ワシントン・タイムズ・ジャパン

③肥溜にハマった

《日本経営者同友会会長 下地常雄回想録 (第2部)》

 家の中にいるより外で走り回る方が好きだった少年時代、畑にあった肥溜にハマったことがある。その日は、仲間と一緒に凧揚げに興じていた。

級友と一緒の少年時代(左側)

級友と一緒の少年時代(左側)

 南風が吹く青空に吸い込ませるように凧糸を伸ばしたりするが、風は同じ様に吹いてくれるわけではない。そうした風に翻弄されて落下する凧を何とか持ち直そうと走り出した途端、私は宙に舞い肥溜に落ちた。
 
 畑の中の肥溜は、掘った穴にドラム缶を埋め込み、周りは草で覆われていた。畑の持ち主なら、その位置を間違えることはないだろうが、〝一見の客〟に過ぎない小学生の私には分かるはずもない。
 
 小学生の私の胸の高さで、ドラム缶の底に足はついた。しかし頭などにも跳ね返りがある。私は近くの川にめがけてダッシュした。仲間に目をくれる余裕もない。まず、手と顔を洗い、それから上着を脱いで上半身の汚れを落とした。
 
 しゃがみこんで下半身を洗えば結構、すっきりした。川の淵は土手になっていて、何人かがその道を通過した。「どうしたのか?」「大丈夫か?」などと声をかけてくれる人もいたが、「私は大丈夫です!」とすまして答えて汚れを落とした。
 
 人生を振り返ると、少年時代の肥溜落ちは懐かしさすら感じ、ほのぼのした思い出だが、社会に出て、私は世間の肥溜に手酷く落ちたことがある。
 
 連帯保証人になった取引先の会社の倒産に伴う絶体絶命のピンチだった。こちらの肥溜とその臭いは二度と体験したくない酷な思い出だ。

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