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ミャンマー国軍の浅知恵

《 記 者 の 視 点 》

23年の再選挙、国際社会は認めず

 ミャンマーで国軍がクーデターを起こしたのは2月1日。この日、非常事態宣言を出した国軍は、事実上の政権トップだったアウン・サン・スー・チー氏を拘束し、国家の全権掌握を宣言した。

 あれから半年が経過した。

 8月1日に軍政は2023年8月までの総選挙実施を明らかにし、暫定政府の発足と国軍総司令官の首相就任を発表した。

 軍政とすれば民政移管の取り組みを演出することで国際社会の批判を和らげ、進出企業流出に歯止めをかけ、外資を引き留めたい意向だ。8月までとしたのは、10月開始のミャンマー財政年度とも絡んでいる。

ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏=2020年1月、ネピドー(AFP時事)

ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏=2020年1月、ネピドー(AFP時事)

 なお国軍が思い描くシナリオは、2年後の総選挙までに、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)を解党して、候補者を出せないように法的に縛った上で、少数政党乱立の選挙を実施、国軍系の連邦団結発展党(USDP)との連立政権を樹立してミャンマー政治を牛耳ろうというものだろう。

 昨年の総選挙でUSDPが大敗したのは、小選挙区制の多くの選挙区でNLDに競り負け、自党への票の多くが死票になったことが大きかった。このため、国軍側は比例代表制を導入して死票をなくし、USDPの一定議席確保を狙う。

 憲法上、連邦議会の議席の25%は国軍指名の軍人議員が占める。総選挙では残る議席の3分の1弱を担保できれば総議席の過半数を制し、実権を維持できる。多少取りこぼしがあっても国軍は、NLDと組むことを良しとしない小政党の協力をUSDPが得れば、議席の過半数を確保できると見込んでいる。

 国軍設置の選挙管理委員会は先月26日、NLDが大勝した昨年11月の総選挙について、大規模な不正があったとして無効にすると発表した。NLDを率いるスー・チー氏は汚職防止法違反や国家機密法違反など計10件の容疑で訴追されており、簡単には拘束は解けそうにない。

 判決は、早ければ今秋にも出るもようだ。汚職防止法違反は有罪なら最長で15年の禁錮刑が科される。

 また同時期にNLDの解党命令も出るとの観測がある。

 だが、そうした状況で再選挙を行っても、国民は納得しないし、国際社会が認めるはずもない。

 その結果は、経済低迷と西側社会との断絶だ。内政不干渉を原則とする東南アジア諸国連合(ASEAN)はまとまらず、強権統治を国際社会に輸出し影響力拡大を図っている中国は表向きの言葉はどうであれ、本音では歓迎だ。今回のクーデターも、中国の後ろ盾とASEANの黙認を当てにしていた節がある。

 一方、スー・チー氏を支持する民主派は、自衛のためとして「国民防衛隊」の設立を表明。呼応して各地で武装組織が結成され、一部の少数民族勢力から訓練や武器提供を受けた若者が報復の旗を掲げ、軍任命の行政官らが殺害される事件が相次ぐ。それでも総兵力40万人を擁し、中国やロシアから輸入したミサイルや戦闘機など近代兵器を備えたミャンマー国軍に立ち向かうには力不足だ。何より反政府武装少数民族がこぞってNLDと全面提携する趨勢(すうせい)にはない。

 編集委員 池永 達夫

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