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フィリピン 続くコロナ防疫措置

 フィリピンでは依然として新型コロナウイルス対策の厳しい防疫措置が続き、国民の生活に大きな影響を及ぼしている。感染者は30万人を超えており、政府はマニラ首都圏などで10月末まで現状の防疫措置を延長することを決定した。世論調査で失業中との返答が45・5%に達するなど、厳しい経済状況も浮き彫りとなっている。
(マニラ・福島純一)

首都圏の規制緩和見送り
半数近く失業中、飢餓経験3割

 フィリピン政府は9月末の新型コロナ対策に伴う防疫措置の見直しで、マニラ首都圏と周辺地域の規制緩和を見送り、10月末まで現状維持することを決定した。経済界や観光業界からは経済活動の再開に向け規制緩和が求められていたが、今回も医療現場の状況を優先した形となった。

マニラの川べりの貧しい住宅風景(2012年9月

マニラの川べりの貧しい住宅風景(2012年9月)

 現在の防疫措置の状況だが、公共交通機関の再開は極めて限定的で、なおかつソーシャルディスタンスの維持で乗客数が制限されるなど、まったく数が足りない状態。その結果、マイカーを持たない多くの労働者が自転車での通勤を選択しており、自転車の需要が高まっている。

 また、州をまたぐ地方への移動には警察からの許可証が必要で、地域によってはPCR検査も必要となる。感染者が多い首都圏からの人の流入を恐れる地方自治体も多く、バスなどの交通機関もほぼ動いていない。まとまった人の移動は政府の支援による帰郷事業に限られている。

 経済的にはショッピングモールなどの商業施設は再開しているが、映画館やゲームセンターなどの娯楽施設の営業は依然として禁止。レストランは店内での食事も人数制限付きで許可されている。しかし、客のほとんどは食料品や必需品の買い出しが目的で、国民の収入の落ち込みもあり、服飾品や家電製品などの売り場は閑古鳥が鳴いている状況だ。防疫措置が6カ月を超え、撤退した店舗も目立つようになってきた。

 禁酒令は多くの地域で解除されたが、バーやクラブなど飲酒を目的とした店舗の営業は禁じられており、闘鶏などの賭け事も禁止。国民の多くが娯楽のほとんどない生活を強いられている。

 ボラカイ島やバギオ市など一部の観光地が10月から国内観光客の受け入れを再開するが、自前のオンライン登録やPCR検査が必須で現地での移動も制限されるなど、まだ気軽に出掛けられる状況にはない。あくまでも観光業界の苦境を軽減するための苦肉の策といった段階だ。

 民間調査会社のソーシャルウェザーステーションが8月に発表した世論調査では、成人の45・5%が失業しているとの結果が出ている。また、9月の調査では30%の国民が過去3カ月に飢餓を経験したと返答するなど、コロナ禍にあえぐ国民の状況が浮き彫りとなっている。いずれの調査も過去最悪の数値だ。

 また、7月に行われたコロナ禍に関する調査では、57%が「最悪の事態はこれから」と返答するなど、長期の防疫措置により悲観的な考えが国民に広がっていることも明らかになっている。

 フィリピンの新型コロナ感染者は9月30日の時点で累計31万1694人、死者は5504人。3月と比較的早い時期に非常に厳しいロックダウン措置を取ったにもかかわらず、アジア地域では有数の感染者の多さとなっている。

 感染がなかなか収束しない要因としては、庶民の多くが狭い家屋に密集して暮らす生活様式や、水道もない衛生状態の悪いスラム地区の存在などの生活環境。さらには、海外でコロナ禍により仕事を失ったフィリピン人海外就労者が20万人近くも帰国したことなど、他の国にはない固有の事情もある。

 3月に始まったロックダウンなどの防疫措置に伴い、21歳以下と60歳以上の高齢者の外出禁止がすでに6カ月も続いており、在留邦人の間では子供の精神衛生を心配する声も出始めている。高齢者の外出禁止に関しては、元政府職員の弁護士が人権違反だとして最高裁に提訴する動きも出ている。

 ドゥテルテ大統領は学校の対面授業に関して、ワクチンが利用可能になるまで再開しないという姿勢を示している。経済の全面的な再開や移動制限の解除なども同様に、ワクチンの有無が判断基準になる可能性が高く、先の見えない状況はまだしばらく続きそうだ。

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