«
»

一帯一路の狙い、港湾とサイバー基地を確保

米中新冷戦 第2部 中国・覇権への野望 (11)

 中国は海南島を「中国のハワイ」として宣伝し、内外から資本を呼び込んだ。これらの資本などを使って、高速鉄道や高速道路、港湾などインフラ整備を果たした。

ファーウェイ支社

土砂降りの中、雨にゆがむセルビア・ベオグラードのファーウェイ支社

 確かに南部・三亜のビーチは、サンゴ礁が壊れてできた白いビーチが美しく、海岸線にはリッツ・カールトンやハイアットなど五つ星ホテルが林立する。そこだけ見ると「中国のハワイ」そのものだ。

 だが、三亜湾の隣にある亜龍湾には空母4隻が停泊できる長さ800㍍の埠頭が2本あり、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載した晋級原潜が寄港できる専用ポートもある。

 また、かつて日本を目指した鑑真が難破して流れ着いた海南島東部の文昌には、中国で初の海岸沿いの衛星発射センターがつくられたばかりだ。これまでゴビ砂漠の中にある甘粛省酒泉や四川省西昌など、内陸部の衛星発射センターへの搬送手段が鉄道だったことから、直径3・5㍍以上のロケットは搬入できなかったが、船舶が使える文昌ではスペースシャトル以上の直径5㍍のブースターも打ち上げ可能となった。

 いわば、海南島は観光リゾートという「衣の下」に、宇宙と海をにらんだ軍事基地という「鎧」を秘めている。

 「習近平国家主席が国を挙げて推進している『一帯一路』構想も同じだ」というのは、拓殖大学海外事情研究所の澁谷司教授だ。

 澁谷氏は「一帯一路の核心は、海の港湾と陸のサーバー基地確保だ」とし、「マラッカ海峡を経てインド洋、紅海、地中海へと至る『海の一帯』の港湾と、中央アジアを経てユーラシア大陸の東西を結ぶ『陸の一路』のサイバー基地確保」こそ、「覇権構築に向けた布石」だという。

 「一路」の一角、バルカン半島を取材すると、あちこちで目にする中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は圧倒的な存在感がある。多く使われているスマホだけではなく、セルビアの首都ベオグラードなどではファーウェイの支社が目立つ。

 ファーウェイは通信データが通過するルーターも手掛けており、パソコン同様、不定期にプログラムを更新する。その際、バックドアと呼ばれる不正プログラムを送り込まれるとルーター自体が盗聴装置として機能する。通常、サイバー攻撃をブロックするファイアウォールがセキュリティー機能を発揮するが、ルーターはファイアウォールの外に置かれるので、不正が発覚しにくいという盲点を突いたものだ。

 情報は国家の死命を制する。澁谷氏は「これを握ろうというのが『一路』の本命だ」と強調する。

 また、海洋強国を目指す中国がシーパワーを海外展開するとき、艦船を整備したり補給基地となる港湾が必須となる。中国は「債務の罠」などを使い、スリランカのハンバントタ港やアフリカ東部のジブチ、パキスタンのグワダル、ミャンマーのチャオピューなど、「一帯」を自由に動くための港湾を確保している。

 習政権主導の「一帯一路」構想は、中国とユーラシア大陸各国との「ウィン・ウィン」関係を謳(うた)い文句に掲げながら、実は中国だけが「ウィン・ウィン」する基本構造が埋め込まれている。

 この構造は、海南島の三亜港から観光クルーズ船が出帆する時、近接する亜龍湾から空母と原潜が静かに南シナ海を目指していくのと同じだ。

(編集委員・池永達夫、写真も)

7

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。