ワシントン・タイムズ・ジャパン

韓国人から“冷や飯”苦情か?


《ソウル隔離生活体験記(6)》

食事を保温バックで配り始めた

【12月14日(月)9日目】

 昨日は朝から雪が降ったが、今朝になると今度は相当に冷え込んだ。この冬一番の寒気が押し寄せてきたといい、ソウルの最低気温はマイナス10度。斜めに少し開く部屋の窓を開けると、強烈な冷気が入ってきた。このカチッとした寒さが妙に心地いい。昼間もマイナス4度くらいまでしか上がらなかった。寒さは3、4日続くようだ。

朝から降った雪でほんのりと雪化粧したソウル(13日)

朝から降った雪でほんのりと雪化粧したソウル(13日)

 隔離生活が長くなると、だんだん「やること」がなくなるものだ。こういう時は本を読んで時間を潰すに限ると思い、職場の先輩から借りて持ってきた『教誨師』(堀川恵子著)を読み始めた。

 同書は少年時代に広島で被爆した後、上京して浄土真宗の僧侶になり、仕事のかたわら東京拘置所で半世紀にわたり死刑囚たちと向き合ったある教誨師の回想を著者が聞き取りしてまとめたものだ。死刑囚を精神的に「救う」ことの難しさに直面して苦悩する姿が浮き彫りにされており、いろいろ考えさせられる。

 救えない虚しさからなのか、教誨師は晩年、酒におぼれるようになる。ありのままの自分を曝け出し、それがかえって死刑囚の心を開く場面などは印象的だった。

 同書には随所に独房の話が登場するが、隔離生活を余儀なくされている筆者も独房ほどではないにしても、ある種行動の自由を制限されている。拘束性ストレスとでも言おうか、何とも言えない閉塞感を感じているのは確かだ。

 時間潰しと言えばテレビも有効な手段だ。日本では韓流ドラマなど見向きもしない口だが、ここに来てからはなぜかついつい観てしまうドラマが2本ある。

 一つは不動産高騰一等地、教育熱一等地のソウル江南にそびえたつ高層マンションを舞台に、そこに住む富裕層たちが欲望と嫉妬をむき出しにして繰り広げる愛憎ドラマ「ペントハウス」だ。もう一つは犯罪心理に精通した有名女流作家と“国民を代表する夫”と呼ばれる人気弁護士である夫が主人公の「浮気したら死ぬ」だ。夫の浮気を疑い出した妻と妻の猜疑心におののく夫の姿がコミカルに描かれている。

 韓国ドラマらしくどちらも中身が濃すぎる(?)上、台詞も罵詈雑言の連発だったりで正直観ていて少し疲れるが。

 ホテル側が今日の夕飯から弁当を布製のバックに入れて配り始めた。館内放送で「少しでも温かいご飯を召し上がって頂くために」と説明していた。例によって感染防止対策として、この布製バックから弁当だけ取り出し、バックはその位置に置いたままにしておくようにしてほしいということだった。

弁当を入れた布製保温バック

弁当を入れた布製保温バック

 もしかしたら誰かから苦情があったのかもしれない。このホテルで隔離生活をする“同志”たちの中で、筆者のような日本人はまず出されたものを黙って食べるだろうし、欧米人はそもそも韓国食ベースの弁当は口に合わないだろう。中国人も意外におとなしく食べるのではないか。つまり「メシが冷めててうまくない」とフロントに文句を言ったとすれば、それは言葉の壁も食習慣の違いもない韓国人くらいだろう。

 それが証拠に館内放送は韓国語のみで、禁煙のお願いとは異なり英語・中国語・日本語での案内はなし。最初から外国人は想定外だったのか、と思わせる状況だ。

 ただ、韓国語が聞き取れない外国人たちに布製バックの使い方を間違えられては困ると思ったのか、筆者の部屋には後から「さっき韓国語で案内した内容、聞き取れましたか?」と確認の内線電話が入った。

(ソウル・上田勇実)

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