ワシントン・タイムズ・ジャパン

快進撃が続く最強の棋士・藤井聡太三冠

デジタルとアナログの思考を融合

 藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖)の快進撃が続いている。19歳のいまだ底を見せない強さは驚きをもって見られている。

7番勝負で3連勝、藤井棋聖が王位獲得に王手

第61期王位戦7番勝負3局を終え、感想戦を行う藤井聡太棋聖(左)と木村一基王位=2020年8月5日、神戸市北区(日本将棋連盟提供・時事)

 現在、第34期竜王戦七番勝負が行われている。挑戦者としての藤井三冠が先勝している。相手は、天敵といわれる豊島将之竜王だが、このところの対戦は藤井三冠が優勢だ。8月に行われた王位戦では、豊島竜王を破って防衛(棋聖と王位の二冠)、9月に再び対戦、豊島竜王から叡王を奪取、最年少で三冠を達成した。

 最近の対局では、解説するプロ棋士たちの傍らに、人工知能(AI)を搭載したパソコンが置かれ、一つ一つの指し手に勝率が表示される。それを参考に対局者の一手の意味について解説を行っていく。

 そうした対局中に、藤井三冠の一手に対しAIが想定した先の一手、例えば、数手先では勝率は低くても、より数十手先を解析すると勝率が高くなるという傾向が藤井三冠にはあるという。つまり今の一手が悪手でも、その先を考えると良手になるという、これまでの常識が通用しない手がちょくちょく見られるというのだ。

 これは駒の特性や動き、相手の心理状況、さらに将棋の棋盤、縦横合わせた81マスの中で繰り広げられる戦いを俯瞰(ふかん)的に把握していないと難しいものだ。

 藤井三冠の思考は、数学的な確率論・統計論のようなものを強く感じてしまう。藤井三冠の強さを考えると、将棋が三度の飯より好きというのがやはりあるが、それ以上に将棋に対する真摯(しんし)な興味と探求心が人一倍強いということが挙げられるだろう。

 藤井三冠は、対局の研究にAIを相手にした将棋ゲームを使っている。それに加え、過去の江戸時代までさかのぼり、さまざまな対局を文献などから吸収している。その熱心さは、先輩棋士たちも舌を巻くほど。今の藤井三冠の頭脳は、デジタルとアナログが融合した思考になっているとも言える。

 将棋界は、江戸、明治、大正、昭和から平成、令和へと時代が変わり、将棋の研究方法も変わってきた。その最大の変化が、AIを搭載した将棋ゲームの登場だ。プロ・アマ問わず棋士たちの間でもAIを相手に将棋を指すようになった。それまで、将棋の対局に関する研究も棋士たち同士で研究会や勉強会を開くなど人的交流の中で癖や得意な戦法などを感じ取っていた。

 2013年、プロ棋士とAIを搭載したコンピューターが対戦するようになった。年数を重ねるにつれ、コンピューターがプロ棋士たちを凌駕(りょうが)するようになった。

 17年に当時の佐藤天彦名人がAIに敗れたことで、将棋界に衝撃が走った。それまで、AIに対して否定的だった風向きが変わり始めた。このことでAIを相手にした研究が本格化したと言えるだろう。

 実は、藤井三冠も将棋ゲームソフトに親しんでいた。今では、ネットを介した対局やAI相手の対戦もできる。藤井三冠の強さは、デジタルとアナログ(過去の文献の研究)でよく研究していることもあるが、それだけではない。そこから得られたものを藤井三冠自身が咀嚼(そしゃく)し、自身の頭脳で新たな将棋を生み出していると言える。

 藤井三冠を評して“人間AI”と言う。今、AIと藤井三冠が対戦したらどうなるのか、人間が勝つのかAIが勝つのか。今の藤井三冠なら、現役プロ棋士の中には勝てるという声もある。果たしてどうか、気になるところだ。

サンデー編集長 佐野 富成

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