ワシントン・タイムズ・ジャパン

岸田首相の電話首脳会談「韓国飛ばし」と李在明リスク

 韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に今朝、岸田文雄首相が就任後に電話首脳会談を行っている相手国から韓国が「後回し」にされているとする記事が掲載されていました。国際法、条約、約束を守らない相手国に対する対応としては、ある意味では当然のことではあります。ただ、その一方で、韓国で「李在明大統領」が実現するならば、日韓関係はさらに緊迫したものとなってくる危険性もあります。


人間関係と外交関係

●「みんな仲良く」論のウソ

 ひとつ、個人的な体験談を告白しておくならば、ウェブ主自身、学生時代には「みんな仲良く」という考え方が大事だと思い込んでいた時期がありました。というよりも、おそらく日本人の多くは小学生のころ、先生から「みんな仲良くしてね」と教えられた経験があるのではないでしょうか。

 ただ、「みんな仲良く」という表現、注意が必要です。

 こちらが「仲良くしよう」と思っていても、相手がこちらと「仲良くしよう」と思っていない場合には、相手と仲良く過ごしていくことなどできないからです。

 やはり世の中の圧倒的多数の人は、人生経験のなかで、「あぁ、この人とは、どうしても仲良くできないな」と思ってしまう相手が出て来るものですし、こうしたなかで社会人の多くは「嫌いな相手とも何とか波風立てないように、うまく折り合いをつけていく」という術を身に着けていくのでしょう。

 この点、当ウェブサイトではときどき指摘するとおり、人間関係には一般に次の4つの関係があります。

■人間関係の4パターン


①その人のことが好き、利害関係上付き合う必要がある
②その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要がある
③その人のことが好き、利害関係上付き合う必要はない
④その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要はない

(【出所】著者作成)

●②の関係は④の関係に持っていく?

 著者自身の拙い経験上、①のような関係ばかりならば人生苦労しません。その人が仕事などで成功できるかどうかのひとつは、②の関係をどう制していくかにかかっていると思うのですが、これについては後述します。

また、③の関係は、「昔の職場のお世話になった上司」、「学生時代の恩師」といった具合に、利害関係が消滅したにも関わらず交流が続いているというパターンです(折に触れ旧交を温め、このような人間関係を大切にして行ける人の人生は、豊かなものなのかもしれません)。

 そして④の関係については、その利害関係がなくなれば、ほぼ間違いなく、消滅します。好きでもないしお付き合いする必要もないひとと仲良く付き合っていく必要などないからです。

 この点、人間関係によっては、上記①~④のいずれかに分類できない場合もあり、その典型例が、いわゆる「ストーカー」(付きまといの加害者)と、それに付きまとわれている被害者の関係でしょう。

 ただ、こうした例外を除けば、上記①~④は、人間関係をスッキリと整理・説明するうえで、大変に有益です。

 そして、上記の類型のなかで、②については本当に悩ましいものですし、これだけで本が1冊でも2冊でも書けてしまうほど深いテーマでもあります。

 ただ、個人的な主観ですが、②の関係については、「我慢してお付き合いする」だけでなく、その人の嫌な部分を見ないようにしつつ、その人の優れた部分を認めるなどし、できるだけその人を好きになろうと努力すのが筋でしょう。

 そのうえで、自分が努力しているにも関わらず、相手が自分に対して理不尽な攻撃(悪いうわさを流す、嫌がらせをする)などを仕掛けてきた場合には、自分自身の正当性を訴えて味方を増やし、あるいはその人と利害関係上、できるだけお付き合いしなくて済むように努力するようになるかもしれません。

 つまり、②の関係を④の関係にしてしまえば、問題は解決、というわけです。

 (なお、本稿では②の関係をどうやってうまく過ごしていくかについて、論じるつもりはありません。読者コメント欄などの場で、「私はこうやって嫌な上司/同僚/部下をうまくやり過ごした」という体験談などを語らっていただいても問題ありません。)

●外交でも②の関係は大変に厄介だ

 以上の議論は人間関係に関するものですが、外交関係に関しても、じつはまったく同じことが成り立つというのは、普段から当ウェブサイトで議論しているとおりです。

 つまり、ある国から見た外国は、究極的には次の4つに分類されます。

■外交関係の4類型
①基本的価値を共有する、かつ、戦略的利益を共有する相手国
②基本的価値を共有せず、かつ、戦略的利益を共有する相手国
③基本的価値を共有する、かつ、戦略的利益を共有しない相手国
④基本的価値を共有せず、かつ、戦略的利益を共有しない相手国

(【出所】著者作成)

 このあたりは、人間関係でいう①~④の類型と、まったく同じことがいえます。

 ①の相手国が最も大切であることは言うまでもありませんし、また、国益を最大化するためのカギは、世界中に①のような相手国をどれだけ増やすことができるか、という点にあることは間違いありません。

