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台湾総統選 大陸も照らす民主の灯台

台湾総統選 吹いた蔡旋風(上)

 台湾総統選は現職の蔡英文総統が、過去最高の817万票を獲得し再選を果たした。しかも投票率は75%という高さだ。台湾の民主主義の結実でもある今回の総統選の結果は、台湾併合を狙う中国への牽制(けんせい)球になった。ただ、中国が柔軟路線に転じることはない。台湾海峡の波はこれから高くなりこそすれ、なぎになることはない。(台北・池永達夫)

蔡英文総統

11日、台北に隣接する新北市で、投票する台湾の蔡英文総統(民進党提供・時事)

 台湾の総統は、元首であり陸海空軍の(統帥権)を持つ最高権力者だ。

 その総統を人々の一票で選ぶ直接選挙こそは、台湾の民主主義を象徴するものだ。これこそが大陸・中国にはない台湾の資産でもある。

 共産党一党独裁の中国では、権力の正統性が欠落していることから、指導者に力がなければ長老政治になりやすく、力があれば強権統治に陥りやすい。いずれにしても待ち受けているのは権力の機能不全だ。

 その意味では、台湾は中国に対する灯台だ。

 その灯台には、中国共産党政権の闇を照らし出し、台湾の自由と民主主義を守り、さらなる高みへと導く役割が課せられる。

 東アジアではいまだ冷戦は終わっていない。共産主義国家は中国だけでなく、ベトナム、ラオスもそうだ。民主化したはずのカンボジアでは言論機関が駆逐され、野党も亡命を余儀なくされている。自由を意味するタイですら、似たような状況がある。民主主義の後退が顕著なのが東アジアでもある。

 その意味では台湾の民主主義は、東アジアの灯台でもある。

 この灯台を守ることは同じ島国であり、自由と民主、人権などの価値を共有する我が国の責務だ。

 自由で開かれたインド太平洋構想を国策とする我が国にとって、台湾との関係強化はその要となる。

 台湾は大航海時代の波に洗われ始めた4世紀半前から、外来政権に翻弄(ほんろう)され続けてきた悲しい歴史がある。オランダやスペイン、清国、日本、中国などからだ。

 その台湾で2000年、初めて自立を党是とする野党・民進党が総統選挙で勝利した。

 だが陳水扁政権の弱点は、立法院を国民党など野党に握られるという「ねじれ現象」と後ろ盾となる米国にそっぽを向かれたことだ。

 ところが今回は、懸念された「ねじれ現象」は回避された。再選を果たした蔡総統の前に議会が「前門の虎」にもならず、米国が「後門の狼(おおかみ)」にもなることはない。むしろ蔡総統が振ろうとしている自由と民主の旗に風を送っているのが現状だ。

 風を頼りに世界の海を渡っていった大航海時代同様、時代の風をしっかり読み込んで歴史的使命を果たす役割が台湾にはある。

 オランダ人が台湾を発見した時、「フォルモサ」(美しい島)と叫んだ。

 台湾には21世紀に、「民主の灯台」として光輝く役割がある。それでこそ人々から「フォルモサ」の賛辞が与えられる。

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