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気高き台湾のモーゼー李登輝元台湾総統

 プロテスタント・長老派のクリスチャンである李登輝氏は、ユダヤ民族を奴隷の地エジプトからカナンへと導こうとしたモーゼを敬愛した。自らも台湾を中国のくびきから解き放つことを生涯の仕事として課し、総統職を離れても対米、対日関係強化に精力的に動いた。

 1999年には両岸関係を「特殊な国と国の関係」と表現、二国論を展開。同年12月には、米国の外交専門雑誌『フォーリン・アフェアーズ』の論文で「台湾は主権国家だ」と記述し、台湾独立という、旗幟(きし)鮮明にした主張を行うなど、独立運動の精神的な指導者と生涯、仰がれる存在だった。

 李氏は台湾の民主化に舵(かじ)を切った功績が評価されるが、米国から民主化の圧力を受けたというだけではなく、共産党独裁国家を牽制(けんせい)する対中交渉でのバーゲニングパワーになると読んでいた。

 また、松尾芭蕉の「奥の細道」をたどる旅を希望するなど親日家としても知られるが、「日本外交は戦後の傷ついた精神状態から抜け出せず、自虐と自己否定の精神が続いている。米国と中国に無条件に服従する土下座外交は、経済大国の実力にふさわしくない」と苦言を呈することもあった。

 ただ、「台日関係は台中関係より重要」との認識は、生涯変わることはなかった。同じ島国で心と心が通う日本への心情的傾斜が顕著だったが、巨大な強権国家・中国を相手にするには、日本との連携が不可欠との思いがあった。

(編集委員・池永達夫)

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