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オンライン党大会 米政治からドラマ消える

《 記 者 の 視 点 》

 全世界の米国政治ウオッチャーにとって、物足りない夏だったに違いない。8月下旬の米共和党と民主党の全国大会が、新型コロナウイルス対策でオンライン中心で行われたからだ。

 大統領候補を正式に選出するために4年に1度開催される党大会は通常、4日間にわたり大規模アリーナを貸し切り、全米から集まった数万人の党員・支持者たちが政治演説に熱狂する。音楽コンサートのようにド派手に行われる政治ショーは、世界でも例がないだろう。

 「(大リーグの)ワールドシリーズ開幕戦で投げるために招待された気分だった」

 ベテランジャーナリストのジェフ・グリーンフィールド氏は、CBSニュースの解説者として1980年の共和党大会に参加した時の印象を、ウォール・ストリート・ジャーナル紙にこう書いていた。

 米国政治に興味を持つ者にとって、党大会はアスリートが目指す五輪のような憧れの舞台だ。客観的には時間とカネの無駄に見えてしまうが、米国政治の欠かせない伝統として定着したのは、グリーンフィールド氏のように多くの人が党大会に魅了されてきたからにほかならない。

 オンライン中心で何より残念だったのは、聴衆の反応が見えなかったことだ。通常なら演説の最中にスタンディングオベーションが起きたり、ブーイングが飛ぶ。それによって党内の盛り上がりや雰囲気が見えてくる。今回の党大会で聴衆を入れたのは、共和党のトランプ大統領とペンス副大統領の演説だけだった。

 党幹部や支持者らによる演説をひたすら流し続けた共和党とは対照的に、民主党は連日、違う人気女優が司会を担当し、途中で音楽映像を流すなど工夫を凝らしていた。洗練さでは民主党の方が上だったが、正直、退屈なドキュメンタリー番組を見させられている気分になった。単純な構成だったが、共和党の方が党大会「らしさ」が出ていた気がする。

 党大会の最大の醍醐味(だいごみ)は、筋書きのないドラマやハプニングに尽きる。筆者は共和党と民主党の党大会をそれぞれ2度現地で取材したが、2016年の民主党大会では、大統領候補に指名されたヒラリー・クリントン氏に反発する若者の党員が大挙してプレスセンターに押し寄せ、座り込みを始めるという事件があった。そんな彼らに直接話を聞き、クリントン氏の人気がなぜいまひとつなのか、その理由を知ることができたことは大いに参考になった。

 オンライン中心では、こうしたドラマやハプニングは起こり得ない。プロデューサーが事前に作り上げた台本通りに進む党大会は、あまりに味気ない。

 04年の民主党大会では、当時はまだ知名度が低かったオバマ前大統領が鮮烈な演説を行い、ホワイトハウスへの道を切り開いた。オンラインでは、新たなスターが誕生する可能性も低いだろう。

 党大会はこのまま地盤沈下してしまうのか、それとも華々しい政治ショーが復活するのか。気が早いが、4年後の一つの見どころである。

 編集委員 早川 俊行

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