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新型コロナ フィリピン政府が首都圏で再ロックダウン

医療現場の直訴で方針転換

 新型コロナウイルス対策に伴う経済制限の緩和に向けて、本格的に動き出したフィリピン政府が一夜にして方針を転換。再び厳しいロックダウン(都市封鎖)を決断し、国民に困惑が広がっている。医療従事者グループから医療危機に陥っているとの訴えを受けたものだが、政府の優先事項である経済活動の再開がまたもや閉ざされた格好だ。
(マニラ・福島純一)>

日系企業も200人感染

 ドゥテルテ大統領は7月31日、マニラ首都圏における8月からの新型コロナウイルスの防疫方針について、感染の拡大にもかかわらず現状を維持すると発表した。政府は感染者数の増加に歯止めがかからなければ、厳しいロックダウンも辞さない構えだったが、結果的に経済再開を押し通す道を選んだ。

ドゥテルテ大統領

フィリピンのドゥテルテ大統領=3月9日、マニラ(EPA時事)

 しかしその翌日、医療従事者グループが会見を行い、病院における医療従事者の不足や感染者の隔離の失敗など、政府の包括的な対応の欠如から医療現場が逼迫(ひっぱく)しており、「新型コロナとの戦いに敗れつつある」と差し迫った状況を訴えた。その上で、感染者が急増しているマニラ首都圏とその周辺の州で2週間の再ロックダウンを実施し、医療現場に「タイムアウト(小休止)」を与えるよう政府に要請した。

 これに焦ったドゥテルテ大統領は2日夜に急遽(きゅうきょ)、閣僚を集めた会議を招集。4日からマニラ首都圏と近隣の4州で再ロックダウンを実施すると発表した。ロックダウンで、ようやく再開された公共交通機関は再び停止され、生活必需品を売るスーパーやコンビニ、銀行などを除き商業施設は閉鎖。飲食店もイートインが禁止され、デリバリーのみの対応となる。外出には1世帯に1枚だけ配布される検疫パスで制限が課せられる。

 政府はこの数日前にマニラ首都圏および同等の防疫制限をする地域で、これまで禁止されていたスポーツジムやインターネットカフェ、ドライブインシアターなどの再開を容認すると発表していた。さらに、ロケ報道官が「ロックダウンはすでにその目的を果たした」と述べ、今後の新型コロナ戦略の変革を強調するなど、経済再開に向けた次のステップに期待が広がっていた。

 それだけに突然の再ロックダウンは、国民や在留外国人の間に大きな衝撃を与え、フィリピンにおける新型コロナの封じ込めが一筋縄ではいかない現実を突き付けた。

 新型コロナは輸出産業でも猛威を振るっている。マニラ首都圏近郊の経済特区でハードディスク用のモーターを製造する従業員8000人の日系企業の工場では、集団検査の結果200人近い陽性者が出たため州政府が操業停止を命じた。

 また、今回のロックダウンで公共交通機関が停止されるため出勤できない労働者も多くなるとみられ、経済への影響は計り知れないものとなっている。

 4日に発表された保健省の集計によると新規の感染者は6000人に達し、累計は11万人を突破。死者は2000人を超えた。再び課せられたロックダウンだが、大幅な規制緩和の後ということもあって以前のような緊張感はなく、さらに期間も2週間と短く、期待される効果が得られるのか疑問符も付く。

 ドゥテルテ大統領は7月27日の施政方針演説で、中国の習近平主席と行った電話会談でワクチンの優先供給を求めたところ、前向きな反応を得たことを明らかにした。そして今年12月にはワクチンが使用可能になるとの見通しを示し、国の資産を売却してでもをクチンを入手して国民に提供すると約束。国民に絶望しないよう呼び掛けた。

 フィリピンの医療現場は疲弊し、経済の停滞も深刻な状況にある。国の財政も底を突き、「ロックダウンの延長は経済的に許容できない」とロケ報道官は、政府の厳しい事情を吐露している。他国のワクチン開発に希望を託すしかない、打つ手のない状況に陥っている。

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