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中国にイスラム国家建設?中央アジアから波及するイスラム主義の波

 現在、イスラム過激派組織ISに支配されていたイラク・モスルを奪還する作戦が行われている。イラク軍は統率力と士気の低さで有名だが、米軍などの支援も受けながら、今のところ作戦は順調に進んでいる模様だ。モスルを奪還することに成功すれば、イラク領内での対ISでの戦況がかつてないほどに回復することになる。

 しかし懸念される材料はまだまだ存在する。モスルはISの一大拠点だっただけに多くのIS戦闘員がシリアや他の地域へ脱出することが考えられる。するとシリアでは現在ロシアが空爆を停止しているが、IS戦闘員の大量流入で空爆を再開するかも知れない。また欧州でISによるテロ攻撃が起こる可能性もある。なぜなら、ISは劣勢に立たされたときにこれまで何度も大規模なテロを仕掛けてきた。パリやブリュッセル然り、ベイルートでもそうであった。モスルを失うことはまさに窮地であり、テロ攻撃への備えを各国当局は万全にしておくべきだろう。

 今回はさらに恐るべき可能性について言及する。ISは世界各国から戦闘員を集めているが、その多くは中央アジアのスンニ派民族から流れている。中央アジアとは基本的にカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンそして中国が支配する新疆ウイグル自治区のことで、中央アジア一帯はイスラム教スンニ派が大多数を占める地域であり、十分に過激思想の下地が出来上がっているのだ。

 新疆ウイグル地区に住むウイグル族は中国共産党による弾圧に苦しんでいる。新疆ウイグル地区は現在ではウイグル族よりも、漢族と人民解放軍の割合のほうが多くなっているというのだ。漢族を入植させ、人民解放軍を多く派遣し、監視と圧力を掛け続ける手法で、ウイグル族による独立運動を阻止する狙いがある。

 そのウイグル族からもISに戦闘員として加入しているが、現在モスルで行われている奪還作戦や、シリア・アレッポでのIS掃討作戦で脱出した戦闘員が母国に帰還する動きに目を光らせなければならない。また、訓練を終えた戦闘員がテロ攻撃を実行するために母国に帰還するケースもある。つまり、ウイグルを含む中央アジア一体は「帰還戦闘員」で溢れる事態となっており、国家を脅かすテロ攻撃を誘発する現状であるのだ。

 ISの目的は「イスラム国家」の建設であり、その目的を帰還した戦闘員に託して国家を混乱させることが狙いだ。暴力を使い、力による手法でイスラム主義を根付かせることが目的であり、弾圧を受け続けるウイグル族は中国政府に対抗するためにISを力を借りることを選択したのかもしれない。

 ウイグル族は中国当局に爆弾テロなどの抵抗を行っているが、その手法は全くの素人集団だという。仮にISから爆弾製造やテロの手段を学んだ戦闘員が帰還した場合、テロ遂行能力は格段に上がる。それはウイグル自治区に限らず中央アジア全域が対象になるため、中国国内だけでなく、アジア全域で緊張が走ることになるだろう。

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