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実は経済亡命?アリババ会長ジャック・マー氏が完全引退するワケとは?

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 中国の大手IT企業「アリババ」(電子商取引)を創業したジャック・マー(馬雲)会長が、9月10日、会長職を完全に引退しました。

アリババ元会長、ジャック・マー(馬雲)氏

アリババ元会長、ジャック・マー(馬雲)氏(ウィキペディアより引用)

 アリババのサービスは中国人なら誰でも知ってる「中国版Amazon」である、中国の最大手通販サイト「淘宝網」(タオバオワン)や、中国全土でシェア1位の電子決済「支付宝」(アリペイ)など“IT業界の覇者”の地位を獲得してますが、バックで中国共産党と癒着してることもあり、それで成功してるのは事実です。

 この日は馬氏の55歳の誕生日。55歳の若さで、まだエネルギー旺盛なのに、なぜ自ら苦労して育てた企業を完全に他人の手に渡すのでしょうか。どう考えても不自然です。今日はこの謎を解いてみましょう。

 タオバオやアリペイなどでネット通販をすると、その非公開の取引内容を、実は中国政府にバックドアを提供して、ユーザーの買い物の個人情報が筒抜けにさせているのです。

 以前は、ある男性がタオバオで筋肉トレーニング器具を購入したら、翌日に警察が男性宅に調査に入り、「どんな目的でそのものを購入したか?」と、テロ対策名目に取り調べしました。まさしく、この事件をきっかけに、中国国民はアリババが中国政府に恣意的にユーザーの個人情報を検閲させていることが分かりました。同時に、中国政府は融資などアリババを優遇するなど、アリババという企業の成長は、中国政府がバックで支えてるのは周知の事実です。

 ではなぜ中国政府は急にジャック・マー氏と反目するようになったのでしょうか?

●ジャック・マー氏は経済亡命した?

 2015年、ジャック・マー氏はアリババ傘下のオンライン金融事業アント・フィナンシャルを開設しました。この会社は、「余額宝(ユエバオ)」と呼ばれるユーザーがネット通販などの売上金を同社のネットバンクに貯蓄させるサービスです。分かりやすく説明すると、日本ならば、「メルカリ」が「メルペイ」事業を派生させるやり方と似てます。

 さらに、アント・フィナンシャルは銀行と同じく、貯蓄するユーザーに対し、利子を付与します。そうすると、アリババは実質的にオンラインの金融機関に参入したことになります。おそらくジャック・マー氏の想定外で、中国国民はアント・フィナンシャルに熱中してしまい、それまで利用していた銀行の預金をアント・フィナンシャルに一定規模で移転することになりました。これにより中国国有銀行のライバルになってしまったのです。これが中国政府の逆鱗に触れる事態になってしまったのです。

 ところで、僕が日本に初めて来た時に驚いたのは、日本の金融機関はほぼ民営だったことです。もちろん貯蓄の自由は日本国民の基本的な権利です。

 しかし、中国の銀行は9割以上が国有です。中国共産党は自由に国民の財産を取り扱えるように、銀行の民営化を規制しています。

 例えば、政府を批判する中国国民に対し、問答無用で個人口座を凍結したり、犯罪者に対し「全財産剥奪の刑」を課したりするなど、とんでもない人権侵害があります。

 余談ですが、筆者は日本で「中国のヤバい正体」を発行し、日本に移住する際に中国にある個人財産をすべて日本に移したのは、こうした理由があったからです。中国共産党を批判したら財産が没収されるリスクを想定していないといけません。

 そして、中国の国有銀行の利益は中国政府の利益であり、アント・フィナンシャルは中国政府の利益を侵犯したことと同然なのです。

 アント・フィナンシャルはさらに発展すると、アリババが民間企業として中国政府と対抗することになるわけですから、中国政府はジャック・マー氏に警告したと想定されます。

 ジャック・マー氏は引退したら、アメリカに移住するという噂がありますが、中国共産党の報復を恐れて、苦労して育てた企業を惜しまずに捨てても「経済亡命」したのです。

 しかし、ここに問題があります、アリババは誰に譲渡したのでしょうか。中国政府がアリババの脅威を抑えるため、今後中国政府はアリババの国有化も視野に入れているでしょう。

●中国国有化の脅威

 日本にもアリペイのサービスが拡大していますが、実はユーザーはほぼ在日中国人です。しかし、だからといって、日本人とは無関係ではありません。

 日本では10月1日から消費税増税が実施されます、政府は緩和策として「電子決済すれば5%還元」という措置に、日本国内では一気に電子決済が拡大するでしょう。

 現在、ソフトバンクの「ペイペイ」はおそらく日本1、2位を争いくらい知名度の高い電子決済です。実際、ペイペイはアリババのアリペイと提携してるから、顧客の個人情報を共有して、そして中国に流出するのではないかと、すでに日本人の間に不安の声が広がってます。そして、ジャック・マー氏が亡命したあとに、中国政府はどこまでアリババに介入するのか、まだ未知数です。つまり日本人が愛用するペイペイに、いつの間にか、中国政府の触手が届くかもしれません。

●海外企業でさえ中国政府の「餌食」になる

 今回の件で、アリババはそろそろ中国共産党の餌食になりそうな展開です。

 十数年前に、中国の民間で流行ったセリフに、「中国で商売するのは養豚場みたい」というのがあります。ここで言う「豚」は「企業」のことです。中国政府は特定の一部の企業に市場を独占させたり、制限無しの融資をさせたり、などの措置で、企業はぐんぐんと急成長し、一定の実績になると、中国政府はその企業に「恩返し」を求めるというのは定番です。

 例えば、海外に進出してる中国民間企業にスパイ行為をさせたり、中国政府のいいなりになって中国国民を監視するソフトを開発させたりする、等々。

 つまり、中国政府は豚を肥えさせ、そろそろ食べごろになった企業は中国共産党の餌食になり、果てには自主性が無くなります。例外はありません。テンセント、百度、ファーウェイなどは、どれも同じ穴の狢(むじな)です。

 これは中国の民間企業に限られたことではありません。海外の民間企業も同様の被害に遭っています。ただし、海外の企業に対して、その国の機密情報を渡せと命じることではなく、海外企業の特許技術などを中国政府に譲渡させるという図々しい要求が日増しにエスカレートしていきます。日本の企業はすでに、中国で散々このようなひどい目に遭っています。その結果、中国に進出する日本の企業も中国市場で成長するとともに、いずれ中国共産党の餌食になってしまうのです。

*アイキャッチ画像は、ウィキペディアより引用

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