 一方、外交関係においては、③のようなケースはあまり多くありません。地球上にはいわゆる「主権国家」、あるいはそれに類するものは200ヵ国前後くらいに過ぎず、どんなに地理的に離れていても、基本的価値を共有していれば、それだけで何らかの利益をもたらすからです。

 ただし、理屈のうえでは、戦略的利益の共有度合いには強弱があるでしょうから、いちおう、基本的価値を共有している相手国のグループにも、戦略的利益をどの程度強く共有しているかによって、①と③に分類するのは有益です。
 そして、②の相手国との付き合いが厄介だ、というのは、そのとおりでしょう。

 たとえば、日本は自由、民主主義、法の支配、人権といった基本的価値を大切にし、実践する国ですが、世界を見渡せば、非常に残念ながら、これらの基本的価値を部分的にしか共有しない、あるいはまったく共有しない国が存在することは事実です。

 宗教的に「男尊女卑」が貫徹している国、約束を守ることが尊重されない国、共産主義国家、独裁国など、世界にはさまざまな国が存在していて、これらの国々とは、価値を共有しないなりにうまく折り合いをつけて行かねばならないこともあるのです。

「関わらない」という選択肢

●ひとつのソリューションは「関わらないこと」

 ただ、人間関係と同様、②の関係を④の関係にしてしまえば、新たな問題が生じることを防ぐことができる場合もあります。

 要するに、「関わらない」ことです。

 「日本は島国だから、陸で国境を接する国の悩みはよくわからない」、などと指摘されることもありますが、たしかに世界には、「必要以上に関わらない」ということを通じ、問題をうまくマネージする、という事例はあります。

 もちろん、隣国同士の場合、領土問題やその他のトラブルなどで、必要最低限の対話が必要であったりすることもありますが、そのようなケースであっても、その最低限の対話のみ行い、国民どうしは極力関わらない、という事例もあるのです。

 典型例が、日本と北朝鮮でしょう。

 北朝鮮は日本人を拉致し、返そうとしない犯罪国家ですが、日本はその北朝鮮に対し、現在、ヒト、モノ、カネの流れをほぼ遮断する措置を講じています(※日本国民が北朝鮮に渡航することを禁止することは法的に不可能ですが、いちおう、日本政府としては渡航自粛を国民に呼びかけています)。

 これで日本にとってなにか実害があったのかと問われれば、少なくとも北朝鮮に対する経済制裁発動後に、日本経済が立ち行かなくなったという事実はありません(※むしろ青色吐息なのは北朝鮮経済の方でしょう)。

 つまり、外交関係において、②の関係に関しては、「困難な関係であったとしても可能な限りは改善の努力を続ける」という努力は必要ですが、本当にどうしようもなくなった場合には、「国際社会に自己の正当性を訴えたうえで、相手との関係を希薄化」せざるを得ないのです。

●岸田首相の「韓国飛ばし」報じたハンギョレ新聞

 さて、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に今朝、こんな記事が掲載されていました。

岸田首相、韓国飛ばして各国首脳と電話会談 


―――2021-10-11 08:31付 ハンギョレ新聞日本語版より

 これは、岸田文雄首相が就任以来、「クアッド」を構成する米豪印各国、ついで中露両国などとの電話首脳会談を相次いで実施したものの、(この記事執筆時点において)「いまだに韓国との電話首脳会談が実現していない」、「韓国は後回しにした格好だ」、と指摘する記事です。

 このあたり、状況は常に変化していきますので、もしかしたら本日以降、岸田首相が文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領との電話会談を実施する可能性はありますが、ただ、ハンギョレ新聞の指摘は、大変に重要なものでもあります。

 この点、先日の『茂木外相、記者会見で韓国を「中露と同列」に位置付け』『岸田首相、「財政健全化」言及でさっそく財務省に媚び』などでも取り上げましたが、岸田政権下では、日韓関係はさらに軽くなったかにも見受けられます。

 当ウェブサイトでは何度も指摘して来ていますが、自称元徴用工・自称元慰安婦などの歴史問題の本質は、韓国が国際法や約束、国際条約などを守らないことに尽きます。

 自称元徴用工問題では、日本政府は2019年に日韓請求権協定に従った問題解決プロセス(外交協議や国際仲裁手続等)を提案しましたが、これを拒絶したのは韓国の側でしょう(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』等参照)。

 また、自称元慰安婦問題では、岸田首相自身が外相だった2015年12月に日韓両国が取り交わした慰安婦合意をあっさり反故にしたのも韓国の側です。

 しかも、慰安婦合意の事実上の「立会人」だった米国では、当時のジョー・バイデン副大統領は現在の大統領に、アントニー・ブリンケン国務副長官は国務長官に、それぞれ就任しています。韓国の行為により日韓関係が壊れたという点については、米国にも否定できない点でしょう。

