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菅首相所信表明 国難へ決意示すも理念欠く

 菅義偉首相が初の所信表明演説を行った。新型コロナウイルスの感染拡大と戦後最大の経済の落ち込みという国難の中、国の舵(かじ)取りを担う責任の重さと決意を強調した。そのための具体策を随所にちりばめたが、政治理念に欠け大局観の乏しい内容となった。

 温暖化対策でカラー

 菅首相は新型コロナの新規陽性者数の減少は鈍化し、状況は予断を許さないとして「爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜く」と語った。冬の季節性インフルエンザ流行期の前でもあり、コロナ対策は就任冒頭から首相に突き付けられた最重要課題となった。

 同時に実現しなければならないのが経済の回復だ。安倍政治の継承・発展を基本路線とする菅首相は「今後もアベノミクスを継承し、さらなる改革を進める」との決意を示した。

 温暖化対策では温室効果ガスの排出量を2050年までにゼロとする目標を打ち出し、「脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言する」と表明した。産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につなげようという菅カラーを鮮明にしたものだろう。

 デジタル庁の新設や携帯電話料金の引き下げ、不妊治療への保険適用についても「できるものからすぐ着手し、結果を出して、成果を実感していただきたい」と強調した。目立ったのは、比較的短期間で実績を出すことのできる諸政策を力説したことである。

 一方、教育は「国の礎」と言いながら、小中学生に1人1台のIT端末導入を進め、オンライン教育を拡大すると語った程度にすぎない。文部科学省公表の「問題行動・不登校調査」によると、19年度に学校が認知したいじめの件数は、前年度より約6万件増の約61万件で過去最多を更新しているのである。

 国の将来を担う小中学生の教育現場が荒廃している状況は、長い目で見て国難でもある。充実した道徳教育も行われていない。インターネット環境など外的な整備は必要だろうが、首相はこれらにどう取り組むのか。抜本的な少子化対策と共に早急に対処すべきである。

 外交・安全保障分野では、日米同盟を基軸とした上で、ASEAN(東南アジア諸国連合)、オーストラリア、インド、欧州など基本的価値を共有する国々と連携し、自由で開かれたインド太平洋の実現を目指すという方向性は評価できる。

 中国に対しては「主張すべき点はしっかり主張しながら、共通の諸課題について連携していく」と語った。中国海警船による沖縄県・尖閣諸島沖の領海侵入を踏まえた発言だが、基本的価値の共有を連携条件とするのであれば「人権重視」も忘れてはならない。

 改憲の必要性を説け

 安倍晋三前首相と比べて意欲が感じられなかったのが憲法改正への姿勢だ。各政党に議論を丸投げし、国民的な議論につなげていくことを「期待」するだけでは「国民のために働く内閣」とは言えない。今後の与野党代表質問や予算委員会の中で改憲の必要性を説き、そのための強い決意を示してもらいたい。

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