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「自由」対「共産」焦点に

ポンペオ演説の衝撃 新局面に入った米中対決(1)

対ソ「X論文」の現代版

 ポンぺオ米国務長官は先月下旬、カリフォルニア州で演説し、自由世界に対する中国共産党政権の脅威を指摘、民主国家の団結を呼び掛けた。米中関係は、「自由民主主義」対「共産主義」というイデオロギー対立が前面に出る新局面に入った。今後の米中対立の行方や国際政治への影響を展望する。(ワシントン・山崎洋介)

ポンペオ国務長官

7月23日、米西部カリフォルニア州ヨーバリンダで演説する(EPA時事)

 レーガン元大統領は冷戦真っ只中(ただなか)の1983年にフロリダ州で行った演説で、当時のソ連を「悪の帝国」と呼ぶことで物議を醸し、メディアや野党民主党から非難を浴びた。しかし、共産党体制の本質を突いたこの演説が、後にソ連を崩壊させ、冷戦終結につながったとの評価を受けた。

 演説で中国の最高権力者を名指しで痛烈に批判したポンぺオ氏の念頭には、この歴史的事実があったに違いない。

 ポンぺオ氏は、中国の習近平国家主席を「全体主義イデオロギーの真の信奉者」と批判。中国共産党の「暴政」に自由世界が打ち勝つことが「現代の使命」であると各国に呼び掛けた。

 レーガン氏は米ソ対立を「善」と「悪」のイデオロギー対決と位置付けたが、ポンぺオ氏も「中国共産党体制はマルクス・レーニン主義体制だ」として、中国による脅威の根底にあるイデオロギーに焦点を当てた。

 ポンぺオ氏は明確に言及することはしなかったものの、中国の体制転換も視野に入れていることがうかがえる。

 「共産主義者は常に嘘(うそ)をつく。中でも最大の嘘は彼らが監視し、抑圧し、発言しないよう脅している14億の人々を代弁しているというものだ」

 ポンぺオ氏は、天安門事件で民主化を求める指導者だった王丹氏や民主活動家の魏京生氏を演説会場に招き、「自由を愛する中国の人々に関与し、力を与える必要がある」と訴えた。

 新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに先鋭化した米中対立は、中国共産党が恐れる民主派への支援を米政権幹部が言及するまでに至ったのだ。

 中国は、ウイルスの感染状況について隠蔽(いんぺい)を図る一方で、国営メディアやツイッターを用いて米国を貶(おとし)めつつ、「中国型統治モデル」を売り込む情報戦を展開。香港では国際社会の批判にもかかわらず、香港国家安全維持法の施行を強行した。

 こうした中国の攻勢を受け、トランプ政権内では強硬派が対中政策の主導権を握るようになった。トランプ大統領も一時中国との断交の可能性に言及するなど、態度を硬化させている。

 トランプ政権のこうした強硬姿勢は、大統領選対策の一環との指摘もあるが、その見方だけに矮小(わいしょう)化すべきでない。

 ポンぺオ氏の演説は、次期大統領選で民主党が獲得することが濃厚なカリフォルニア州を選んだ。1972年の電撃的訪中で関与政策の道を開いたニクソン元大統領の記念図書館で演説することで、歴代政権が続けてきた「関与政策」との決別を宣言し、次期大統領選の結果にかかわらず長期にわたる米国の対中政策の道筋をつけたかったからだ。

 ポンぺオ氏の演説は、6月下旬以降、オブライエン大統領補佐官、レイ連邦捜査局(FBI)長官、バー司法長官と続いた一連の対中政策演説を締めくくるものだった。一昨年と昨年10月にはペンス副大統領も対中批判演説を展開しており、政権を挙げて政策転換の取り組みを続けてきた。

 保守系の中国専門家ゴードン・チャン氏は、米誌ナショナル・インタレスト(電子版)への寄稿で、六つの演説が長期にわたる対中政策の大きな転換点になるとの見方を示した。これらを冷戦期における米国の対ソ連基本政策となった「封じ込め政策」を提唱したジョージ・ケナン氏の論文が果たした役割と重ね、「対ソ連政策のパラダイムを変えたケナン氏による1947年の『X論文』の現代版だ」と評価した。

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