●日本は韓国と基本的価値を共有していない

 ところで、ハンギョレ新聞の記述によると、次のように述べています。

 「東京五輪の開会式への出席を機に関係改善を図ろうとした韓国の要求に冷ややかな反応を示した菅政権よりも、さらに冷淡に接していることが分かる」。

 この点は、そのとおりでしょう。

 ただし、菅総理の外交について触れた記述で、昨年9月に文在寅氏とは8番目に電話会談を行ったとしつつ、次のように述べています。

「中露より先に『基本的価値』を共有する友好国である韓国と電話会談を行った」。

 この記述、今回の岸田首相については韓国が中露よりもさらに後回しだと指摘する際に出て来たものですが、残念ながら、重大な事実誤認があります。現在の日本政府は、韓国を「基本的価値を共有している相手国」とみなしていないのです。

 この点、安倍晋三総理大臣は2012年12月の就任直後、韓国のことを「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」と述べていましたが、次第に「基本的価値の共有」などの修辞が抜け落ち、いつしか単なる隣国呼ばわりに変化しました(『WTO提訴 韓国は「特別な関係」→「単なる隣国」へ』等参照)。
 また、安倍総理の後継者である菅義偉総理大臣は、就任当初から韓国のことを「極めて重要な隣国」とは称したものの、少なくとも「基本的価値の共有」云々の発言はありませんでした(『韓国「日本は友でパートナー」→日本「韓国は隣国」』等参照)。

 つまり、日本政府は韓国について、徐々に「格下げ」し、現在は基本的価値も利益も共有しない相手とみなされてしまっているのです。その事実について、ハンギョレ新聞を含めた韓国メディアの普段からの報道を読んでいると、どこまで重く受け止めているのかについては疑問ですが…。

日韓関係テーパリング論

●韓国の重要性を「落とす」

 そもそも論ですが、、国としての最低限の約束も守れない相手国である韓国とは、そもそも、「利害関係を共有」すべきではないのかもしれません。個人的な理解に基づけば、日本は現在、韓国を「②の相手国」から「④の相手国」に切り替えようとしているフシがあります。

 もちろん、外交、安全保障の分野においては、「朝鮮半島・台湾海峡」という「二正面」事態が生じるのは、日本にとっても悪夢ですし、北朝鮮や中国に対する牽制としての在韓米軍の存在は重要です。

 また、日本にとって韓国は第3位、ないし第4位の貿易相手国でもありますし、日本の経済、産業においても、韓国との関係は非常に重要です(最近だと台湾が韓国に代わって第3位の貿易相手国に浮上する機会も増えて来ましたが…)。

 よって、現時点において日韓断交という事態が生じることは避けねばなりません。

 ただし、歴史問題を筆頭に、ありもしない問題を捏造し、国際社会において日本の利益を堂々と侵害して来る韓国という国のことを、日本はいつまでも友好国として扱うことができるとも思えません。

 だからこそ、経済・産業的には韓国からTPP・台湾などへのシフトを進め、外交・安全保障上の軸足も、「日米韓3ヵ国連携」から徐々に「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に移し始めているのが現在の日本の姿だと考えれば良いでしょう。

 自称元徴用工問題を巡る「資産売却スルスル詐欺」(『「具体的現金化迫る」発言に見る、徴用工弁護士の焦り』https://shinjukuacc.com/20211007-03/等参照)などの諸懸案についても、結局、日韓関係の清算が可能になるまでは、資産の売却を先送りするのが望ましいのではないかと思う次第です。

 これぞまさに、『三菱重工差押で逆ギレの韓国政府と日韓テーパリング論』でも議論した、「日韓関係テーパリング論」なのです。

●李在明大統領実現なら「間に合わない」リスクも!

 もっとも、日韓関係の清算が間に合うのかについては、微妙でしょう。

 『李在明氏が決選投票なしで与党の韓国大統領公認候補に』事でもある李在明(り・ざいめい)氏という「韓国版・菅直人元首相」(※著者私見)が、与党の大統領候補として決定されたからです。

 なお、報道等によれば、対立候補でもある李洛淵(り・らくえん)元首相がこの結果に対し、無効票の処理に異議を申し立てた、などともされているようであり、もしかしたらひっくり返る可能性もある点には注意は必要でしょう。

 しかし、李在明氏自身が来年3月の大統領選における最有力候補のひとりであることは間違いないとされており、この人物が次期韓国大統領に就任したあかつきには、「日韓関係テーパリング」などと、あまり悠長なことも言ってられなくなるかもしれません。

 意外と、事態は差し迫って来ているのだ、と指摘しておきたいと思う次第です。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20211011-02/

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