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香港で逃亡犯条例改正案反対、親中派も憎悪増幅

 「逃亡犯条例」改正案をめぐる抗議活動が続く香港では、民主派と親中派の対立が深まり、暴力事件に発展している。香港政府は早期沈静化を目指すが、長引くと政権弱体化のまま11月の区議会選挙を迎えることになり民主派が優位になりそうだ。一方、香港情勢は台湾の与党民進党への追い風となったが、香港では消費に悪影響が出始めており、景気が低迷すると、来年1月の台湾総統選までに風向きが変わる可能性があり、予断を許さない。
(香港・深川耕治)

民主派デモ隊に暴行、混乱
長引けば台湾総統選に影響

 中国広東省深圳に隣接する香港北西部エリアにある元朗駅構内。

 21日夜、改正案の完全撤回を求めるデモに参加した黒いTシャツを着た香港市民らが、突然、白いTシャツ姿の棍棒(こんぼう)を持った数十人の集団に襲撃された。45人負傷、うち1人重体。元朗区は少数民族や新移民が増え、犯罪率が高い。2014年の雨傘運動の時も民主派への襲撃事件は起きており、批判的な勢力に雇われたグループとの疑念が消えない。

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21日、香港北西部の元朗駅構内で、逃亡犯条例改正反対のデモに参加した市民を襲う白いTシャツを着た集団(AFP時事)

 香港メディアによると、集団はバスで計画的に現場入り。白Tシャツ集団に親中派の何君堯立法会議員が「ご苦労さま」「君たちは英雄だ」と激励して握手したとされ、証拠画像もネット上で出回っているが、何氏は「たまたま知人と握手しただけ」と否定している。

 23日、何氏は香港の公共ラジオテレビ局「香港電台」の番組に出演した際も民主派の朱凱廸立法会議員に反対デモの中止を求め、朱議員が拒むと、勝手に番組を中途退出。その後、自分の祖先の墓地が何者かに荒らされ、「朱支持派の仕業。番組出演時の1万倍の憤怒だ」と語っている。

 親中派は20日、民主派の抗議活動に対抗するため、主催者発表で31万6000人(警察発表は10万3000人)が参加する大規模集会を行い、中国国旗を掲げて香港政府や警察を支持する中国回帰の祖国愛と忠誠を込めて「警察がんばれ」とアピール。その勢いが翌日の襲撃事件に繋がったとの見方も根強い。

 一方、香港の民主派団体「民間人権陣線」は21日、「逃亡犯条例」改正案に反対する大規模デモを再び実施。約43万人(主催者発表、警察発表は13万8000人)が参加した。同デモの参加者の一部である1000人以上の若者らが、中国政府の出先機関前で初めて激しい抗議デモを行った。

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21日夜、白Tシャツ集団のメンバーと握手を交わす親中派の何君堯立法会議員(左)=香港のネット画像より

 香港にある中国政府の出先機関「中央駐香港連絡弁公室」(中連弁)の前に集結し、「光復香港、時代革命(香港を取り戻せ、革命の時だ)」とシュプレヒコールを上げ、建物に卵を投げ付け、中国の国章に黒い液体をかけ、抗議活動を行った。このスローガンは、中国からの香港独立を志向する運動家で急進的な若者らに強いカリスマ性を持つ梁天琦氏(暴動罪で収監中)が使っていた表現だ。

 中国の一党独裁による愛国、忠誠を求める親中派と、一国二制度の民主化および普通選挙実現を訴え続ける民主派の「憎悪の連鎖」は、香港社会に大きな亀裂を生む。増幅すればするほど、先鋭化して収拾がつかないばかりか、中国の統治能力に大きな疑問符が付き始める。

 香港トップの林鄭月娥行政長官は非公式に中国政府へ辞任を申し出たが拒否されたとされ、求心力が大きく低下。レームダック(死に体)状態が続きそうだ。習近平指導部も中央政府が指名した香港トップへの指名責任の失墜を恐れ、「外堀が冷めるまで辞任は保留。できるだけ2022年の一期終了時までは引き延ばしたい」(香港の親中派団体幹部)とみている。

 11月の区議会(地方議会)選に向け、有権者登録した人は返還以来、最多の約35万人となり、若者の新登録者数が急増。国家安全条例案の廃案を求めた03年時と同様、民主派が議席を増やす動きとなっており、20年秋の立法会議員選挙も控え、親中派は危機感を募らせる。

 懸念されるのは、大規模デモが長引くことで消費に悪影響が出始め、小売の業績が減り、レストランや旅行業界も厳しくなっていることだ。長引けば、金融・不動産市場にまで影響が及び、深刻化する恐れがある。

 来年1月の台湾総統選で与党・民進党が香港の民主化を支持し、一国二制度を受け入れない姿勢で支持率がアップしていたとしても、香港経済の低迷が続けば、台湾の有権者の見方も反中一辺倒では説得力がなくなり、急速な支持率回復は見込めなくなるリスクをはらんでいる。

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