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五輪憲章とLGBT 性指向・自認分けた対応を

《 記 者 の 視 点 》

 五輪の2020大会を開催する東京都は昨年末、「性自認及び性的指向に関する基本計画」を発表した。同計画によると、性自認は「心の性」、性的指向は「好きになる性」だという。そして、個人の性の在り方は、この二つに加えて身体的性別(身体の性)、性表現(表現する性)の四つの要素の組み合わせによってつくられるが、「それぞれの要素自体が多様」だから、結局、性の在り方は「人それぞれ異なっている」というのである。

 こう説明しても、基本計画で使われる用語の概念や性の在り方を理解できる人はどれほど存在するのだろうか。いわゆる「LGBT」(性的少数者)に関する勉強会で、筆者は主催者に「なぜ四つの要素なのか。ほかにもあるのではないか」と尋ねたことがあるが、「いい質問ですね」という言葉が返ってきただけだった。当事者でさえも分からないのだ。

 基本計画とは異なり、性的指向について、法務省のホームページは「人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念」と説明する。恋愛・性愛(性欲)の対象が異性に向かう人は「異性愛者」、同性に向かう人は「同性愛者」(LとG)で、男女両方に向かう人も存在し、そういう人は「両性愛者」(B)と呼んでいる。ところが、恋愛は異性に向かっても、性愛は同性に向かう人もいるそうで、そんな人は何と呼ぶのか。

 トランスジェンダー(T)の分野である性自認も複雑だ。自分のことを「男」「女」のどちらと思うかだけでなく、「間」もあれば「無」もあるというのだから、一般人が理解するのは難しい。

 LGBTは米国から入ってきた、比較的新しい言葉だから理解できない人がいても不思議ではないが、さまざまな困難を抱えた人たちを一括(ひとくく)りにすることで、逆に固定観念を生み出し、それぞれの課題を見えなくしてしまう懸念もある。LGBTという言葉に拘(こだわ)らずとも、その人の困難さに応じた支援は可能なはず。それが日本ならではの対応だろう。

 東京都が、これほど概念が複雑かつ曖昧な文言を用いた基本計画を作成したのは、2018年10月に制定した「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」が「多様な性の理解の推進」をうたっているからだ。

 その背景には、5年前、国際オリンピック委員会(IOC)が「オリンピズムの根本原則」を改訂。差別禁止の対象項目として人種、肌の色、性別、宗教などに性的指向を追加したことがある。このため、東京五輪が近づき、LGBT支援活動が活発化しているが、オリンピズムには性自認は入っていないし、男女は区別されている。

 スポーツ競技で選手の性的指向を問う必要はないが、体の性が男性で心の性が女性の人が女性競技に参加することを認めれば公平性が失われる。性別適合手術を受けた人の五輪参加にも一定の条件が付けられている。どんな人であろうと、差別は許されないが、「ジェンダーフリー」はあり得ないことも五輪憲章は示している。

 社会部長 森田 清策

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