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汚職撲滅にあの手この手のフィリピン

 フィリピンで新政権が発足するたびに掲げられる政策がある。それは「汚職の撲滅」だ。しかしながらどの政権も目標を達成できないどころか、大統領自らが汚職で逮捕されるという残念な結果になることも少なくない。政治家から末端の職員にまで蔓延する汚職体質は、国の発展を阻害する一因とも言われている。

交通違反見逃しにワイロ要求が恒常化

 一般市民にとって身近な汚職と言えば、交通違反をめぐる職員との駆け引きだろう。日本でも交通違反の取り締まりは理不尽さを感じることが多いが、こちらはさらに基準が曖昧で納得いかない場合が多い。最初からワイロ目的の場合もあり、慢性的な渋滞と並んでドライバーの大きなストレス要因となっている。

 このような汚職が横行する背景には、面倒な取り締まりのシステムにあるような気がしてならない。交通違反で捕まると違反チケットと引き換えに免許証が没収され、行政機関に罰金を支払いに赴く必要があるのだ。交通違反の取り締まりは、警察ではなく市などの行政に属する組織が基本的に行っている。例えば出張先のA市で捕まれば、後日免許証を引き取りに再びA市を訪れる必要があるということだ。

 そのため免許証の没収を避けるために、ワイロで済ませようとするドライバーも多い。交通職員もそのような運転手の事情を悪用するといった感じで、汚職の悪循環が出来上がっているのだ。

 最近このような交通違反をめぐる汚職の悪循環を絶つために、大鉈を振るった人物が注目を集めている。元大統領で現マニラ市長のエストラダ氏だ。大統領在任中の汚職問題で有罪になったエストラダ氏だが、職員の汚職にはとても厳しく市民の信頼は厚い。現在2期目であることからも、その人気が伺えるというものだ。

マニラ市長怒り、職員690人解雇

 そのエストラダ氏はこのほど、市の交通課の職員690人を全員解雇するという大胆な判断を下した。理由は交通違反を取り締まる職員たちが、ドライバーを恐喝しているとの苦情が多発したからだという。さらに市内の深刻な渋滞が改善しなかったことも市長の怒りを増幅させた。組織を解体して一から再構築する以外に、腐敗の悪循環を断ち切れないとの判断だろう。

 新しい組織では少数精鋭を目指し職員を300人まで削減。さらに月給を6000ペソから1万ペソに引き上げることで、汚職の防止を図るという。もし3カ月で結果が出なければ、責任者を解任する可能性も示唆するなど、かなり厳しい改革になりそうな雰囲気だ。

空港で「メリークリスマス」禁止の理由

 一方、利用客への恐喝などで悪評高いニノイ・アキノ国際空港では、職員の「メリークリマス」が解禁された。何のことかよく分からないかもしれないが、同空港ではメリークリスマスという挨拶が汚職に繋がるとして長らく禁止されていたのだ。

 というのもクリスマスシーズンになると、就労先の海外からお土産を抱えて里帰りする出稼ぎフィリピン人で混雑するが、彼らにチップやギフトを無心する職員が出没。メリークリスマスという挨拶が、利用客にとってプレッシャーになるとの苦情が相次いだことから禁止になった経緯がある。ところがこのほど、空港公団のモンレアル総裁は、メリークリスマスの解禁を宣言。その一方で利用客に恐喝行為を行わないよう空港職員にあらためて通達し、「違反すればクリスマスを無職で迎えることになる」とクギを差した。

 この程度の脅しで汚職職員が態度を改めるかどうかは疑問だが、季節の挨拶を禁止するという異常な規則がなくなり、空港も正常化に向かっているとポジティブに受け止めたい。

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