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国家戦略特区の実験成功させ経済再生を

 安倍政権が成長戦略の柱としている国家戦略特区法案が今国会で審議入りした。安倍晋三首相は、大胆な規制緩和で民間投資を呼び込むことで「世界で一番ビジネスのしやすい環境を創出する」と意欲を示している。法案成立が経済活性化につながることを期待したい。

地域指定し規制緩和

 国家戦略特区は、都市再生、教育、雇用、医療、歴史的建築物の活用、農業などの分野で地域を指定して規制を緩和する制度だ。

 法案が成立すれば、首相を議長とする「国家戦略特区諮問会議」が新設される。諮問会議のメンバーからは厚生労働相、農林水産相ら規制を所管する閣僚は除外し、特区の基本方針は閣議決定、地域は政令で定めるとするなど決定権を首相に集中させた。

 これまで特区を設ける規制緩和策は、小泉政権による構造改革特区、菅政権による総合特区などがあった。だが、地域が実施主体で、都市と地方の格差に配慮した地域振興策の色彩が濃かった。

 これに対し、安倍政権の「国家戦略特区」は、企業や地域の提案をもとに諮問会議が特区の地域および規制緩和を伴う事業を指定する。すでに、企業などから197件の提案がなされている。

 安倍政権発足後、アベノミクスによって経済指標は好転しているが、自律的成長の段階に達しているとは言えない。昨年の貿易赤字額は1979年以降で最大を記録し、今年に入っても拡大している。来年4月には消費増税を控えており、首相が強い指導力を発揮して経済再生に向けた取り組みを継続していくべきだ。

 ただ、「国家戦略特区」における改革のメニューは、「大胆な規制緩和」や「世界一のビジネス環境」といった掛け声に比べて小粒な内容だ。例えば都市再生の分野では、建築物の容積率や用途など土地利用規制の見直し、道路空間の有効利用、滞在施設の旅館業法の適用除外などがある。

 しかし、首都圏で2020年の東京五輪特需を見越せるとしても、箱物建設と外国人客誘致による観光振興策の域にとどまるものだ。「世界一のビジネス環境」にするには、税制も含めさらなる規制緩和策の検討が必要だろう。

 他の分野では、公立学校運営の民間への開放、外国人医師・看護師の業務解禁、古民家の活用や歴史的建造物に関する旅館業法の特例などは、新たな発想が認められるものの、日本経済全体の成長を牽引(けんいん)できるかは疑問が残る。

 一方、農業分野では6次産業化を進める試みがあり、アグリビジネス振興の上で試金石となろう。

 いずれにせよ、今国会で成立を期す国家戦略特区法案の眼目は諮問会議の立ち上げだ。来年に行われる予定の特区の地域と事業の指定は、手始めの実験となる。

大胆な取り組みが必要

 その成果を見て、本格的な経済の底上げに向け、政治主導による大胆な取り組みを行って実績を上げてほしい。

(11月14日付社説)

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