ワシントン・タイムズ・ジャパン

⑤おばあの遺言

《日本経営者同友会会長 下地常雄回想録 (第2部)》

 おばあ(祖母)は常雄を東京に行かせると、「ヤクザもん」になってしまうと心配していた。私は子供の時から短気だったし、腹が立つとすぐ手を出し喧嘩っ早かった。

おばあ(右)

おばあ(右)

 だからおばあからは「お前は、島から絶対出てはいけない」と言い渡されていた。おばあとすれば、「常雄がヤクザになったら、娘のきよに顔向けできんから」との思いがあって、自分のそばに置いておこうとした。
 
 そうした折、宮古島でブラジル移民の話が持ち上がった。私はこれにこっそり応募した。それが露見すると、おばあは本気で叱った。
 
 「ブラジルなんていうのは、地球の裏側にあるような、どこにあるかも分からない国じゃないか。一生、会えないようなところにお前は行く積もりなのか」と詰め寄られ、断念せざるを得なかった。
 
 次に隊員を募集していた陸上自衛隊に応募したら、合格通知がきた。
 おばあに電話すると、ブラジル移民以上に怒った。「あんたは戦争でどれだけの人が死んだのか知っているか。お父さんも死んでいるのに、それでも人を殺しに行くのか」と怒髪天を衝くような勢いで怒った。
 
 人の話には耳を貸さない私も、おばあの言うことには抗えなかった。
 
 何より母親代わりに育ててくれ、世話になった。
 おばあはお袋同様、私の魂の拠り所だった。

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