主導的役割を果たしている。ロイター通信は「香港政府が五大要求について検討した報告書を中国政府に提出したが、すべて拒否された」といった裏事情や、ラム行政長官による「逃亡犯条例」改正案撤回の第一報を発信している。

 さらに、8月下旬に行われた財界人らとの非公開の会合で、彼女が「香港の混乱は、中国にとって国家安全保障・主権の問題となった」「行政長官として、解決する余地は非常に限られている」「もし選択肢があるなら、真っ先に辞任して深く謝罪したい」などと発言した内容を音声と共に報道した。

 これは、「(香港の行政長官に権限はなく)全責任は習近平国家主席にある」ことを暗に示している。そのため、「ラム行政長官によるクーデター」との見方もあるが、「中国政府と香港の地位を暴露するような内容は国家機密漏洩にあたり、『改正案撤回を撤回』すれば真っ先に中国へ引き渡されるのはラムだ!」との皮肉な論評もある。彼女の行く末は、亡命か刑務所なのだろうか? 
 
●米議会のレジームチェンジ

 夏季休暇を終えた米連邦議会は、9月上旬から審議を再開している。9月11日には超党派による法案、「ウイグル人権政策法案」が上院で可決された。26日には、米外交部会が全会一致で「香港人権・民主主義法案」を通過させ、これから連邦議会で審議される予定だ。

 香港の高度の自治を損なう行動を取った当局者に、制裁を科すことなども盛り込んだ「香港人権・民主主義法案」が成立し、トランプ大統領が署名をすれば、香港を長年、「錬金の場」としてきた共産党幹部とその子女らは大きな痛手を受けることになる。米議会が、中国包囲網となりつつある。

 スティーブン・ムニューシン米財務長官は8月、「トランプ大統領は、非常事態宣言を行えば、国際緊急経済権限法に基づき、米企業を中国から強制的に撤退させることができる」と、インタビューで発言している。
前出のヘイリー元国連大使も、「中国が香港を攻撃したら、ビジネスは終わるべきだ」と語っている。

 すなわち、米議会とアメリカの有識者は少なからず、「自由と民主」「法の下の平等」「人権」という価値基準を持たない独裁政権との関係について、抜本的なレジームチェンジを図っている。これはマルクス・レーニン主義、毛沢東思想と習近平思想を核に、「北京(中国共産党)による世界覇権の野望」を挫くための戦争なのだ。そして香港が目下、その主戦場となっている。
 

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