ワシントン・タイムズ・ジャパン

グーグルはじめGAFAは今後どうなるのか?

反逆容疑で調査?

「億万長者のハイテク投資家ピーター・ティールは、グーグルが反逆容疑で調査されるべきだと考えている。 彼はグーグルが中国政府と協働していると非難した。誰よりもこの問題を知っている偉大で素晴らしい男!トランプ政権はこの問題を見てみよう」

 7月16日に、アメリカのトランプ大統領はこうツイートした。保守系イベント「National Conservatism Conference」の基調講演で、ティール氏が「グーグルの幹部は、中国の諜報活動に深く関わっているのではないか」「同社は米軍ではなく、中国軍と組むという恐ろしい決定をしているのではないか」などの疑問を呈し、「これらの疑問についてFBIとCIAが調査する必要がある」と語った内容を受けてのツイートだった。

 シリコンバレーや最先端技術の業界において「生きる伝説」と崇拝されているティール氏は、世界最大級のオンライン決済サービスを提供するPaypalの共同創設者であり、フェイスブックを創業時から支える外部投資家・役員であり、FBIやCIAを顧客に持つビッグデータ解析企業パランティアの共同創業者で、トランプ大統領の強い支持者の1人で政権の参謀としての顔も持っている。

 ちなみに、ティール氏が提議した、「グーグル幹部と中国の諜報活動との関わりに対する疑惑」について、 グーグルは「根拠がない」 「我々が前に述べたように、我々は中国軍に協力していない」とワシントン・ポスト他メディアへ送った声明文の中で否定した。

ドラゴンフライ計画を推進

 グーグル社は2015年10月に再編が行われ、新しく設立された持株会社アルファベット(本拠地カリフォルニア)の傘下に置かれている。技術、生命科学、投資キャピタル、研究といった複数の産業を保有するアルファベットの最高責任者には、グーグル創業者のラリー・ペイジ氏が就任し、子会社となったグーグルの最高経営責任者には、インド出身のタミル人、サンダー・ピチャイ氏が就いた。

 新体制となった後の昨年3月、人工知能(AI)の軍事利用に協力する「メイヴン計画」が表沙汰になると、グーグル社員らの抗議が起こる。グーグルは「AIを用いた兵器開発や人権侵害は行わせない」などの文面を含めた「AI開発6原則」(2018年6月)を理由に、米国防総省の100億ドル相当のクラウドコンピューティングとAI開発の契約入札への参加を取り止めた。

 これが、マイクロソフトやアマゾンを巻き込み、AIの軍事転用・監視利用への反対運動の発火点になったとされる。
グーグルの社員はアジア系も多く多国籍とはいえ、生まれも本拠地もアメリカのはずの企業が「国を捨てた」ことにまず驚く。だが、さらに衝撃が走る。同年8月、グーグルが中国の「ドラゴンフライ計画(政府のネット検閲を受け入れた検索サービスの開発)」を推し進めていることが暴露されたのだ。
同社員1400人が、署名で抗議する事態に発展した。

 ピチャイCEOは、ドラゴンフライ計画の存在を10月になって認めたが、「中国市場の重要性や利用者の多さを考えれば、探求することは重要だ」と開き直りとも言える発言をした。12月には米国議会の公聴会に呼ばれ、メイヴン計画とドラゴンフライ計画の両方に関する追及を受けた。

 しかし、ここで鎮火しなかった。グーグルは再び疑惑の企業として浮上する。今年3月、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長やパトリック・シャナハン国防長官代行が、「中国でのAI研究拠点の設立などで、グーグルは中国人民解放軍に協力している」と告発したのだ。ダンフォード議長やトランプ大統領と面談したピチャイCEOは、「中国のAI研究拠点の成果は、中国に限らず全ての人々に開放されている」と釈明した。

〝電子大王〟の異名を持つ江沢民の長男

 私は、かつて在米のIT業界の有識者から、「グーグル、フェイスブックは、CNNIC(China Internet Network Information Center・中国互聯網路信息中心)の制御下にあり、中国ドメインの分析はここで行われている」と聞いたことがある。1997年6月に設立されたCNNICは、中国政府系インターネット情報提供機関で、中国のドメイン(.cn)を独占的に管轄する認証機関である。

 とはいえ、アメリカのサイバーセキュリティ担当者による、「中国側に『誰がサイバーセキュリティ政策の最終的な責任者なのか?』と聞いても答えを濁された」という報告書も読んだことがあり、長期にわたり権限が不明瞭だったようだ。
そのような中で、アメリカのグレッグ・ウォルトン氏が2001年に出した研究レポートは興味深い。「中国がWTOに加入し対外開放の姿勢を見せようと、一部の幹部は中国国内だけのネット環境の構築する夢を抱き、世界のインターネットをブロックする危険な誓いをたてている。江沢民の息子で、科学技術界の著名人、中国科学院副院長の江綿恒は、上海での某会議で『中国はインターネットから切り離された国家ネットワークを建設しなくてはならない』と述べた」

 この他にも、「中国のネット空間において、絶大なる力を行使してきたのは〝電子大王〟の異名を持つ江綿恒」との記述は反中共系中国語メディアにも記されている。中国科学院がCNNICを運営していたとの記述もあり、中国科学院で長らく江綿恒氏が要職に就いていたことからも、上記のウォルトン氏のレポートと矛盾がない。

 また、中国科学院と香港に本拠を置く通信会社PCCW(パシフィック・センチュリー・サイバー・ワークス)が、英語-中国語のブラウザを開発したとされる。PCCWは長江実業グループ創設者兼会長の李嘉誠氏の次男リチャード・リー(李沢楷)氏の企業で、アジア人で世界一の富豪となった李嘉誠氏と江沢民元国家主席は近い関係にあったことからも、息子たちが協働することは不自然でない。

 ただ、2014年2月、習近平国家主席が党組織として「中央ネットワーク安全・情報化指導小組(中央網絡安全和信息化領導小組)」を発足(現在は「指導小組」は「委員会」に改名)し、習主席自らが議長(組長)に就任した頃から、ネット空間の権限、利権を巡る内紛が激しくなったのではないかと推測する。
CNNICは習主席の同委員会に制御されているというが、すんなりと体制が移行したとは考え難い。詳細は省くが、2015年4月にCNNICの関連会社が不正な証明書を発行していたことでグーグルと対立を深めた際、中国のネット検閲を担う金盾工程(Great Fire Wall)側の人間が、グーグルやアップル、マイクロソフトに、CNNICの証明を排除するよう繰り返し呼び掛けていたという。

 さて、この原稿を書いている最中の7月下旬、グーグルが中国とのドラゴンフライ計画を中止していたことが報じられた。また、グーグルによる中国の関与は限定的(心配ない)といった、米政府の発表もあった。
ただ、2020年の大統領選への出馬を表明したエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)は、「IT 大手は経済、社会、民主主義に対して大きな力を持ち過ぎている。われわれの個人情報を利益のために利用し、市場を歪めた。その過程で中小企業の成長を妨げ、イノベーションを阻害した」と語り、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)を解体構想の対象と位置づけている。

 トランプ政権、そして大統領予備選等での有識者による、GAFAや対抗する中国のBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)に関する情報には今後も注視していきたい。

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