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人間の細分化で新たな差別も

LGBTとは何か

 「LGBT」という言葉は米国で生まれ、1990年代に日本に入ってきた。L(レズビアン=女性同性愛者)、G(ゲイ=男性同性愛者)、B(バイセクシャル=両性愛者)、T(トランスジェンダー=性同一性障害など)が連帯して、権利拡大運動を進めようということで使われるようになった。

 例えば「同性愛者」や「両性愛者」という言葉に抵抗感を持つ人は少なくないが、LGBTというアルファベットなら、その意味がよく把握できないので、社会に浸透させやすい面があり、日本でもLGBT当事者・支援団体などが使うようになった。この言葉がメディアで取り上げられ、一気に広まるきっかけとなったのが一昨年春、東京都渋谷区の同性パートナーシップ条例の成立だった。

 だが、LGBは男性を好きになるか、女性を好きになるかという「性的指向」から見た分類であるのに対し、Tは「性自認」の問題、つまり体の性と違った心の性を認識している人という違いがある。これをLGBTとして同列に扱うことは本来、無理筋の話なのだが、権利拡大運動には共闘したほう有益であるという判断から、この言葉が使われている。

多様化する「性的指向」「性自認」

 さらに、LGBTには、マイナス面も浮上してくる。その上、性的少数者と言ってもその中にはLGBTの枠に入らない人がいるから、当事者の間から不協和音が聞こえてくるようになった。

 例えば、I(インターセクシュアル)という心も体も男女の区別がつきにくい人がいる。差別をなくそうということで出てきたLGBTの概念が新たな差別を作り出すことになってはいけないとして、「LGBTI」という言葉が生まれている。

 「LGBTQ」という呼称もある。自分の心の性別がよく分からないという意味での「クエスチョン」と、英語の「変人」という意味の「クイア」からQを付け足したのだ。こうして見ると、性的少数者というのがかなり幅広く、曖昧な概念であることが分かるだろう。

 ここで議論になるのは、性的少数者がどれほどの割合で存在するのか、ということ。これまでに、日本では政府や権威ある研究機関が行った調査がないために、LGBT支援団体やパートナーシップ制度推進自治体が持ち出すのが電通が行ったインターネット調査(対象約7万人)。2012年と15年の2度行われているが、それぞれ5・2%と7・6%という結果になっている。

 しかし、この調査の信頼性には疑問がある。その一つは3年間で、数字が大きく変化したこと。その容認としては、自分がLGBTのどの分類に入るのかの判断基準が曖昧で個人の主観に頼っていることが考えられる。また、ネット情報などを見ると、15年調査では、LGBT以外の「その他」が3・8%に達した。ここにも性的少数者の概念の曖昧さがうかがわれる。

 一方、「男性」「女性」以外に、性的指向や性自認によって人を細分化して言葉をつくることのマイナス面も無視できない。性的少数者でない人の中には、「異性愛者」と分類されることに不快感を覚える人もいるし、性的少数者と言われることを嫌う人もいる。

 タレントで文筆家の牧村朝子さん(レズビアン)は雑誌「現代思想」2015年10月号で、「私は、私でしかありません」として、「LGBT当事者」を名乗らないと宣言している。LGBTという言葉が一つの壁をつくる結果を招いているからだ。

「LGBT」から「SOGI」へ!?

SOGI_logo-en

「COUNCIL OF EUROPE」のホームページより

 そこで、最近はLGBTに変わって、「SOGI」(ソギあるいはソジ)という言葉を使おうという動きが出てきた。SOは「セクシュアル・オリエンテーション」、つまり性的指向を意味する。また、GIは「ジェンダー・アイデンティティー」、こちらは性自認の略。合わせてSOGI。

 指摘したように、特定の人を指すLGBTは一つの枠をつくることになった。これに対して、SOGIは性的指向や性自認は人それぞれ違うという含意のある概念という。ここからLGBTへの差別を意味する言葉として「ソジハラ」という言葉も生まれた。しかし、これもレッテル貼りに利用され、言葉狩りや逆差別を助長してしまう危うさをはらんだ言葉と言えよう。

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