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日米初対面首脳会談への展望

東洋学園大学教授 櫻田 淳

米中対立下、旗幟を鮮明に
中国の「潜在敵国」である日本

櫻田 淳

東洋学園大学教授 櫻田 淳

 4月中旬、菅義偉(内閣総理大臣)がワシントンに飛んで開催することになる日米首脳会談は、ジョセフ・R・バイデンにとっては、パンデミック最中で初めて対面で外国首脳を迎える機会になる。

 3月中旬以降、相次いで開催された日米豪印4カ国安全保障対話(QSD)首脳会合と日米2プラス2(外務防衛担当閣僚会合)は、現今の米中「第2次冷戦」下における日本の立ち位置を内外に鮮明に印象付けた。

 日本が米豪加各国や西欧諸国を含む「西方世界」同盟網の中で能動的な役割を披露したことにこそ、安倍晋三前内閣以来の日本の外交成果が表れるけれども、此度(このたび)の日米首脳会談は、そうした「安倍晋三の遺産」の継承と展開を内外に打ち出すことになろう。

中国「狂虎外交」に変質

 日米2プラス2に次いで開催された米韓2プラス2が実質上、米韓同盟の「空洞化」を世に印象付けるものであった故に、米中対立の最中で中国に直に日本の立ち位置は、殊(こと)の外(ほか)、重いものになる。

 米豪加各国や西欧諸国を含む「西方世界」同盟網の疑似枠組みの下、現今の日本政府は、米国との安全保障「一体化」の論理を加速させているのであり、その論理に沿った対中政策対応全般は、確かに中国政府を苛(いら)立たせるものであろう。事実、趙立堅(中国外務省副報道局長)は、対中批判の色彩が濃厚な日米2プラス2共同声明を受けて、「自ら進んで米国の顔色をうかがい、戦略的属国になっている」と対日非難に及んだ。

 また、華春瑩(中国外務省報道局長)は、ウイグル人権案件に絡んで日本政府が表明した「深刻な懸念」を前にして、「歴史認識カード」を持ち出して、「日本側の行動が人権を尊重しているといえるのか。言行を慎むように望む」と反発を示した。

 加えて、華春瑩は、「力による現状変更の試みに深刻な懸念を共有する」と表明した日本・インドネシア2プラス2の後、「最近の日本の中国への否定的な行動に重大な懸念を表明する。日本は中国への中傷をやめ、中日関係の大きな流れを守るよう求める」と語った。

 華春瑩や趙立堅が披露したような中国政府の対日非難が表しているのは、対外関係の調整よりも自らの「対外威信」の護持が優先される中国の「戦狼外交」の様相である。そして、それは、全方位的に軋轢(あつれき)の火種を撒(ま)き散らしているという意味においては、「狂虎外交」と呼ぶべきものに変質しているのである。

 現下の中国政府の対日非難は、日本がウイグル関連対中制裁の実施に向けてステップを踏み出す大義を与えたという意味では、壮大な「オウンゴール」の類いかもしれない。

 華春瑩の発言は、中国の「歴史認識カード」が中国政府の「現在の立場」を補強するための方便にすぎない事情を暴露した。過去の覇権主義「被害」は、現在あるいは未来の覇権主義「加害」を容認することはない。これは、一つの真理であるけれども。中国政府の対日非難は、その真理から彼らが眼(め)を背けていることを示しているのである。

 もっとも、日中両国における歴史上、経済上の「縁」の深さを考え併せれば、現下の日本政府が披露するような「旗幟(きし)を鮮明にした」対中姿勢には、不安を抱く向きもあろう。しかし、日本の人々がどのように主観的に認識しようとも、日米同盟の枠組みの下で米軍を駐留させ、地勢上も中国の海洋進出を阻む位置を占める日本が、客観的には中国にとっての「潜在敵国」である事情は、否定しようがない。

峻別すべき「友」と「敵」

 しかも、米中「第2次冷戦」下の「民主主義VS専制主義」の対立構図の中では、「民主主義」の側に立つ日本が、中国の立場に相容(い)れない事情も、否定しようがない。カール・シュミットが指摘したように、総(すべ)ての政治営為は、「『友』と『敵』の峻別(しゅんべつ)」に始まる。日米首脳会談に向かう過程で日本の人々が諒解(りょうかい)すべきは、「旗幟を鮮明にする」対応の意義である。

(さくらだ・じゅん)

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