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対中国 戦略的対応貫けるか

 菅義偉首相は、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」「積極的平和主義」を掲げた安倍外交の継承を明言し、茂木敏充外相を再任。就任会見では真っ先に「機能する日米同盟を基軸とした政策を展開」すると強調し、安倍晋三政権でより強固になった両国関係の維持・発展に取り組む姿勢を示している。

 首相は、官房長官として安倍氏の日米電話首脳会談にほぼすべて同席し、重要な外交政策の決定にも絡むなど、誰にも負けない知見を持つ。だが、実際の外交経験は乏しく、その手腕は未知数だ。

 11月の米大統領選後には第2弾の日米貿易交渉や在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の交渉が本格化する見通しであり、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設問題も懸案として残っている。首相は厳しい国内調整と対米外交という総合力が試されることになる。その際に、安倍氏が培ったトランプ米大統領との信頼関係や幅広い米国人脈は貴重な資産となる。それをどう活用するかも大きなカギだ。

 外交安保上の最大の課題は中国との関係だ。首相は、国益を守り抜くため「自由で開かれたインド太平洋を戦略的に推進するとともに、中国、ロシアを含む近隣諸国との安定的な関係を築く」ことを目指すが、米中対立がサイバーや宇宙にまで拡大し、自由民主主義対共産主義という基本的な価値観の対立に至る中で、日本の立ち位置の幅は極めて狭くなっている。

 尖閣諸島周辺海域での領海侵入や、日本の防空識別圏への戦闘機侵入を繰り返し、先月26日には南シナ海へ向けて中距離弾道ミサイル4発を発射するなど、軍事圧力を加重させる中国を、河野太郎前防衛相は「脅威」だと明言している。

 その半面、中国は米国を超える最大の貿易相手国であり、財界はもとより、政界にも親中派議員が多くいる。その筆頭格が自民党の二階俊博幹事長だ。二階氏は17日の都内での講演で、政府、外務省の足らざるところを展開する議員外交の必要性を強調し、新型コロナ禍などで延期された習近平国家主席の国賓来日について「穏やかに実現するよう心から願っている」と強い意欲を示した。

 対中関係では習氏訪日を筆頭に賛否・利害が激しく対立する問題が目白押しだ。菅内閣が、その調整を取りつつ戦略的に一貫した対応を取れるかどうか。

 菅内閣が最初に処理しなければならない安保上の課題は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入撤回に伴うミサイル防衛策だ。政府は6月に配備断念を決めたが、代わりの迎撃体制は未定。安倍氏は退任直前の11日に「安全保障政策に関する新たな方針」の談話を発表し、敵基地攻撃能力の保有を念頭に「抑止力向上」の必要性を訴えつつも、「年末までにあるべき方策を示す」として新政権に最終判断を委ねた。

 北朝鮮は低高度弾道ミサイル「イスカンデル」や極超音速滑空弾など、日本の防衛網を突破する技術開発を進めており、一刻の猶予も許されない。立憲民主や共産などの野党や一部マスコミの猛反発が予想される中、首相は明確な方針を示せるか。

 このほか、戦後最悪と言われる日韓関係や、ロシアとの間の北方領土問題、さらに最重要課題とする北朝鮮による拉致問題の解決など、前政権から引き継いだ外交課題も山積している。

(亀井玲那・川瀬裕也)

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