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菅首相は立派な危機管理者だ

 コラムのタイトルを見られた読者は、「筆者はいつから菅義偉首相ファンになったのか」と呟かれるかもしれない。当方は日本の政界動向には疎いから、誰のファンとか、といった立場にはいない。母国の首相に対しては海外に住む日本人の一人として応援したくなるだけだ。

福島県沖の地震対策で関係閣僚会議を開く菅首相(2021年2月14日、首相官邸公式サイトから)

福島県沖の地震対策で関係閣僚会議を開く菅首相(2021年2月14日、首相官邸公式サイトから)

 朝日新聞デジタルによると、菅首相が15日、衆院予算委員会で立憲民主党の野田佳彦元首相(在任2011年9月~12年12月)からその危機管理を追及されたという趣旨の記事が掲載されていた。内容は、菅首相が公邸に住まず、衆議院の赤坂宿舎に住んいることに対し、野田元首相は、「首都直下型地震の場合、都内の道路が破壊され、公邸に行くことができなくなる」と指摘し、首相の危機管理のなさを批判するものだ。

 野田元首相のこの批判は安倍晋三前首相の時も聞いたことがあった。安倍氏が公邸に住まず、私邸から官邸に通っていることに対し、野党側から同じような批判が飛び出したことがあった。当方は当時、今回と同様、安倍首相の危機管理批判に対して擁護するコラムを書いたことがある。その論理は今回も同じだ(「公邸の幽霊は人を選ぶ」2013年5月26日参考)。

 朝日デジタルの記事では、恣意的かどうかは知らないが、「公邸に幽霊が住んでいる」という話については全く言及されていなかった。唯物主義者ならば幽霊の話に言及することを潔しとしないから、「公邸の幽霊」の話は無視されるかもしれないが、「公邸は昭和11年、旧陸軍の青年将校が起こしたクーデター『2・26事件』の舞台となっており、犠牲者の幽霊が出るとの噂話がある」といわれていることを、朝日新聞記者が知らないはずがないだろう。

 菅首相は公邸に住む幽霊を信じておられるのかもしれない。自身が住む公邸に幽霊がいたら、落ち着かないだろう。決して怖いからではない。国家の機密を扱う立場上、自身の言動を監視している幽霊が常に傍にいて、聞き耳を立てているならば、夜中、側近に電話一本掛けることもできなくなる。また、日頃の疲れもあって、眠っている時、寝言が飛び出し、日本の国家機密が寝言を通じて漏れてしまうかもしれない。首相は気を休めることもできなくなる。

 以上、当方の推測だが、菅首相が公邸に住まないのは、幽霊が怖いからではなく、立派な危機管理に基づいた判断からだろう。だから、今回のコラムのタイトルとなった次第だ。

 上記の内容は幽霊の話を信じていない読者には説得力がないと思うが、幽霊は信じる、信じないといったレベルの存在ではなく、明らかに存在するのだ。ただ、可視的ではないから信じにくいだけだ。しかし、宇宙を含む森羅万象、目に見えない存在は目に見える存在より数的には多い。世界を席巻中の中国発新型コロナウイルスは直径100から最大200ナノメートルの存在だ。ウイルスは大多数の人間にとって幽霊と同じような不可視的な存在だが、その存在を恐れ、欧州ではFFP2マスクの着用が義務化されているのだ。

 菅首相が「公邸の幽霊」の話を持ち出したら、野田元首相は応戦する準備があったはずだ。野田さんは首相時代、公邸に住んでいたからだ。1年余りの任期中、公邸の幽霊と出会ったことがなかった。だから、野田さんなら「公邸に幽霊は存在していなかったよ」と自信をもって自身の体験を語ることができるからだ。

 問題は、野田さんは知らないかもしれないが、幽霊は人を選ぶのだ。幽霊は誰の前にも出現するのではないのだ。人にも好き嫌いがあるように、幽霊も同じだ。ただし、幽霊の場合、好き嫌いというより、相性の問題だ。現代風に表現すれば、ケミーが会わない人間の前には出現しない。

 逆に、幽霊の存在を信じたり、関心がある人、幽霊とその人が親戚関係といった場合(血縁関係など)、幽霊は出てくる、なぜか、幽霊は自身の存在を知ってほしいだけではない。時には何らかのメッセージを伝えたいからだ。

 それでは何故、安倍首相時代になって公邸の幽霊は活発化したのだろうか。安倍氏には幽霊の世界に親戚でもあったのだろうか。安倍首相は保守本流の流れをくむ。岸信介元首相から父親・安倍晋太郎元外相の流れから出てきた政治家だ。一方、管氏や野田氏はある意味で庶民派だ。保守派本流の政治家ではない。幽霊は首相の出自の違いを知って、管元首相と野田氏時代には身を潜め、安倍首相時代に入って再び動き出したのかもしれない。

 野田さんや菅直人元首相(在任2010年6月~11年9月)は公邸に住んでいたが、幽霊と出会ったり、目撃することはなく、公邸でも安眠できた。鳩山由紀夫元首相の場合、鳩山氏が“宇宙人”のため公邸の幽霊も対応できなかっただけだ。一方、安倍さんの場合、公邸に住んでいたら幽霊は出現し、アベノミクスだけではなく、何らかの国家機密の裏話なども伝えていたかもしれない。

 安倍さんが公邸に住むことを頑として拒んだのは、これこそ立派な危機管理だ。危機管理は決して自然災害や感染症問題の時だけに問われるものではない。宇宙人との遭遇ではないが、幽霊との出会いは日本の国家の安全を脅かすかもしれない、という判断があったからではないか。

 菅首相は安倍政権時代の官房長官だったから、安倍さんから「公邸の幽霊」の話を聞いていたはずだ。だから、首相就任後も公邸に住むこと避けているのではないか。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会会長だった森元首相の発言で日本は世界からバッシングを受けた。その直後、菅首相が「公邸の幽霊」のために公邸には住まない、ということが報じられれば、大笑いとなるばかりか、「日本は不思議な国だ」と揶揄われたかもしれない。菅首相は野田元首相の質問を軽くかわすことで、そのような事態を防いだのだ。菅首相の危機管理は立派だ。

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