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権力空白期の馬政権、混乱必至

 16日投開票された台湾総統選と立法委員(国会議員=113議席)選で今後4年間の台湾政局が民進党政権の復権を軸に大きな転機を迎えている。5月20日の蔡英文新総統就任式までの約4カ月間、馬英九政権は内閣総辞職による与野党連合の新組閣を行う可能性もあり、新政権スタートまでの権力空白期は不安定な政局となりかねない。
(深川耕治、写真も)  「台湾総統選と立法委員選挙の結果」

国民党主席の求心力も低下

民進党や親民党との連立も

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台北市内の国民党選挙本部前で手を振る同党の朱立倫総統候補(中央右)と蒋介石のひ孫で同党所属の蒋万安立法委員候補(中央左)

 総統選での敗北、立法委員選での大幅議席減による下野は与党・国民党にとって立法院(国会)でも完全野党化を意味し、党内立て直しが急務でありながら分裂含みの不協和音がくすぶる。2000年の陳水扁民進党政権誕生の際は、国民党は半世紀以上の一党支配に終止符を打ったものの、立法院では第一党を維持し、少数与党の民進党は立法院のねじれ現象に苦悩され続けた。

 しかし、今回の選挙では民進党が圧勝し、立法院でも国民党と民進党の議席数が逆転。対中融和による景気浮揚を訴え続けた馬英九政権は有権者の支持を失い、朱立倫国民党主席の党内求心力も弱体化している。次期国民党主席が誰になってもまとまりにくい結果となった。

 国民党は各派閥の権力闘争が強まり、本来、総統候補として出馬しながら中途で辞退させられた統一派の洪秀柱立法院副院長(国会副議長に相当)が、党内での出馬手続きを正統に踏みながら辞退させられたという理不尽さで、「党内では洪氏の人気が逆に高まり、朱立倫党主席の人気が下がっている」(翁明賢・淡江大学国際事務戦略研究所所長)状況だ。党内は洪秀柱派、朱立倫派、馬英九派、呉敦義副総統派などに分かれて対中政策でも急進派と穏健派に分かれ、泥仕合になっている。

 馬英九総統としては政権最終盤ぎりぎりまでに、昨年11月7日にシンガポールで開かれた中台首脳会談で習近平中国国家主席と確約した内容を次期政権でも継続するつなぎ役をするため、再度トップ会談を模索。中台統一を目指す統一派の洪秀柱立法院副院長も新総統が就任する5月20日までに訪中を計画し、新政権誕生後も中台関係安定のために中国大陸観光客の増加や貿易増などを確約するために習近平指導部と会談する準備を水面下で進める動きも出てきている。

 だが、馬英九政権8年間で対中融和を進めても、政権樹立後、実質経済成長率年平均6%以上、失業率3%以下、2016年の平均所得を3万米㌦(約360万円)にする「633」政策を提唱しながらも、結果として昨年11月で失業率は3・91%、今年の国内総生産(GDP)実質成長率は1・5%前後になる見通し。リーマン・ショック後の09年以来の低さ。

 対中関係改善の恩恵は一部の企業や団体のみに集中し、中国大陸のモノや人の存在感ばかりが増え、「国民党政権では富の分配が偏り、一向に生活の向上を実感できない」(台中市民)との不満が広がる。昨春来、中台融和は中国大陸にのみ込まれて台湾の存在を脅かすと訴えるヒマワリ学生運動や統一地方選での民進党圧勝に直結。今回もヒマワリ学生運動の指導者らが結党したミニ政党「時代力量(時代の力)」(黄国昌主席)が民進党と選挙協力する形で立法委員選挙で大躍進しており、国民党の各派閥が「現状維持」を超える中台融和を図る動きには強い反発があり、民意を得られないのが実情だ。

 総統選、立法委員選の結果を受け、総統選に出馬した経験のある許信良・元民進党主席は「台湾行政院(内閣)は総辞職後、馬英九総統が蘇貞昌・前民進党主席(元行政院長)を行政院長に指名し、民進党や親民党を含む与野党連立の内閣を組織する動きがある」とみる。台湾の政治制度にとって総統選から新総統就任式までの約4カ月は現職最終盤の総統が組閣や外交で大きく打って出ることが可能な真空期間だ。組閣時に朱立倫党主席や王金平立法院長を重用する可能性もある。

 仮に蘇貞昌氏が行政院長を受諾した場合、蔡英文次期総統の就任時まで民進党内が混乱するが、「敗北が決まった馬英九総統がそこまで次期政権に揺さ振りをかける求心力はない」(国民党関係者)との見方もあり、5月20日の新総統就任式までは台湾政局は不安定な時期が続く。

 半世紀以上、巨大与党として潤沢な党産(党の資産)と中央や地方の人事権を握って君臨してきた国民党は、昨年の地方選に続き、今選挙を機に民進党「一強多弱」時代を迎え、弱い野党と化すことで同党から割って出た親民党(宋楚瑜党主席)との連携も強化せざるを得ず、党の体質が大きく変わる苦渋の時代を迎える。

 一方で大きく躍進した時代力量が民進党とどこまで政策協力し、新政権誕生時に政権中枢に食い込むか、注目されており、蔡英文政権の船出には陳水扁政権時の教訓を生かし、民進党主流派の権力のみが突出しないバランスの取れた人事が練り込まれる必要がある。

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