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最悪の事態想定し対策を、細野豪志衆院議員との一問一答

元原発事故収束担当相 細野豪志衆院議員に聞く

危機管理の教訓
「安全神話」深刻な反省必要

 東日本大震災当時、首相補佐官、原発事故収束担当相として東京電力福島第1原発の事故処理に当たった細野豪志衆院議員はこのほど、本紙のインタビューに応じ、「日本は戦後、国家的な有事を想定せずにきた。その中で起こった2011年の原発事故は恐らく最大の国家的危機だった。10年たって、そこを忘れてはいけない」と述べた。

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インタビューに答える細野豪志衆院議員11日、議員会館で(加藤玲和撮影)

 その上で、原子力非常事態宣言が発出される未曽有の事故を生み出した原発の「安全神話」に対し「深刻な反省が必要だ」としながら、「最悪の事態を望まないが故に、それを想定して対策を練らなければならない」と強調した。

 細野氏は、原子炉冷却のため3月16日夕に試みた自衛隊ヘリコプターによる放水が、上空の放射線量が高くて中止されたことを挙げ、「現場の作業を一切止めて皆、固唾をのんで見守ったが一度断念した。あそこは国家として最大の危機だった」と振り返った。

 17日に自衛隊ヘリが何とか放水して急場は凌(しの)いだものの、細野氏はその後、よりシビアなアクシデントに備え、「日本は(年間被曝〈ひばく〉量)100ミリシーベルトという平時の基準をそのまま有事にも適応する形になっていたので、私の方で無制限を提案した」と述懐。結局、250ミリシーベルトにすることで落ち着いたが、「問題はまだ残っている」と指摘する。

 米国には核攻撃も想定して「志願する人間に関しては無制限で現場に行ける仕組みがある」が自衛官は軍人でなく特別職の国家公務員。国家的な危機に臨んでもおのずと行動には制限があるためだ。

 細野氏は「本当に命を懸けて対応しなければならない場面で誰がやるのか、やれる仕組みがあるのかという問題は、まだ結論が出ていない」と述べ、これらは自衛隊が「軍隊でないが故の限界」だとしながら、「憲法改正の一つの柱が、自衛隊をどう憲法に位置付けるかなので、そこはきちんと議論した方がいい」と語り、自衛隊の位置付けを含む憲法論議の進展への期待を示した。

福島第1原発の全電源喪失時に電源運搬で自衛隊を活用できなかったのか。

 考慮はしたが、できなかった。主に二つ理由がある。一つは事前に原子力防災について自衛隊が組み込まれておらず、自衛隊の中にも備えがなかった。もう一つは、空からの輸送についてかなり具体的な検討に入ったが、重過ぎて運べないと結論が出た。

 自衛隊が活動する場面が訪れたのは16日の夕方で、ヘリでの放水だ。現場として一番疲弊していた場面だったので、作業を一切止めて皆、固唾をのんで見守ったが一度断念した。あそこは国家として最大の危機だった。何とか17日の朝、放水をしてくれてから、現場と東電本店、国家、国家の実力部隊である自衛隊が前面に出て、かみ合った。

自衛隊は危機管理の最後の砦(とりで)だ。どう活用するかは非常に重要だ。

 まだ解決していない課題がある。当時、さらにシビアなアクシデントも想定していた。米国には、志願者に関しては無制限で現場に行ける仕組みがある。核武装国だから、逆に核攻撃されることも想定している。日本は(年間被曝〈ひばく〉量の上限が)100㍉シーベルトという平時の基準をそのまま有事にも適応する形になっていたので、私の方で無制限を提案したが、結論としては250㍉シーベルトで落ち着いた。

 本当に命を懸けて対応しなければならない場面で誰がやるのか、やれる仕組みがあるのかという問題に関しては、まだ結論が出ていない。

原発を標的とした攻撃もあり得る。

 テロや核攻撃、原発事故、さらにシビアアクシデントも考えなければならない。日本は戦後、そういう国家的な有事を想定せずにきた。その中で2011年の原発事故は恐らく最大の国家的危機だった。10年たって、そこを忘れてはいけない。

福島原発事故で原発の「安全神話」が壊れた。安全神話のため最悪の事態を想定しないまま進んできた付けを払わされたのでは。

 深刻な反省が必要だ。

 その言葉を語ることはそれを望んでいるんだという考え方から脱しなければならない。むしろ、最悪の事態を望まないが故に、それを想定して対応策を練らなければいけない。

当時、一歩間違えれば日米関係が壊れてしまう難しさがあったというが。

 時差があり、リアルタイムでの情報共有にギャップが生じた。当時の駐米日本大使館やルース駐日米大使も頑張ってくれたが、トラックが多過ぎた。米側だけでも駐日大使館と国務省、国防総省、原子力規制委員会、エネルギー省。日本側も自衛隊、官邸、東電それぞれがコミュニケーションを取っていたが相当なロスが生じた。21日に日米合同調整会議を立ち上げ、かなりきちんとコミュニケーションが取れるようになった。

科学者の危機管理能力を高めることが大事だと主張しているが。

 科学者は、絶対ないと断言せず「今のところ被害は生じていない」という言い方をするが、一般の人は被害が生じる可能性があると受け止める。科学的にある程度コンセンサスが取れていることはきちんと表現した方がいい。言葉を濁したり両論併記したりすることは非常に弊害が大きい。

 処理水の海洋放出のように、リスクが極めて限られていて、ゼロではないかもしれないが、マネジメント可能で、それによってより大きなリスクを回避できるのであれば、政治家が決断すべきだ。

危機管理の側面で、どういった法的、制度的整備が必要か。

 憲法改正の一つの柱が、自衛隊をどう憲法に位置付けるかなので、そこはきちんと議論した方がいい。原子力災害に関しては、原子力災害対策基本法があって、かなりのことを法律に基づいて行うことができた。ただ、どうしても最後が超法規的になる。その辺りにまだ軍隊でないが故の限界が残っている。

(聞き手=政治部・武田滋樹、亀井玲那)

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