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中国製薬会社、子供用ワクチンに欠陥

ハッカー警告「やめろ」

 中国の製薬会社・長春長生生物科技がデータ捏造(ねつぞう)による子供用の狂犬病ワクチンなどの製造販売をしたとして、中国当局は22日、経営トップで「ワクチン女王」と呼ばれる高俊芳会長(64)ら15人を逮捕し、医薬品の生産停止を命じて製造認定を取り消した。人命を左右する医薬品生産・販売の不正横行は、中国内の医療に関わる根深い利権と癒着、許認可をめぐる監視体制の甘さと処罰の軽さが元凶だ。
(香港・深川耕治)

医薬品業界に巨大利権
横行する不正、募る不信

 今回、問題が発覚した吉林省長春市に本拠を置く深圳上場の長生生物科技の子会社・長春長生生物科技は、記録不正による狂犬病ワクチンを生産したとして国家薬品監督管理局から生産停止を命じられ、親会社を含む幹部15人が逮捕された。同社はワクチンをインド、ロシア、エジプトなど約20カ国でも販売している。

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逮捕された長生生物科技の高俊芳会長=中国のウェブサイトより

 長生生物科技は国有企業の医薬品メーカー子会社として1992年に設立され、翌年、高俊芳会長がトップに就任。逮捕直前まで高氏は吉林省政協委員、長春市人民大会代表も兼任していた。2015年の株式上場後も、高会長、夫、息子の3人で株式の3分の1以上を保有し、昨年の富豪調査で一族の資産は51億元(約830億円)と推計された。

 問題は政府が無料で国民に提供するワクチンと自費で接種する水ぼうそうや狂犬病のワクチンが、16年から政府の制度改正で各地方政府の疾病コントロールセンターに一括管理されることになり、巨大な利権空間が生まれたことだ。中国メディアの報道によると、長生生物科技は管轄職員に賄賂を提供し、「会議費」などの不明朗な名目での賄賂用経費が17年は前年比28倍のペースで跳ね上がる異常な経営実態となっていた。

高俊芳会長

逮捕された長生生物科技の高俊芳会長=中国のウェブサイトより

 香港紙「蘋果(りんご)日報」によると、長生生物科技有限公司は中国本土の裁判記録から少なくとも5件の収賄事件で有罪判決を受けており、昨年8月の河南省法院での判決では、同社から河南省寧陵県の検疫センター長に16万4000元(260万円)がワクチン接種の見返り料として支払われ、同センター長は懲役8年の実刑判決で投獄されている。水ぼうそうのワクチンの場合、1回5元(80円)、狂犬病ワクチン接種の場合、一回当たり20元(320円)を支払う換算だったという。

 その一方、13年に中国製薬企業管理協会から同社ワクチンが中国製薬業十大ブランド品に認められ、「中国最有力製薬企業100」にエントリーされるなど、自社評価を対外的に高め、政府の補助金アップを目論(もくろ)んでいた。昨年、政府から受け取った補助金は約4800万元(7億8000万円)で前年比で10倍以上に増加していた。

 また、同社製造の乳幼児が接種することが義務付けられている問題のある百日せきなどの混合ワクチン25万本以上が昨年10月に山東省に流通し、21万5000人以上の子供が接種を受けたことが判明。罰金344万元(5500万円)を支払うだけの軽い処分で終わったこともネット上では「国内産のワクチンはまったく信用できない」と問題視され始めている。

 同社の公式ウェブサイトは23日午前、ハッカー攻撃に遭い、トップページには看護師からワクチン接種を受けている男の子が我慢している画像に「やめろ 祖国の花(子供たち)に会わせる顔なし」との文字が書き込まれた。その後、削除されたが、幼児を持つ親たちの不満の矛先は習近平政権にも向かいかねず、憤怒は収まりそうにない。

 22日、李克強首相は「断固として逸脱した犯罪行為を取り締まり、犯罪者を厳格に処罰する」と述べ、国を挙げて調査チームを設置し、徹底調査に乗り出すことを明らかにした。習近平国家主席も23日、訪問先のアフリカから同社ワクチン問題に対して、「性質は劣悪で目を背けたい惨状。医薬品の安全性を徹底させるのは政府と共産党の責任だ」と強調している。

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