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台湾総統選 香港問題が与党に追い風

 来年1月11日投開票の台湾総統選と立法委員(国会議員)選まで40日を切った。総統選は再選を目指す与党・民進党の蔡英文総統(63)、最大野党・国民党の韓国瑜高雄市長(62)、小政党・親民党の宋楚瑜主席(77)の3人が立候補し、香港情勢を追い風にした蔡氏が大きくリード。立法委員(113議席)選では、やや劣勢だった民進党が挽回に向かい、激戦となっている。
(香港・深川耕治)

若年層が蔡氏支持へ回帰
中国を警戒「二の舞になるな」

 台湾では、6月から続く香港の抗議デモに中国の脅威を直視し、「決して二の舞いにならない」と中国と距離を置く機運が急速に強まっている。「一国二制度」を掲げながら中国の香港への介入を強める動きは「明日の台湾」と見えるからだ。とくに選挙の勝敗を決する無党派中間層、若年層の警戒感は極めて敏感だ。

蔡英文総統

蔡英文総統(時事)

 市民の要求を拒む香港政府、武力介入の可能性をちらつかせる中国政府の姿勢は、対中強硬姿勢を取る蔡氏に追い風となっている。台湾紙「りんご日報」が11月29日~12月1日に実施した最新世論調査では、蔡氏の支持率は51%と韓氏(19%)、宋氏(6・6%)を30ポイント以上、大きくリードしている。

 総統選の初動時、明暗をはっきり分けたのは、逃亡犯条例改正案をめぐって揺れる香港の抗議デモに対する台湾指導者としての発言、対応だ。

韓国瑜・高雄市長

韓国瑜・高雄市長(時事)

 蔡氏は「香港情勢が悪化し、中国が台湾への介入を強める中、総統選は台湾の民主的な生活を守る選挙だ。一国二制度を受け入れないのが台湾2300万人の共通認識」と述べ、ニューヨーク訪問や米国からの武器供与を通して米国との良好な関係をアピール。就任以来、支持が低迷していた蔡氏が、「中国への経済依存度を下げ、米国などとの関係強化を推進してきた」と訴える親米反中の強硬姿勢を示して支持を回復させている。

宋楚瑜氏

宋楚瑜氏(時事

 一方、今年前半まで支持率では蔡氏を大きく上回り、対中融和路線で「庶民総統」ともてはやされていた韓氏は香港情勢が緊迫してきた6月、香港問題について「よく分からない」「『今日の香港、明日の台湾』なんて完全な大ウソ」と発言。これが批判を浴び、親中派のイメージを払拭(ふっしょく)できず、支持率が急降下。

 韓氏は昨秋の統一地方選で民進党の地盤だった南部の高雄市長に当選し、今年3月には訪中。地元の農産品や特産品を中国当局に積極的に売り込む対中融和姿勢が注目され、今春までは高支持率を保っていた。しかし、香港問題で台湾に対中警戒感が飛び火し、苦戦続きだ。11月に入り、「中国政府は香港行政長官を普通選挙で選出すべきだ」「台湾では一国二制度は受け入れられない」と発言し、親中派との懸念を払拭するアピールをしたが、遅きに失した。

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 鍵を握るのは若年層の投票動向だ。台湾では14年春、中国とのサービス貿易協定発効に抗議する学生らが立法院(国会)を占拠した「ヒマワリ学生運動」が勃発。中国に経済的に呑(の)み込まれるとの危機感が広がり、16年の総統選での蔡氏の圧勝につながった。

 今回も学生らが中心になった香港での抗議活動や香港当局の警官隊による強圧的な取り締まりを背景に、若者の反中機運が盛り上がり、投票動向に大きく影響しそうだ。台湾での20~39歳の人口は約700万人。先回の総統選での同年齢の投票率は約58%なので、同程度の400万票のうち6~7割以上が蔡氏に回帰し、民進党支持となれば大きい。中国が自由や民主主義を抑圧するほど、台湾の若年層だけでなく中高年層も反発して、中国とは違うとの台湾人意識が高揚するからだ。

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 選挙の焦点は中国との距離の取り方から生活、経済政策の違いに広がりつつある。総統選では民進党優位はほぼ変わらないが、立法院(国会)で安定多数による議会運営ができるか否か、民進党にとっては選挙後の4年間を優位に政権の舵(かじ)取りをする上で正念場だ。

 先回の立法委員選では与党・民進党が大勝し、過半数を超える68議席を獲得。今回は過半数(57議席以上)が勝敗ラインとなる。総統選は13日に告示、次期総統は来年5月20日に就任する。

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