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首相所信表明、道半ばの改革を加速させよ

 第187臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。首相は「地方創生国会」と位置付け、地方の現状への危機感をにじませて解決への意欲を示したが、対処すべき課題は他にも多い。首相は与野党の対決を避けて手堅い国会運営をしたいという消極的な姿勢ではだめだ。国内外の情勢に対応できるよう道半ばの改革を加速させるべきである。

地方の衰退は国の危機

 会期が11月30日までの63日間と短いだけあって、多くの課題をこなすことは難しいだろう。ただ、その中にあって集中的に取り組むべきものと、これまでの議論を加速させて法制化などで対処すべきものの両方を進めていかねばならない。

 首相は特に、今国会で人口減少や超高齢化などに悩む地方に光を当て、若者にとって魅力ある町づくり、人づくり、仕事づくりを進め、「これまでとは次元の異なる大胆な政策を取りまとめ、実行していく」考えを強調した。

 だが問題はその処方箋だ。地方活性化には地方自治体の提案を生かすことが重要だが、地方自治体から寄せられた提案に関する関係省庁の検討では、8割が「対応不可」の回答だった。地方の衰退は国家存亡の危機につながるだけに、国と地方、与野党の別なく英知を結集しなければならない。

 首相が演説の冒頭強調したのが「災害に強い国づくり」だった。御嶽山の噴火、広島での土砂災害など頻発する自然災害への対応は急務だ。災害時に放置された車両の移動などを可能にするため災害対策基本法を改正し、インフラの整備、避難計画の作成や周知、訓練の実施など、国土強靭(きょうじん)化を推進することは当然である。

 忘れてならないのは、大規模な自然災害はもとより、原子力発電所の事故や外国の侵略、テロなど国家の安全と生存にかかわる危機が生じた時どう対応するかの旧来の課題だ。危機管理の際の首相の権限や国会承認などを盛り込んだ緊急事態基本法の制定も国土強靭化に向け加速させるべきである。

 1月の施政方針演説にあった首相の悲願である憲法改正も、所信表明には盛り込まれなかったが、これこそ改革の本丸ではないか。「教育の再生」も演説の最後に道半ばの改革の一つとして言及されただけで、本気度が疑われる。

 中国や北朝鮮との外交姿勢については、軟化した印象だ。施政方針演説では中国について、一方的な防空識別圏の設定や沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入などを批判。北朝鮮に関しては、拉致、核、ミサイルの「包括的な解決」を訴えたが、今回はそれらが欠落し、戦略的互恵関係の発展や拉致被害者の帰国などに期待する発言にとどまっている。だが、楽観視はできまい。対北では米国、韓国との協調が前提であり独走は禁物だ。

国民の視点で合意を

 きょうから各党代表質問が始まる。1強多弱の国会情勢の下で、政府与党には丁寧な国会運営を求めたい。野党も党利党略で論戦に挑むのでなく、国民本位の視点で合意が得られるよう建設的な対応をすべきである。

(9月30日付社説)

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