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経済再生へ成長重視どう実現

継承と前進 菅新内閣の課題(中)

 「経済の再生は引き続き政権の最重要課題だ」――菅義偉新首相は「国民のために働く内閣」発足後の会見でこう強調した。

 安倍晋三前首相の経済政策「アベノミクス」を、官房長官として支え推進してきた同氏が、アベノミクスの「継続・前進」を表明するのは当然であり、道半ばとなったアベノミクスの主眼である経済の好循環実現を果たすためでもある。

 コロナ禍は感染拡大防止のために生きた経済活動を無理やり停止させ、その代償は雇用情勢の急激な悪化と戦後最大の落ち込みとなって表れた。成長重視のアベノミクスにより、企業業績や雇用情勢は改善。国の基礎的財政収支赤字も7年間で半減するなど財政健全化も進んだが、コロナ対策に巨額な補正予算を組んだため、逆に国債発行残高が大幅に増える結果となった。

 これらをどう立て直すか。感染対策という矛盾する政策とのバランスを図りながらの難題である。

 もっとも、感染対策はこれまでの経験から、経済活動制限の一部緩和にもかかわらず、海外のような大幅な感染拡大を招くことなく一定程度に抑えられており、“見えてきた”感がある。感染対策は引き続き必要だが、経済活動の本格的再開の条件が徐々に整いつつあるのではないか。その意味で、観光需要を支援する「Go To トラベル」が10月から東京を対象に戻すのは当然であり、「Go To イート」とあわせ再生の一助になろう。

 最近の政府、日銀の経済報告では、景気判断の上方修正が示されているが、水準自体は低く、依然厳しい状態が続く。特に有効求人倍率が7カ月連続で低下するなど、雇用情勢の悪化は深刻であり、コロナ倒産も既に500件を数えている。

 当面の対策としては、収入が絶たれかねない家計への支援や、中小企業を支援する持続化給付金、雇用維持に協力する企業を支援する雇用調整助成金など、既に実施されてはいるが、決して十分とは言えないため、追加の支援策を早急に検討する必要があるだろう。

 アベノミクスでは「第3の矢」の成長戦略が成果に乏しかった。菅政権の看板政策の一つ、「デジタル庁」の創設は日本社会のデジタル化の司令塔になるものであり、成長戦略の大きな柱になる可能性を秘める。

 経済界が求める、デジタル技術で既存制度を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)にもつながるだけに、来年1月の通常国会に提出する設置法案でどこまで具体化できるか、平井卓也デジタル改革担当相の手腕が問われる。

 アベノミクスでは2度、消費税増税を実施し、折角の景気拡大の勢いを止めてしまった。コロナ禍からの再生では回復の勢いが付きにくく、海外要因も日本以上に厳しい状況だけに、「10年間は不要」(菅氏)との姿勢も十分に頷ける。年々増大する社会保障費については、安易な増税に走らず、制度改革で地道に歳出を減らす強い姿勢が求められよう。

(床井明男)

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