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東南アジアでコロナ感染急増

 新型コロナウイルスに対し中国は当初、共産党独裁政権による強制力を駆使した地域や都市単位でのロックダウンなどで制圧したとされ、強権国家の優位性を世界にアピールし開発途上国などへの影響力増大に意欲を見せた。だが、ここにきてそのほころびが見え始めてきている。とりわけ中国が“自国の前庭”と認識している東南アジアで感染者が急増していることで、中国製ワクチンの有効性に疑問がもたれ不信感が増幅しつつある。
(池永達夫)

中国製ワクチン、有効性に疑問
マレーシアはファイザーに切り替え

 中国は“新型コロナ制圧”後、マスク外交、ワクチン外交を積極展開。マスクでは一部不良品が発覚し送り返される事例もあったが、現在、中国製ワクチンの有効性と安全性への疑問が広がりつつある。

一晩で63人が死亡したインドネシアのサルシド記念病院の駐車場に設けられたテントで酸素を吸引する患者=14日、ジョクジャカルタ特別州(時事)

一晩で63人が死亡したインドネシアのサルシド記念病院の駐車場に設けられたテントで酸素を吸引する患者=14日、ジョクジャカルタ特別州(時事)

 中国は感染拡大予防のために東南アジア各国に対して早い時期から中国製ワクチンを積極的に供与する「ワクチン外交」を展開、インドネシア、ミャンマーなどには中国の王毅外相が直接訪問してワクチン提供を申し出たりもした。

 そのインドネシアでは先月以降、中国製ワクチンを優先接種した医療関係者の感染が拡大し、感染死する医師や看護師が増えだしている。

 インドネシアでは2種類の中国製ワクチン、シノバック社とシノファーム製が国民に接種されている。疑問視されているのはシノバック社製ワクチンで、接種済み医療関係者に感染が広がったことで、「ワクチンの中身はただの生理食塩水ではないか」と中国製ワクチン接種を躊躇(ちゅうちょ)する動きも出ている。

 これを懸念したインドネシア政府は13日、これまでシノバック社製のワクチン接種を終えた医療関係者約147万人に対し、「流行が著しいインド株に対応するため」として米モデルナ社製ワクチンの3回目の接種方針を明らかにした。

 インドネシアがこれまで確保したワクチンは1億2274万回分。このうち中国製ワクチンは8割以上を占める約1億回分に達し、中国製ワクチンに命を預けた格好のインドネシアは新型コロナや変異株に有効なワクチンへの変更を迫られている。

 こうした現象はインドネシアだけでなく近隣諸国でも報告されており、マレーシア政府は15日、中国製ワクチン接種の中止方針を明らかにし、ファイザー社製ワクチンの接種に切り替える意向だ。

 今年1月から非常事態宣言が継続されているマレーシアでは、厳格なロックダウン下にもかかわらず、感染は拡大する一方で、国民の不満が高まっている。25日に発表された新規感染者数は最多を更新、累計感染者数は100万人を超えた。

 また、タイでもシノバック社製ワクチンを2回摂取した医療関係者600人以上が新型コロナに感染したことで、現場に混乱が生じている。

 12日には日本から105万回分のアストラゼネカ社製ワクチンがタイ政府に引き渡されたものの、通常型の接種ではなく、2度のシノバック社製ワクチン接種を終えた人々に3度目のワクチンとして接種される可能性がでてきた。

 タイでは新型コロナ感染者が急増しており、今月20日から26日までの新規感染者数(人口100万人当たり)は1897人と前週比139%となった。

 タイに隣接するカンボジアも新型コロナ感染急増が顕著で同国政府は24日、感染リスクが高い学校やカジノ、映画館などの運営禁止措置を、8月6日まで2週間延長すると発表した。

 カンボジアが確保したワクチン1700万回分のうち、シノバック社製が1050万回分、シノファーム製が620万回分と中国製がほとんどを占め、アストラゼネカ社製は6万5000回分に過ぎない。これに継ぎ足す形で23日、日本から33万回分のアストラゼネカ社製がカンボジア政府に引き渡された。これも2度のシノバック社製ワクチン接種を終えた人々に3度目のワクチンとして接種されるとの観測がもっぱらだ。

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