ワシントン・タイムズ・ジャパン

スーダンの軍クーデター 11月の民間議長就任を潰す

ブルハン氏、前大統領派と結託

ウィーン国連記者クラブ(UNCAV)会長 アブダラ・シャリフ氏に聞く

 スーダンで25日、軍部によるクーデターが発生し、ハムドク暫定首相が一時拘束され、同政権閣僚は辞任に追い込まれた。軍民共同統治からの民政移管を担ってきた統治評議会のブルハン議長は「内戦の危機があった」と説明、評議会と暫定政権を解散し非常事態宣言を発令した。スーダン出身の国連記者でウィーン国連記者クラブ(UNCAV)会長のアブダラ・シャリフ氏にクーデターの背景などについて電話インタビューした。
(ウイーン・小川 敏)

ウィーン国連記者クラブ会長、通信社ホルン・アフリカ・ニュース・エージェントのアブダラ・シャリフ記者

ウィーン国連記者クラブ会長、通信社ホルン・アフリカ・ニュース・エージェントのアブダラ・シャリフ記者

なぜ軍はクーデターを起こしたのか。ブルハン議長は「内戦の危機があった」と説明しているが、真相はどうか。

 ブルハン議長はバシール前大統領が失脚する際、立ち上がった軍の指導者だ。彼らは2019年4月、国民と一緒になってバシール政権を打倒した。その後、スーダンを改革するために軍民統治評議会が同年8月に発足した。同評議会は軍から5人、民間から6人の11人で構成された。ブルハン議長が統治する任期は今月末までで、11月から民間代表が議長ポストに就任することになっていた。ブルハン議長は軍の主導権を維持するため、その前に軍クーデターを行ったわけだ。

英BBCは「軍クーデターは周到な準備の下に実施された」と報じている。

 その通りだ。ブルハン議長ら軍部関係者は治安や経済を悪化させるために1カ月前からスーダンの輸出入の拠点港ポートスーダンで貿易を意図的に混乱させ、日常生活品の不足などで国民の不満を煽(あお)った。そして11月の前に「国内情勢の安定確保」という理由でクーデターを実行したわけだ。

ブルハン議長の下に軍は結束しているのか。

25日、国民向け演説を行うスーダンの統治評議会トップのブルハン氏(スーダンのテレビ局映像より)(AFP時事)

25日、国民向け演説を行うスーダンの統治評議会トップのブルハン氏(スーダンのテレビ局映像より)(AFP時事)

 軍の中にはブルハン議長に反対する軍人がいる一方、バシール前大統領の下で特権を享受してきた軍関係者はブルハン氏と一緒になってクーデターを支援している。バシール派は過去2年間、軍民共同統治に強い不満を持ってきた。ブルハン議長はここにきて国民の抗議デモを恐れ、バシール派と連携している。

クーデター前までの国内情勢や国民経済はどうだったのか。

 国民の経済活動は回復していた。スーダンはテロ支援国家指定を解除され、国の債務は減少し、国際通貨基金(IMF)の協力で経済は回復してきた。バシール政権時代とは全く異なった状況だった。

スーダンのカトリック司教会議トリル司教は「統治評議会の行政府は機能せず、政府内で軍人と民間人との会合は全く行われず、行政府は機能していない。同時に、犯罪も急増した」と指摘していた。

 治安問題は本来、軍が担当しなければならなかったが、軍は治安管理を怠ってきたのだ。軍は利益集団となっている。

欧州連合(EU)やアフリカ連合(AU)はスーダンのクーデターを厳しく批判している。

 国際社会のスーダンのクーデターに対する対応は正しい。海外駐在のスーダン大使や外交官もブルハン議長ら軍のクーデターを批判し、国内の抗議デモをする国民との連帯を見せている。

ブルハン議長は拘束していたハムドク暫定首相を釈放し、自宅監視下に置くなど、国際社会の批判に譲歩する姿勢を見せてきている。同議長は2023年には民主的選挙を実施する予定に変更はないと主張している。

 ブルハン議長の統治下では民主的選挙は期待できない。選挙の信頼性に欠けるからだ。ブルハン議長は辞任しなければならない。選挙はそれからだ。

民間側に国を指導できる政治家はいるのか。

 文民指導者たちは拘束されている。ハムドク氏だけが今、自宅で監視されている。しかし、国際社会はブルハン議長のクーデターに抗議し、スーダン国民との連帯を示している。海外駐在のスーダン外交官、実業家たちも連帯を表明している。一方、ブルハン議長は、先述したように軍の全権を掌握してはいない。同議長の立場は決して強くない。

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