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「こども保険」は安倍政権の命取りに

 再登板後、盤石だった安倍政権が危機に陥っている。森友問題や加計問題など、本来、政権にとっては取るに足らない問題をマスコミと民進党に執拗に叩かれた上に、人格障害を疑わせる女性議員の暴言を秘書に暴露され、稲田防衛大臣の庇いようのない発言がとどめとなり、都議会議員選挙で惨敗したのである。

写真は小泉進次郎オフィシャルブログより

写真は小泉進次郎オフィシャルブログより

 総理周辺は、この危機を乗り越えるために時期を早めて内閣改造を行うようだが、その目玉になるのが、自民党の若きプリンス、小泉進次郎氏というのがもっぱらの下馬評である。小泉氏は、イケメン俳優ばりの容姿や聴衆のハートを掴む演説に加え、東北の震災復興を気遣う人柄からも、将来の宰相候補に相応しいと思う。しかし、万一、氏を文科大臣や厚生労働大臣にすれば「こども保険」という暴挙の一里塚が築かれてしまう点を指摘しておきたい。

 何故「こども保険」が暴挙かを説明する前に、小泉氏が主張する「こども保険」の概略を見ておこう。現在、日本の社会保障は国民皆保険や国民皆年金を中心に組み立てられており、その費用として各人や雇用主は、健康保険料、年金保険料、雇用保険料、介護保険料などを支払っている。これらを総称して「社会保険料」というが、その社会保険料に当初は0.1%、最終的には0.5%を上乗せして、それを教育費や保育費の無償化の財源にしようというものだ。

 誰が氏に入れ知恵したのかは不明だが、如何にも役人が考えそうな姑息な金のとり方である。しかし、この「こども保険料」には致命的な欠点が2点ある。

 1点目は、そのネーミングが「詐欺」に等しい点だ。社会保険料は、それを支払う者に生じるかもしれないリスクを軽減するために支払われるものだ。健康保険料は病気に、年金保険料は収入なき老後に、雇用保険料はリストラに、介護保険料は寝たきりや認知症などに備えて、各人や雇用主が支払っているのである。同様に考えれば、「こども保険」は、将来、子どもが出来て経済的に苦しくなる可能性のある者が保険料を支払い、子どもが出来た時に受け取るのでなければ、それを「保険」とは言えない。将来、子どもができる可能性がない者からも一律に徴収するのであれば、「保険」ではなく「税」である。

 2点目は、ネーミングの誤魔化しから派生する不公平さである。不公平な税金負担は革命さえ誘発する恐ろしいものだ。もちろん「公平性」は時代によって変化する。戦後のシャウプ税制では、所得税や法人税を中心に税が組み立てられ、金持ちや企業が、より多く負担する累進性が「公平」と考えられた。しかし、税の中心が消費税にシフトしつつある現在では、金持ちも貧乏人も同率で負担することが「公平」という考えにも一理ある。はるか昔にさかのぼれば、人民は全員が同額負担する人頭税こそが「公平」とされた時代もあった。では「こども保険」という名の税に一片の公平性があるだろうか。私は「全くない」と断言できる。年間所得が1000万円の自営業者と年間所得が1000万円のビジネスマンでは、健康保険料も年金保険料も全く異なる。自営業者は生来受け取る年金が少額なため支払う保険料は低いが、一方でサラリーマンは雇用主が半額負担してくれるという点で有利だ。それぞれの有利不利はあるが、保険料の多寡には相応の合理性がある。しかし、それを基礎に税を算定する事の合理性は皆無だ。仮に「こども税」を導入するにしても、所得が同額なら同額の税負担をすべきだと、小泉氏は思わないのだろうか。

 安倍政権が危機に陥った理由は種々あろうが、畢竟、国民がこの政権を信じきれなくなっているのだ。そこに、詐欺とも言えるネーミングで不公平な税金を課したとしたら、それは安倍政権だけでなく、自民党政権そのものへの不信へと繋がるだろう。

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