«
»

「自民党総裁選から衆院選」の流れで存在感を失う野党

最後の最後まで「策士」だった菅義偉総理大臣

 菅総理の突然の事実上の退陣表明を受け、週末の主要メディアの報道などでは、「ポスト菅」の話題でもちきりです。こうしたなか、最新の内閣支持率調査によれば、たしかに菅政権の支持率は急落しているのですが、自民党総裁選(9月17日告示・29日投開票)が行われ、仮に衆院選が10月5日公示・17日投開票で実施されれば、野党は政策論争で存在感すら示せずに埋没するかもしれません。


内閣支持率は菅政権発足以来最低に

 当ウェブサイトではこれまで、6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社が実施するものと、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)を「定点観測」的に追いかけているのですが、週末には読売新聞、共同通信の調査結果が出て来ました。

そこで、この両調査については最新の調査結果を、まだ今月の調査結果が出ていないものついては先月の調査結果を、それぞれ一覧にしたものが、次の図表1です。

■図表1 内閣支持率(2021年8~9月)

(【出所】各社報道より著者作成)

(【出所】各社報道より著者作成)


9月についてはまだ2社分しか結果が出て来ていませんが、少なくともこの2社については、支持率はさらに下落し、不支持率はさらに上昇するという状況です(図表2)。

なぜ菅政権を支持しないのか

■図表2 内閣支持率・単純平均値

(【出所】各社報道より著者作成)

(【出所】各社報道より著者作成)

 もしも本当にこの調査結果が現在の国民世論を正確に表しているのだとしたら、正直、思わず呆れてしまいます。

 菅総理を「支持しない」とおっしゃる方は、いったい何を根拠にそう考えていらっしゃるのでしょうか。

いや、もちろん政治的な思想、信条は自由ですし、「俺は共産主義者なんだ、自民党が嫌いなんだ」などとおっしゃる方ならば、話はまだわかります。

 しかし、政権発足当初は支持率が60%近くに達していたことを思い出すならば、この1年間における菅義偉政権の何らかの「失政」が失望を招いたと考えるのが自然ですが、残念なことに、個人的には菅政権の「失政」らしい「失政」には思い当たらないのです。

 たとえば、日本学術会議の会員を任命しなかった件で、左派メディアから舌鋒鋭い批判が寄せられていましたが、これにしても「そもそも方が期待する役割を日本学術会議が果たしていないのではないか」という問題がありますので、これについて菅政権を批判するのは的外れでしょう。

 また、コロナ禍で社会が混乱するなか、小泉進次郎・環境相が強引に主導した「レジ袋増税」などは、一般的には「悪政」の典型例ですが(著者私見)、これは菅政権下ではなく安倍政権下の話であり、「菅政権の失政」に含めるのはおかしな話です。

 ではなぜ、菅政権がかくも不人気なのでしょうか。

 少し古い記事で恐縮ですが、日経・テレ東の世論調査に関しては、次の日経電子版の記事に「支持率低迷」のヒントがあります。

内閣支持率34%横ばい、コロナ対策「評価せず」64%


―――2021年8月29日 20:00付(2021年8月30日 5:00更新) 日本経済新聞電子版より

 この記事には、こんな記述があります。

“「新型コロナへの政府の取り組みについて『評価しない』は6ポイント上昇の64%で、同趣旨の質問を始めた20年2月以降で一番高い21年4月の65%に近かった」。”

…??

 なんだか、意味がまったくわかりません。

菅政権だからこそできた、ワクチン接種

 コロナ対策でいえば、先ほどの『希望者全員へのワクチン接種は「9月末で1回目完了」』でも報告したとおり、むしろ菅政権のコロナ対策は「非常に優れていた」と言わざるを得ません。

現状、特効薬が存在しないなか、わが国にはロックダウンを命じるなどの強権的な法も存在しないため、コロナ対策は「ワクチン一本足打法」とならざるを得ず、あとは「自粛要請」をするくらいしか方法がありません。

 舌鋒鋭く菅総理を批判していた、肝心のテレビ局の局員ら自身がその自粛要請を無視して感染拡大につながる行動を取っていることはブラックジョークとしか言い様がありません(『データで見る、「テレビ局員らこそ感染拡大の主因」説』等参照)。テレビ局こそ、じつは「『感染』拡大」の犯人ではないでしょうか。

 それに、もちろん、お住まいの自治体によっては、「いまだにワクチンを受けていない」という方もいらっしゃるかもしれませんが(たとえば23区内で圧倒的に接種率が低い某S区のケースなど)、そのような方は、お住まいの自治体の首長を次の選挙でどうにかすることをお考えになった方が良いでしょう。

 いずれにせよ、この状況で「ワクチン接種は順調ではない」と答えた人が7割近いというのは、日本の有権者というのは、大変に要求水準が高い人たちだと思わざるを得ません(※当然、皮肉です)。

伸びない野党支持率

 もっとも、ここでもうひとつ面白い話があるとすれば、政党支持率に関しては、ほとんど動きがないという点です。現在の政権与党である自民党の支持率と比べ、最大野党である立憲民主党の支持率は絶賛低迷中です(図表3)。

■図表3 政党支持率(2021年8月)

(【出所】各社報道より著者作成)

(【出所】各社報道より著者作成)

 読売の最新調査では、立憲民主党に対する支持率は2ポイント伸びて7%でしたが、これは自民党に対する支持率の「5分の1以下」(!)という水準です。

 また、自民党に対して辛辣な報道をすることで知られる朝日新聞や時事通信などの調査でも、立憲民主党に対する支持率は1桁台ですし、最も高い日経・テレ東の調査で辛うじて2桁台に乗せているものの、それでも自民党に対する支持率の3分の1以下という惨状です。

 もちろん、ここでいう「政党支持率」が「選挙で投票する候補者が所属している政党」「比例代表区で投票する政党」と整合するものではありませんし、現実には野党の選挙協力も進むと考えられるため、立憲民主党などの野党がただちに「惨敗」するというものでもないでしょう。

自民党総裁選+衆院選のコンボで野党は埋没!

 ただ、あくまでも結果論かも知れませんが、菅総理が先週金曜日に突如として事実上の退陣を表明したことは、おそらく結果として、9月17日に告示され、29日に投開票を迎える自民党総裁選の期間中は、ただでさえ低い立憲民主党などに対する世間の注目が集まらなくなるという効果をもたらします。

 現時点において、自民党総裁選に出馬を表明している候補者は、河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏などですが、報道等によれば菅総理が河野氏を、安倍総理が高市氏を推すなどしており、結果が読み辛くなっているようです。

 なにより、日本共産党の党委員長などと異なり、自民党総裁を選ぶための選挙はプロセスも透明ですし、多くの人が注目します。

 自民党総裁選の政策論争が注目され、そして、9月29日に新しい自民党総裁が選ばれ、おそらくはその直後の臨時国会で内閣総理大臣の首班指名が行われ、その直後に衆議院の総選挙(たとえば10月5日公示、17日投開票の日程)が行われれば、野党は存在感を示せずに埋没する可能性非常に高い、というわけです。

 菅総理とは、最後の最後まで、なかなかの「策士」だったのかもしれません。


「新宿会計士の政治経済評論」より転載
https://shinjukuacc.com/20210906-03/

6

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。