«
»

教育で戦後GHQのWGIP政策からの影響脱却を

憲法改正 ここが焦点(5)

日本大学名誉教授 小林宏晨氏(上)

今、憲法改正するとしたら焦点はどこになるか。

小林宏晨氏

 こばやし・ひろあき 昭和12年秋田県生まれ。独ヴュルツブルク大学で法学博士号取得。専攻はドイツ基本法(憲法)および国際法、比較憲法、EU法。上智大学外国語学部教授、日本大学法学部教授を経て現在、日大名誉教授。平成19年から4年間、秋田県の上小阿仁村村長も務めた。

 憲法改正の目的として四つばかりある。

 一つは安全保障。普通の国家並みの安全保障を共有できるための改正だ。もう一つは、環境問題をどう考えるか。いま一つは二酸化炭素(CO2)の排出をどのように規制するか。四つ目は核問題をどうするかだ。

 安全保障が一番大事なのは間違いないが、日本は技術水準が高いから、環境問題やCO2の削減などを考慮に入れたいろいろな規定は可能だ。それをどう条文化していくかだ。だいたい、これらを憲法改正の対象にできるのではないか。しかし、それが実現できるかというと、私は少し悲観的だ。

なぜ悲観的か。

 一番の問題は、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が占領下に行った「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)」という米国の政策だ。日本は戦前・戦中すごく悪い事をしたのだから、反省に反省を重ねて平和な国になるべきだという考えを日本人に刷り込む政策で、要するに「一億総懺悔教育」を米国にやられた。教科書がほとんど黒で塗りつぶされるところから始まり、日本は今まで悪いことをやってきたのだと徹底的に学校で教えた。

 これには良い面も確かにあったが、主権国家の論理というものは一切なくなった。この考えによって作られたことが、現憲法の最大の問題点だ。

同じ敗戦国ドイツは占領下で基本法を制定した。

 あれは基本法という名前の憲法だ。東ドイツがあったので、合併するまでは憲法という言葉を使いたくなかった。最初の基本法には軍隊に対する条項は一つもなかったが、後に新しい条項を入れて連邦軍をその中に挿入し、さらに大掛かりな改正をして緊急事態憲法を作って基本法の中に組み込んだ。そういうことをやって徐々に普通の国家に成長していった。

 ドイツも3分の2で提案すれば憲法改正ができるシステムだが、ドイツの立法は80~90%くらいの多数で可決されているので、憲法もいつでも改正できる。もう60回ほど改正されている。一度作ったものは改正しないという日本の心理状態は特殊で異質なものだ。

憲法が平和を守ってきたという野党の主張も特殊だ。

 WGIPがずっと今に至るまで、日本の精神状態を規制している。だから、これを克服するのは至難の業だ。ようやく安倍政権になって憲法改正の問題が現実味を帯びてきた。米国によって設定された3分の2を議会で取るのは難しいが、それでも発議までは行くかもしれない。しかし、国民投票で否決されたら目も当てられない。

日本人の心に根付くWGIPの影響にどう対処すべきか。

 何といっても教育だ。自分の存在に対するプライドはどの国もそれなりの形で持っている。日本がやったことは全面的に悪いからごめんなさい。そんなことは長続きするはずもない。

 歴史教育は大学の研究と違う。小・中学校ではプラスの面を強調して、自分の所属するゲマインシャフト(共同体)にプライドを持つような教育をすべきだ。事実に反して教える必要はないが、真実の全てを教える必要もない。そして本当に判断できる年齢、中学校を卒業した頃から史実の部分をもっと多くし、マイナスの面、プラスの面をバランスを持って教える方式をとったらいい。

 (聞き手=政治部・武田滋樹、解説室・窪田伸雄)

4

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。