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  • 2015/12/24
  • ドゥテルテ大統領のバイク犯罪防止法が物議

    ナンバープレートを倍の大きさに、前部にも装着
    バイク利用者は猛反発、危険で無意味との声も

    バイクに取り付けられた手書きの仮ナンバープレート

    バイクに取り付けられた手書きの仮ナンバープレート

     「ライディング・イン・タンデム」という言葉をご存じだろうか。元々はバイクなどの乗り物に2人乗りすることを指す言葉だが、フィリピンでは殺人の手口を示す代名詞として定着している。

     ライディング・イン・タンデムの手口とは、バイクに2人乗りした犯人による銃撃事件のことで、被害者の多くは車に乗っているところを狙われ、逃げる間もなく蜂の巣にされる。渋滞中の道路や信号待ちの最中に待ち伏せされることが多く、被害者は対策のしようがなく確実に「殺れる」一方、犯人は渋滞をすり抜け素早く現場からバイクで逃走できる。警察が駆け付けても時すでに遅しで、犯人が迅速に逮捕されることはほとんどない。

     このような現状を重く見た議会は、バイク犯罪防止法を可決させ、このほどドゥテルテ大統領が署名し正式に法制化した。その内容とはバイクのナンバープレートを大型化し、さらにバイクの前部にも同じものを装着するというものだ。現地では数も大きさも2倍になることから「ダブル・プレート法」などとも呼ばれている。これにより、より遠くからでもナンバーが認識でき、犯人の検挙率アップに繋がるという理屈だが、バイク利用者や愛好家から猛反発の声が上がったのは言うまでもない。

     最も目立つ反対意見は、そもそも犯罪者は犯行に使用するバイクにナンバープレートなど付けないということだ。仮に取り付けられていたとしても盗難品であったり偽造である可能性が高く、ナンバープレートの大型化はライディング・イン・タンデムの防止に繋がらないという意見だ。

     さらに、大きなナンバープレートをバイクの前部にも装着することになるが、市販バイクはこのような鉄板を前部に安全に装着するようなデザインにはなっていない。当然のように前部にはライトなどの照明が集中しており、ナンバープレートの装着が困難なことは素人目にも容易に想像できる。

     あるバイク団体の代表は、大きなナンバープレートが万が一外れて宙を舞い、歩行者などに当たる危険性を指摘。また大型化したナンバープレートにより空気抵抗が増し、風の強い場合などバイクの安定が損なわれるという懸念も表明した。ナンバープレートの大型化は、一般的なバイク利用者の危険を招き、財政的な負担を掛けるだけという批判が出るのは当然のことだ。3月24日にはマニラ首都圏で、大規模な抗議集会が開催され約5万人のライダーが集結した。

     そもそもライディング・イン・タンデムの横行には、バイクを取り巻く行政の怠慢も大きく影響している。ナンバープレートの製造がまったく追いつかず、新車を購入しても何カ月も受け取れないという状態が慢性化しているのだ。街にはナンバー無しや仮プレートのバイクが走り回り、中には手書きだったり、日本のナンバープレートを模したものをオシャレ感覚で装着している車両まである始末。この混沌とした路上の状況こそがバイク犯罪が横行する原因なのだが、あまりに恒常化しているためなぜか問題視されない。ライディングイン・タンデムは、このような行政の怠慢が横行させた犯罪とも言える。

     ライディング・イン・タンデムをめぐっては、これまでも一部の市行政などが、家族以外とのバイクの2人乗り禁止や、顔を隠すヘルメットの装着を禁止するなど、バイクの利便性や安全性をまったく考慮しない独自の条例が提案されるなど迷走を繰り返している。

     フィリピンでも監視カメラの普及が進んでおり、行政が設置したものほかに、個人や店舗の防犯目的のものなどに犯行の様子がバッチリ記録されているケースも多い。そのような映像がニュースで毎日のように流れており、ライディング・イン・タンデムの犯行の様子が捉えられていることも少なくないが、逮捕に繋がるケースは稀であり、抑止になっているとは言い難い。要するにナンバープレートの認識は大きな問題ではないのだ。

     バイクの販売が好調で数が増え続ける現状では、ナンバーの発給がさらに遅延こそすれ、即日発行が近い将来に実現するとは考えられない。さらにここにきて新型のナンバープレートを導入しようものなら、さらに発行が遅れることは必至の情勢だ。そして路上にナンバーが装着されないバイクがさらに増えれば、ライディング・イン・タンデムにとって、より良いカムフラージュとなるのことは火を見るよりも明らか。

     あまり有効とは思えない法制だが、とにかく行政側としては犯罪対策として新制度を導入したという成果が必要で、さらにそこに生じる新ナンバープレートの利権を手にしたいという目的も透けて見える。若いころに大型バイクを乗り回していたというドゥテルテ大統領が、なぜこんな法制を容認したのか謎である。

     実はナンバープレートだけでなく、運転免許証の発行遅延も問題になっており、犯罪対策以前に行政サービス全般の正常化が国の大きな課題となっている。このような国民の負担や利便性が蔑ろにされる理不尽な社会構造こそが、犯罪や汚職の温床になっているような気がしてならない。国民のへのしわ寄せをまったく考慮しない今回のダブル・プレート問題は、その縮図と言えるだろう。

    (マニラ・福島純一)

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