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日本が今また問われる、アジア難民受け入れの覚悟

yamada

 

 日米首脳会談の共同声明が台湾海峡に言及、米インド太平洋軍司令官は、今後6年以内に中国軍の台湾侵攻が起こり得ると予測した。もし侵攻が起きたら、日本はどう米軍後方支援をするかに加え、最前線で備えるべき重要課題もある。台湾からの難民流出だ。

 日米が台湾海峡有事への十分な心構えと準備を示せば、侵攻への抑止力ともなろう。だが日本は心構えがあるだろうか。

 2005年、私は東京財団の難民受け入れ研究で台湾の世新大学と協力、台湾の人々が危機の際どれだけ日本を頼るかの小世論調査(18歳以上の240人が回答)を実施した。「日本の支援を期待する」人は67・50%に上った。「どこに避難するか」では、台湾内28・33%、米国17・92%、日本7・92、アジアの他の国7・08%の順だった。

 7・92%でも台湾全人口から計算すると200万人弱となる。台湾の担当教授は「いざその時には、間近な日本の島を目指すボートピープルはもっと増えそうだ」と予想した。

 その後、北京は「武力解放も辞さない」姿勢を強め、日米同盟は強化され、日台交流も進んだ。いま調査をすれば数字は一層大きいだろう。それに応える覚悟が必要だ。

 当面、ウイグル、香港、ミャンマーなどからの難民受け入れ問題がある。それに関連して日本にわずかな変化も出てはいる。①昨年の難民認定者47人中、中国国籍が11人でイエメンと同数1位だった。中国籍が1位など初めてだ②昨年度から第3国定住(アジアのキャンプにいるミャンマーなどの難民を引き取る)の受け入れ人数を倍増、年約60人とした。だが諸外国から見たら絶対数がコンマ以下だ。そして、その後ウイグル、香港情勢の悪化、ミャンマー軍のクーデターがあった。

 日本外交は「自由、民主主義、人権」を掲げる。でも欧米式制裁には同調しない。となれば、難民・亡命の受け入れ拡大は言行一致の重要なリトマス試験紙ともされるだろう。

 ところが今、2月に閣議決定された入管難民法改正案がまた国内外で批判されている。「日本は難民への門戸をまた一つ閉ざそうと知恵を絞っている」(米フォーリン・ポリシー誌)というのだ。特に現行法では何回も申請可能で申請中は強制送還されないと規定されているのを、「申請3回目以降は送還も可能」と改めることへの反発だ。在日ミャンマー人は「帰されたら殺される」と訴える。国連人権理の特別報告者も再検討を求めている。

 だが日本は単純労働者の入国を厳しく制限してきたから、観光、留学、技能実習などの資格で入国し、その後で就労可能な在留資格を得るための“難民申請もどき”をする者が多過ぎた。申請を繰り返せば何年も就労できた。私も難民問題に少し関わり、申請のいびつさを痛感してきた。一方、不法滞在者の長期収容も批判されている。改正案はそんな状況を少しでも是正しようとする苦心の策なのだ。

 在日のミャンマー人、ウイグル人、香港人などの申請者には、少なくとも人道的配慮をすると公約したらどうか。姿勢明示が重要だ。ミャンマーではもう25万人の避難民がいるとか。3国・地域からの難民受け入れ需要は増大する。第3国定住枠もさらに拡げ、受け入れ増で対応すべきだろう。

 1970年代、日本はベトナム戦後のインドシナ難民を数年間受け入れなかった。「アジアのボートピープルも助けないのか」と欧米から批判を浴び、79年の500人から85年の1万人まで受け入れ枠を広げた。今アジア難民の受け入れ拡大で、日本の人権外交を裏打ちすべきと思うのだ。

(元嘉悦大学教授)

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