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米英などが本気モードで敵視する中国統一戦線工作

中国共産党政権のソフトパワー

 ――ユナイティッド・フロント・ワーク・ディパートメント(United Front Work Department)――
 米英豪メディアでは最近、この名称を頻繁に目にする。全世界で中国共産党政権のソフトパワーを浸透させるための中央機関、「統一戦線工作部」(以下、統戦部)のことである。直接的な表現では、中国共産党が「カネ・ヒト・モノ」で世界中に張り巡らせてきたスパイ・ネットワークだ。

 8月24日には、米議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」が、『中国共産党の海外における統一戦線工作』と題する報告書を発表。実態や手法を公にして、警鐘を鳴らした。

 冷戦時代が幕開けた米中関係だが、すなわち貿易(関税)戦争にとどまらない。アメリカは勿論、他国の政治、経済、軍、学術(教育)、メディアにまで深く刺さり込んだ中国共産党のスパイ工作の危険性、その〝赤い猛毒〟について、トランプ政権は世界に向けて注意喚起を始めている。

 昨年11月から統戦部の部長に起用されたのは、習近平一派(福建閥)の尤権(中央書記処書記)だが、第2次習政権で世界における〝赤い工作〟の統括者として君臨するのは究極のマルキスト、序列5位の王滬寧だとみる。

中国スパイ、その手口について簡潔に記そう。


▶第1段階 接触
共産党の工作員が様々な肩書きを使い分けながら、他国の政治・商業・軍隊・メディア・学術界などのキーパーソンとの関係を構築していく。
▶第2段階 取り込み  
他国のキーパーソンを賄賂やハニートラップにかける。
▶第3段階 コントロール
(アメとムチで)取り込んだキーパーソンを操り、中国にとって有利な空気感を作らせる。政治・経済・情報・世論操作などで(隠れ)共産党員が自在に関与できるよう法案制定に誘導したり、教育やメディアを事実上、コントロールしたりする。


 また、英フィナンシャルタイムズ紙(2017年12月20日)は、統戦部の幹部養成用教材の存在を暴露し、全世界で実行する任務が詳述されていること、その隅々には騙しと恐喝の文言が並べられていること、その手口については、「団結できそうな勢力を欠かさず取り入る」「相手に友好、寛容の態度で接する」、一方で「海外の敵対勢力に対しては冷血無情に完全孤立させる」などが明記されていると報じている。

 中国は胡錦濤国家主席時代の2003年、全国人民代表大会(全人代)で、中国企業や資本の海外進出を奨励する「走出去(海外に出ろ!)」の政策を打ち出した。以来、国外に人民とカネが大量流出し、〝赤い工作〟も飛躍的に活発化していくことになる。

 人民解放軍総参謀部や中国国際友好連絡会(友連会)なども長年、似た動きをしているが、いつしか「統一戦線工作で世界を味方につける!」との声が大きくなり、海外スパイ工作の中心が移ったようだ。統戦部員数は2015年以降、急増しているとされ、在外大使館には必ず統戦部関係者が駐在するが、「統戦部工作は威力絶大の必殺技!」と自画自賛している幹部すらいる。中国の十八番は〝孫子の兵法〟。カネ・ヒト・モノを結集させた情報戦と諜報力で、異国の政治と経済、司法すら操ってきたのだ。

「千人計画」も捜査対象

 海外ハイレベル人材招致を目指して、2008年に中国が立ち上げた「千人計画」。同計画についても米連邦捜査局(FBI)は、「中国にリクルートされた個人は、海外で獲得した研究成果まで中国に渡すため、情報や研究財産の盗用などアメリカ法に基づいた違法性がある」と指摘し、2015年以降、捜査対象にしている。研究職、技術者、世界的企業での知的財産・技術保護の能力など、中国系の超ハイレベル人材を高待遇で中国に呼び戻す計画である。

 米議会の国家情報委員会(NIC)も、「国家安全保障に 対する長期的な脅威である」との警告を出した。6月には、貿易・製造政策局が中国共産党によるアメリカに対する知財・ハイテク分野技術の侵害と脅威についてのレポートを発表。その中で、中国が表だって技術盗用する手法として、在米学者のリクルートと共に知財の移譲も求められる千人計画が名指しされた。

 こういった最中、千人計画に選ばれた1人で元アメリカ国籍の中国人エリートが、カリフォルニアで開催される学術会議に出席するためのビザが下りなかったことも報じられている。

 諜報活動に多額の予算を割く国も多い中、スパイ防止法すらない日本において、何より国民の大多数が外国人に対しても性善説を貫き、「スパイなんて映画『007』の世界でしょ」と、実生活での存在を認識できないままでいる。だが、一説には「日本にも中国人スパイが5万人」。その上で、「実態はもっと全然多い。中国人に操られる自覚、無自覚の日本人工作員が大勢いる」との話も漏れ伝わる。

トランプ政権が進める〝21世紀の赤狩り〟

 第2次世界大戦後、米ソ冷戦が幕開けした際、FBIによる「共産党員はソ連のエージェント」「親ソ知識人の背景にソ連の影」、すなわち「アメリカ共産党員は組織的にソ連のスパイ活動の一翼を担っている」との仮説で捜査が始まった。

 その際、ジョン・エドガー・フーヴァー長官の目に留まり、共和党のジョセフ・マッカーシー上院議員に紹介した人物が新米の検事ロイ・マーカス・コーンだった。〝赤狩り(レッドパージ)〟に挑んだ悪魔のような男として、マッカーシーと併せてハリウッドで最もヘイトされた人物だ。そのコーンを、亡くなるまでの13年間、顧問弁護士として雇ったのが若きトランプである。

 大統領選挙期間にも、「トランプはコーンの作品」などとリベラル陣営に揶揄されたが、それはいい得て妙かもしれない。ただ、〝21世紀の赤狩り〟のターゲットは変わった。ソ連(コミンテルン)のスパイではない。そのサル真似で世界を侵食してきた中国(北京テルン)のスパイなのだ。

 さて、「自由と民主」「法の下の平等」「人権」を価値基準とする〝西側諸国〟はとうとう、「世界同時革命」を目指すマルキスト政権、習近平政権を本気モードで警戒し、敵視するフェーズへと移行している。そして、その旗振り役がトランプ政権なのだ。トランプ大統領は、世界で孤立などしていない。

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