日本学術会議を「権威団体」として政治利用
日本共産党は政府機関である日本学術会議を、何よりも「権威団体」として最大限利用してきた。
日本学術会議は創立翌年1950年の総会で、日本の米国等との単独講和に反対して全面講和を主張する決議を行った。学術団体であるにもかかわらず政府方針に反対する共産党や社会党に与(くみ)したのである。これに激怒した吉田茂首相は、学術会議の民営化の検討を命じたものの、その前に吉田内閣が倒れてしまった。
日本学術会議の中には多くの委員会があるが、中でも「学問・思想の自由委員会」は、学問・思想の自由の名の下に、学術会議本来の役割とかけ離れた政治問題を取り上げている。52年、国会で審議されていた、共産党の暴力革命を阻止するための破壊活動防止法案についても、「学問・思想の自由を圧迫するおそれがある」として「深く憂慮」するとの声明を発表している。
学術会議は、50年の「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明」に続き、67年10月には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を出している。「戦争」から「軍事目的」と対象範囲を拡大したこの声明は同年、日本の研究者に米軍から資金援助が行われていたことが、朝日新聞にスクープされたことを受けて発表された。折しもベトナム戦争の真っただ中、左翼による反戦運動が激しかった時代だ。
2017年には「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表した。防衛装備庁が15年度に発足させた「安全保障技術研究推進制度」を受けての対応である。「上記2つの声明を継承する」とした上で、「研究成果は、時に科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用されうる」と断言。「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究」は「審査する制度を設ける」ことを求めている。
軍事技術から民間へ転用された先端科学技術は数知れない。無理に両者の線引きをすることは、科学技術の発展そのものを抑え込むのに等しい。それ自体が、「学問・研究の自由」を抑圧することに他ならない。
「学問・思想の自由」は、学者たちが一般から最も共感を得やすい大義名分だ。しかし事実は、政治目的のために利用しているにすぎないことが分かる。
ジャーナリストの篠原常一郎氏は10月、高レベル放射性廃棄物の最終処分場設置のための調査を受け入れた北海道寿都町を取材した際、「埋め捨てにしていいの? 原発のゴミ」という反原発の立場から解説したパンフレットを見せられ、その中に「日本学術会議の提言」が盛り込まれているのを発見。提言は国の高レベル放射性廃棄物の処分方策は抜本的に見直さないといけないというものだった。学術会議の「提言」が、反原発団体の権威付けに使われているのである。
篠原氏によると、パンフレットを発行した特定非営利活動法人・原子力資料情報室は、1975年に日本共産党や社民党に関わりの深い学者や市民活動家らによって結成されたものだ。
「公の金を使って、反政府運動をする。しかも学者の最高峰という権威、肩書で反対する。共産党にとっては何物にも代えがたい価値がある」
共産党による学術会議の政治利用によって、学問の「客観性」「権威」、学問・思想の「自由」そのものが損なわれつつある。
(日本学術会議問題取材班)
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