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防衛白書 新たな脅威への対処を急げ

 2019年版防衛白書が閣議で了承された。宇宙、サイバー、電磁波を使った電子戦など安全保障上の新たな領域で、各国が優位性を競っていると指摘。中国やロシアなどを例に挙げ、先端技術を利用した兵器などの開発動向にも言及した。新たな脅威への対処を急ぐべきだ。

中国で大量の無人機飛行

 「宇宙空間をめぐる安全保障の動向」と題する解説では、中露両国が衝突などで相手の衛星の機能を喪失させる「キラー衛星」や、高出力レーザーを用いた衛星破壊兵器の開発・実験をしている可能性を指摘した。

 サイバー空間の脅威では、知的財産を狙った中国によるサイバー攻撃を紹介。電子戦では、電磁波が指揮統制のための通信機器などに使われていることを挙げ、相手の通信を妨害するなどの能力で優位に立とうとする米国・中露の動向を記述した。

 政府は昨年末に決定した新防衛大綱で、こうした新たな脅威に対処するため、従来の陸海空各自衛隊を含む全ての能力を融合した「多次元統合防衛力」の構築を打ち出した。

 安倍晋三首相は今月、来年度に空自に宇宙作戦隊(仮称)が創設されることについて「航空・宇宙自衛隊への(名称の)進化も、もはや夢物語ではない」と強調し、新領域での防衛力整備に力を入れていく考えを示した。米国との連携も強化して日本の安全確保に尽力すべきだ。

 白書では、形勢を一変させる「ゲーム・チェンジャー」の軍事科学技術として、人工知能(AI)が重視されている点も強調。中国が17年にAI搭載の無人機119機を群れのように飛行させ、昨年は200機で成功した事例を紹介した。

 サウジアラビアの石油関連施設への攻撃では、無人機が使用されたという。日本も大量の無人機による攻撃を想定し、高出力レーザーシステムの開発などで対処する必要がある。

 白書は北朝鮮の核と弾道ミサイルの現状に関し、核兵器の小型化・弾頭化を実現しているとの認識を示した。米朝交渉は停滞しているが、北朝鮮非核化に向けて日米などは最大限の圧力をかけ続けなければならない。

 今年5月から9月にかけての北朝鮮のミサイル発射では、探知されにくいように発射形態の多様化を進めるなど技術が成熟化している。政府は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備のため、候補地である秋田県と山口県の理解を得ることが欠かせない。

 18年版白書は安保協力の対象国として韓国をオーストラリアに次ぐ2番目に扱っていたが、19年版では豪州、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)の後の4番目に下げた。韓国艦による自衛隊機への火器管制レーダー照射や、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄などが影響していよう。

日米韓の連携維持を

 ただ北朝鮮などの脅威が高まる中、日米韓の防衛協力の重要性は増している。この意味で韓国によるGSOMIA破棄は残念だが、日米韓の連携が乱れれば、北朝鮮だけでなく中露の挑発を助長することにもなりかねない。日本は連携維持に向けた取り組みを強めるべきだ。

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