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「中国の人権状況、大きく後退」元学生リーダーが講演

天安門事件27周年記念集会で

王丹氏「希望は市民社会にある」

 中国の天安門事件(1989年)で民主化運動の学生リーダーだった王丹氏は5日、新宿の四ツ谷区民ホールで行われた27周年記念集会で講演し、「中国の人権状況は大きく後退した」としながらも「希望は市民社会にある」と指摘。中国の民主化は、市井の人々が立ち上がって政府に対し変革のための大きな圧力になろうと考えるか否かにあると総括した。
(池永達夫、写真も)

王丹氏

王丹氏

 王丹氏は天安門事件を「政府が銃をもって学生運動に幕を引くとは思わなかった」と率直に回顧し「(デモ参加者に)勇気があったわけではない。どれほど危険なことか誰も分からなかった」というのだ。それまで共産党政府は親のような存在で、子供が何か要求すれば相談に乗ってくれるものと確信しており、人民解放軍が冷酷にも自国の国民に銃口を向けるなんて考えてもいなかったというのだ。

 また王丹氏は「(習近平政権で)中国の人権状況は大きく後退した」と述べ、「89年に起きたことと現在、中国で起きていることはつながっている」と訴えた。

 言論の自由を封印し政敵を反汚職運動で牢獄(ろうごく)に送り込む鉄腕統治の習政権下で逮捕されている人権弁護士の多くは、天安門の民主化運動に参加した経験を持っている。

 そして王丹氏は「中国の民主化は、市井の人々が立ち上がって政府に対し変革のための大きな圧力になろうと考えるか否かにある」と展望した上で「市民社会の発展には、インターネットと若者という二つの希望がある」と指摘した。

 なお1989年は五四運動の70周年だった。王氏は「五四運動の新文化創造の運動が民主化運動の源でもあった」と総括し、インテリの社会的責任を重視した中国の伝統的思潮の影響があったとの考えだ。ただ王氏は、清朝末期からずっと受け継がれてきた中国のインテリたちの考え方というのが、天安門事件以後、途絶えていることに危惧の念を抱いている。

 一方、台湾の蔡英文総統は4日、天安門事件を回顧し、自身のフェイスブックにコメントを発表。「われわれは天安門広場の学生の民主と自由に対する思いを誰よりもはっきりと理解できる」とした上で「中国の政治、社会が改革の圧力に直面している」と指摘。「もし中国が人民により多くの権利を与えることができれば、人々は中国をさらに尊敬するだろう」「台湾の民主化の経験を分かち合ってほしい」と訴えた。

 中国で言論の自由や司法の独立、複数政党制など民主化を叫ぶと、待っているのは牢獄だけだが、台湾では社会インフラの水道や電気のような当たり前のものとして存在するし、文化資産としての徳も健在だ。

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四ツ谷区民ホールで開催された六四天安門事件27周年記念集会=東京都新宿区

 「台湾の価値」はそこにこそ存在する。台湾を訪問する中国人の感想は、当初、「中国の方が進んでいる。台湾には古い建物が多いし、高層ビルも少ない」といったネガティブなものだが、やがて中国人は台湾人の優しさに目覚める。同じ顔、同じ言葉をしゃべるが、隣人を思いやったり人としての道を外れない道徳が残っているからだ。

 中国人カリスマ作家韓寒氏は、2泊3日の台湾旅行で台湾ショックを書いている。韓寒氏はスマートフォンをタクシーに忘れたものの、ホテルから連絡があり「タクシー運転手がスマートフォンを届けに来てくれた」という。

 韓寒氏は運転手にお礼をしようと連絡したが「そんなことはしなくていい。いつもやっていることだから」との返事に文化ショックを受ける。台湾にこそ中国の古き良き時代の文化が残っていたと発見したからだ。

 韓寒氏はスマートフォンを忘れたが、中国は先生や親を当局に売り渡し、隣人を密告しなければ生き残れなかった文革で道徳を失った。さらに改革開放で拝金主義にも侵され古き良き時代の伝統的資産は霧散した。そうした彼我の差を、中国人の台湾自由旅行が認められるようになった2009年ごろから中国人は共有するようになっている。

 天安門事件で当局から有罪判決を受けた王丹氏は中国の牢獄に入った後、1998年に病気療養の名目で米国亡命を果たす。そして2008年、ハーバード大学歴史学博士号取得後、台湾精華大学客員教授に就任。現在、王丹氏の主要活動拠点がその台湾にあるというのも必然の出来事のようにさえ思える。

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