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長江流域大洪水は人災 湖干拓で水量調節できず

《 記 者 の 視 点 》

 中国一の大河である長江(揚子江)や淮河(わいが)の洪水がひどいことになっている。被災者の数は、当局発表で5000万人以上となり異例の規模だ。長江や淮河流域には、中国の人口14億人の40%以上に相当する6億人が生活しているとされる。だとすると、被災者数の実態はもっと多いのかもしれない。

 これは人知の及ばない天災だからしょうがないと思う人がいるかもしれないが、実は人災の側面がある。

 これまでは雨が降り続いても長江につながった数多くの湖が大量の水量を一旦(いったん)ため込み、徐々に下流域に流すというバッファーとして水量調節の機能を果たしてきた。国際河川メコン川にカンボジアのトンレサップ湖があるようにだ。

 だが近年、多くの湖は埋め立てられた。埋め立てるには巨大過ぎる湖でも、上流からの土砂の堆積で、蓄えられる水量の激減ぶりが顕著だった。世界最大の三狭ダム建設で下流域に押し流すパワーが弱くなり、土砂の堆積が著しく増えたからだ。

 結局、長江に隣接する二大湖、洞庭湖(どうていこ)と●(「番」に「おおざと」)陽湖(はようこ)は小さく、また浅くなった。また江漢平原(湖北省中南部)にある湖の数は、1066から309と3分の1以下にまで減少し、その面積は8830平方㌔から3分の1の2980平方㌔まで縮小した。

 これで洪水の一部を、湖が吸収することができなくなったのだ。

 なぜそうなったか。

 背景には、各地方政府の安易な開発志向がある。地方政府の最大の財源は、土地使用権の売却だから、山を切り崩して平地にしたり、湖を干拓したりして工場を誘致すれば、住民の立ち退き料などの財政負担もないまま、莫大(ばくだい)な使用権料が転がり込む。

 それも自分の所だけ経済発展すればいいという考えで、地域全体の将来を見通した総合的な計画がないままにやるから、洪水というしっぺ返しが起きることになるのだ。

 無論、三峡ダムが完成したことで、上流域の湖の水位が上がったこともある。三峡ダムが形成するダム湖は広大で、長さは重慶までの600キロに及ぶ。重慶から三峡ダムまでの高度差が200メートル足らずで、それだけ傾斜が緩やかということになる。洪水が起こりやすい地形からして、その対策措置を怠った政府の責任は重い。

 なお、淮河を含めた長江流域は昔から「魚米之郷(水産物や米などが豊富に取れる土地)」として有名な一大食糧生産地だ。

 昨年には中国全土の30%以上を占めた長江流域の食糧生産量は、今年は大きく落ち込むことは必至だ。

 15年前まで中国では穀物が余り、1000万トンが輸出されていたが、近年は、世界の穀物輸入国上位に躍り出てくるようになった。今回の洪水騒動で穀物輸入にも拍車が掛かる見込みだ。

 編集委員 池永 達夫

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