«
»

外務省、韓国の変化に対応せず

日韓打開 私はこう考える

麗澤大学客員教授 西岡力氏(中)

韓国の変化は十分予測できたはずだが、外務省はじめ日本側は何の対応策もしなかったのか?

西岡力氏

 

 そこがやはり2番目の問題だ。もちろん日韓関係が悪くなったのは韓国側がおかしくなっているというのが第一の原因だが、日本側の対処も遅かった。

 今回の関係悪化の直接の契機は戦時朝鮮人労働者問題に関する大法院(最高裁)の確定判決が昨年10月に出たことだが、それは予想されていたことだ。なのに外務省は具体的な対処を怠った。

 その一方で、外務省が行っていたことは7月から日韓関係に関する有識者懇談会を作り、日韓関係発展方策の話し合いだ。歴史問題はなく、主題は観光や料理。小渕恵三・金大中日韓パートナーシップ宣言20周年の企画だった。

 しかし文大統領は就任直後の2017年8月に大法院長官を左派の「ウリ法研究会」出身で最高裁判事未経験の金命洙春川地裁所長に代えた。新長官主導でその後判事が少しずつ入れ替わっていき、昨年8月には過半数が文在寅任命判事になる。このことも分かっていた。そうすれば、この裁判が動き始めるだろうというのは予想できたことだ。

 新日鉄住金裁判の原告4人は実は「徴用工」ではない。技能工募集に自ら応募して5倍の競争率の試験を勝ち抜いて入って来た者たちだ。

 安倍首相が国会答弁で「彼らは徴用工ではなく、朝鮮半島出身労働者だ」と呼んだが、これは私が首相補佐官を通じて行ったアドバイスの結果だ。この首相答弁以前は、政府は「徴用工」と呼んでいた。本来なら外務省がまず用語を正し、それから首相が答弁するという手順なのに、首相が最初に言い方を正すのはおかしな話なのだ。

 そういう点からみても、外務省は日韓関係がこれほど悪化すると思っていなかったとしか思えない。私は文在寅政権の性質からして安全保障も含め大変なことが起きるだろうと予想していた。

戦時労働者は盧武鉉政権が請求権協定を精査して、これは済んでいるとの結論を出したはずだが。

 そうだ。2005年に日韓国交正常化して40年が経(た)ち、運動団体が外交文書の公開を要求し、盧武鉉が大統領権限で外交文書公開を命令した。公開に当たって、韓国政府の見解を出すための委員会を作った。左派の活動家や学者が中心となり、外交部、法務部の人間も入れた。そこに委員として当時大統領秘書室長だった文在寅本人が入っていた。

 共同委員長には今の与党共に民主党代表の李海瓚(イヘチャン)が入った。外交文書を精査した結果、人道に対する罪の請求権が残っているため、慰安婦の請求権はあるという見解を出した。しかし労働者については65年の請求権協定で日本側から韓国に支払われた資金の中に含まれると見なすベきで、個人補償が不十分な分は韓国政府の責任で補償すべきだという結論を出し、実際に補償している。

文大統領自身がその結論を出したのに、なぜ黙っているのか?

 彼らの表向きの言い分は三権分立だからというものだが、実際は、日韓正常化後の経済協力、安全保障協力による韓国の発展を否定しようとする勢力だから、こういうことが起きている。

(敬称略)

(聞き手=編集委員 岩崎哲)

4

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。